谷川岳で厳冬期登山を学んだタフガイとゆく天神尾根
以前一緒に燕岳で優勝した職場の同僚達と厳冬期登山をしよう、という話が浮上しました。1人は仕事で行けなかったので、厳冬期登山のすべてを谷川岳で学んだというTK氏と日帰りしてきました。彼は厳冬期の谷川岳で雪山の技術を学び、遭難して一晩を生き抜いたタフガイです。私はというと以前は3月というどちらかといえば残雪期に近いコンディションで登り、時間の関係でオキの耳までは到達できなかったので今回はリベンジでもあります。
お手軽な天神尾根ルート
TK氏は谷川岳といえば西黒尾根、と言う男です。谷川岳ロープウェイの恩恵でお気軽登山のイメージが付いている私とは抱く印象が全く異なっていました。
谷川岳といったら西黒尾根じゃないの?
遭難はごめんじゃ
西黒尾根は土合口駅からロープウェイを使わず谷川岳肩の小屋まで1200mを登る、日本三大急登の一つです。興味はあるもののお互い配偶者がいる身分で一人の体ではないので、確実に生きて帰るために行動時間を短く設定できる天神尾根ルートでアタックすることにしました。
山行データ
登山開始
今回
2020年3月末
シーズン中ということで登山客よりもスキー客が多い普通のゲレンデの風景でした。TKははじめから谷川岳山頂が見えていることに驚いていました。西黒尾根からすればドーピングのようなものです。しかし以前3月末に来た時と異なり雪がたっぷりです。
まずは滑走路の脇道を、距離にして短めのリフト1本分ほど登ります。一番斜面がきついのは実はここかもしれません。厳冬期は荷物というより身にまとう装備が重いので息が上がりっぱなしになります。半袖になり始めた猛者も現れたくらいには汗だくです。
どこを見ても圧倒的な白ホワイト。相当分厚く雪を纏っていることが伺えます。
遭難から帰還した元カメラマンTK氏
冒頭で紹介した、厳冬期登山をここ谷川岳で学び、厳冬期西黒尾根単独アタックで遭難、避難小屋で一夜を明かし生還したタフガイのTK氏です。以前本職でカメラマンの経験もあり、その佇まいは山岳写真家そのものです。
厳冬期は行動中にグローブを外すのはご法度、あらゆる動作をグローブ越しに行えるように訓練しておくべきなのですが普通に外している私です。ちなみにグローブはド定番、防寒テムレスとブラックダイヤモンドのソロイストの二段構えです。
谷川岳山頂 トマの耳
登頂開始から2時間、トマの耳です。
え、谷川岳ってこんな簡単に登っていいの?
何事も苦労すべきなんて思ってるの人間だけやで
去年3月と比較すると雪の量が全然違います。当たり前ですが。
稜線歩き。どこからが雪庇なのか全くわからないのでトレースを外れるわけにはいきません。
谷川岳山頂 オキの耳
私にとっては未踏のピーク、谷川岳オキの耳です。読めませんが。この向こうはおそらく雪庇の付け根くらいなので怖くて近寄れません。
記念撮影
記念写真タイムです。まずはかっこいい感じで。
ようやく登頂したぜ!感で
続いて山男彼氏(TK)とわんぱくな彼女(私)なイメージで
最後はヤマノススメのあおひな約束の山的なイメージで
オキの耳からトマの耳を望みます。登山者の歩くトレースよりも左側は斜面ごと滑り落ちそうにすら見えてきます。こっわ。雪山は風が吹いてくる方向の斜面に雪庇が張り出すように雪が積もっていき、反対側の斜面は雪が風で吹き飛ばされてしまうのであまり積もらないためこういう地形になります。そのため山の斜面を見ると風向が分かります。この写真では右側から風が吹くということです。
天候が変わりやすすぎる厳冬期谷川岳
ここまで御覧頂いている通り、好天に恵まれた厳冬期谷川岳登山でしたが何事もなくは終わりませんでした。稜線は風も強く寒すぎるので肩の小屋に戻って昼食をとることにし、お湯を沸かし始めたところで突然ホワイトアウトしました。
あ、死んだ
あの日の再来…
1日中晴れ続けることはないという噂の谷川岳ですがあまりにも突然の変化でした。とりあえず生ぬるいお湯を注ぎ少しふやけたくらいのカップ麺をモシャモシャ食らいながら作戦会議します。困ったことに雪が巻き上げられトレースはすぐに消えてしまいました。肩の小屋直下は遮るもののない急斜面なので、うかつに動けば本当に遭難や滑落しかねません。
こういう時のために地図は読めなきゃいけないスッ
やだ…//惚れちゃう//
TK氏のコンパスと紙の地図を頼りに下山方向を見定め、なんとか正規ルートで下りることができました。どうやら山頂付近が急に雲に覆われたようでちょっと高度を下げると再び視界が開けてきました。
天神尾根ルートのおかげで気軽に登れてしまう谷川岳ですが、気候条件の厳しさは国内屈指であり、さらに厳冬期ともなれば何が起こるか分かりません。なので決してガチの初心者向けではありません。経験者やタフガイと行ってください。厳冬期の山の美しさと恐ろしさを改めて体感した登山でした。