先日の尾瀬にてツエルト泊デビューをしてきたのでレビューなど。使用したツエルトはファイントラックの「ツエルト2ロング」です。思っていたよりも快適に泊まれてテントの代わりとして十分実用性があると思ったので紹介します。
なぜツエルト泊なのか
テント泊登山も樹林帯から稜線上まで20泊近くしてきたので、道具はある程度洗練され総重量15kg以下、個人的には十分軽量と感じられる装備になってきましたが、やはりテントはフットプリントなど含め1.5kgオーバーと装備の中では最重量級なので、もう少し削れたら良いなあと思ったのが一つ。また重量以上に体積的に困ることもしばしばあるのでコンパクトにしたい気持ちが一つ。そしてダブルウォールテントは丈夫で室内の快適性も非常に高いので、個人的にはもう少し攻めてみてもいいなと思ったのがツエルト泊をしようと思った最大の理由です。どうせツエルトは雪山の非常用装備として買う必要があったのでちょうど良いタイミングでした。
ファイントラック ツエルト2ロング
このツエルト2ロングは数あるツエルトの中でも、ツエルトの積極使用を念頭に開発されたツエルトで、緊急時のビバーク用=できれば使いたくないものという位置づけだったツエルトを、宿泊手段としてもっと使用してウルトラライトに行こうぜ、という理念の元に作られています。
オレンジとグリーン(モス)の2色展開で、緊急用でもあるため目立つオレンジ、と思っていましたが自然に溶け込むアースカラーがカッコよかったのでモスをチョイスしました。
収納時は超コンパクト
ペグ、ガイライン込みで実測値480g、収納時はレインウェアくらいのサイズ感です。ツエルトは購入時には縫い目の防水加工は施されていないので、事前に縫い目にシームコートを塗り込むという処理をします。買ったその日に一度室内で組み立てて、縫い目という縫い目に表裏からひたすら塗り込んで乾かす作業をします。
ペグはウルトラライトで
ペグはウルトラライトなチタンペグを導入しました。MSRの高級ペグ、カーボンコアステイクが2本、あとはAmazonでよく出てくるメーカーのチタンペグ12本の計14本です。
ツエルト2ロングを張るのには最低でも両端のポールを張るガイライン2本ずつ+ツエルトの四隅の8本は必要で、可能ならば長辺の中央2ヶ所、長辺側を張るガイライン用の2本、の12本があるとより快適になります。カーボンコアステイクは要となる両端のポールのガイラインに使うつもりで買いました(よく考えたら4本必要でした)。
総数14本ものペグとスタッフバッグで脅威の90g。さすがにウルトラライトハイカーの仲間入りを果たした気がしています。
設営した図
設営した状態です。まずは両端のポールを張るのに2本ずつ、床面の四隅と長辺の間の6本、計10本のペグで立ててみました。
基本的にはフロアレスですが、このツエルトは左右の紐を結ぶことで床面が作れるようになっているので、写真のように片端だけほどいて前室のように使うこともできます。
内観ビュー:左右のガイラインは必須
この状態で中に入ってみると左右の布のたわみが気になりました。夜間に結露してシュラフに触れると嫌なので、やはり左右のガイラインも追加することにしました。
左右のガイラインを追加した状態。この状態でペグは12本使用しています。
左右の布が外側に張られたことでずいぶんと居住性が良くなりました。横になっても左右の布が触れてしまうことがなくなります。
友人に入ってもらった図。友人は身長170cmほどで一般的な体型です。座っていても頭が天井に触れてしまうというのはツエルト側の仕様なので仕方がありません。ここはトレードオフになるところです。もしかするとポールをもう少し伸ばせば背を高くできたのかもしれませんが、そうすると全体が天井方向に引っ張られて床面が狭くなる気もするのでこんなものだと思います。
寝てもらった図。寝た状態の感覚としては普通のテントと大きくは変わりません。やはり左右のガイライン追加が非常に効いています。非常事態であれば物理的には2人寝ることもできると思います。
時は流れて夜の様子。テント泊というよりもミリタリーな雰囲気が漂っています。
内部の様子。床の一部をほどいて土間が作れて、全長220cmというロングサイズのお陰で必要十分な広さはあり、室内での調理もそれほど苦労なくできそうです。
樹林帯という条件的には恵まれた環境ではありましたがとりあえず1泊してみた感想は想定していたよりもネガが少なかったです。しかし万人に勧められるか、万人が可能かというとそうではないな、とも思います。
張り方について
夏休みの利尻島・礼文島旅でのツエルト泊の写真です。
長辺のガイラインに引っ張られて天井が凹んでいるのが分かると思いますが、これは失敗した張り方です。ツエルトの地面の四隅を先にペグダウンしてから短辺側のポールでツエルトを立ち上げたのですが、四隅が固定されているためポールを立てても天井の部分が上手くピンと張ってくれず、座った状態で頭を下げないといけないくらい極端に天井が低くなってしまいました。
こちらはその反省を生かした成功図です。四隅は固定せず先にポールを立ててから四隅を固定したら上手くいきました。最初にポールを2本とも立ててツエルトの天井の辺がピンと張るようにして、それから四隅を固定し左右のガイラインを張りました。先にポールを立てることで天井の高さが確保されました。
ペグ数に余裕があれば短辺側もペグダウン
これは必須ではありませんが、私は全部で14本のペグがあり2本余ったのでフロアの短辺側をペグダウンしたらさらに快適になりました。
脚側の土間スペースの、フロアの片方をペグダウンしました。ペグダウンした側で寝ると知らないうちに脚の下が地面むき出しになるのが防げます。
余った最後の1本で頭側の短辺のど真ん中をペグダウンしました。フロア側と壁側の布の端のループをまとめて止めたので完全ではないにしろフロアと壁の隙間がほとんどなくなりました。
室内の様子
上手く張れた時の室内の様子です。寝るスペースの横に十分な荷物置き場があります。
やはり左右のガイラインの効果は大きく、空間に非常に余裕があります。
先程フロアの半分のみペグダウンした土間スペースです。ペグダウンした側のフロアはズレることがないので荷物を置いたり脚を置くのに使いやすいです。
仰向けに寝ている状態で天井を撮った写真です。伝わりづらいと思いますが高さがあることを伝えたい写真です。あぐらをかいた状態では頭が天井に触れず、だいぶ快適でした。
ツエルト泊の感想と知見
・左右のガイラインは必須。あれば良い、というかないとさすがに縛りプレイすぎる。
・ペグはケチらずたくさん打つべし。四隅だけを張っても長辺はたわむぞ。
・床面に気密性など求めてはならぬ。「マットが地面に直接触れない!素敵!」くらいのマインドで。
・虫は友達。刺されたり毒を受けたりしなければいいじゃないか。
・結露はする。しかし布の内側にわざわざ触れにいかなければ実用上は問題なし。
・先にポールを立ててから四隅をペグダウンすべし
居住性に関しては左右のガイラインやペグをケチらない、など、できることを全て行って初めて担保されるので、ここは風が強くなければペグは省略できちゃう自立式テントとの大きな違いです。私は地面に落ちた食材や食器もなんとも思わず使えるので、虫やら汚れやらは個人的にはアウトドアにおいてはそれほど気にしませんが、これも無理な人は無理な領域です。まあそもそも風呂なしが普通のテント泊する以上は必要以上に虫やら汚れやら気にするのも変な話だとは思いますが…。
風については今回は無風だったので何とも言えないところですが、本来は下山不能なエクストリーム環境を凌ぐための装備でもあるので、ペグをしっかり打って正しく張る分には相当な耐性があるようです(石井スポーツ店員より)。
あとやってみて気づいたメリット。設営はともかく撤収は圧倒的に早いしラクでした。設営はまあ普通のテントと同じかちょっと早いかな、くらいですが撤収は「ペグを抜く→ツエルトを丸めて袋に突っ込む」以上です。急ぐならビニール袋にでも突っ込めば良いので、たぶん1分あれば撤収できると思います。乾かすのも所詮1枚布なので布団を干す要領で簡単です。
欠点もたくさんありますが、軽量な山岳テントに比べても1kg近く軽量になるし撤収から事後処理が楽だし、何より野営に必要最小限の装備というミニマリスト的な道具なのが刺さります。これ以上は不要、これ以下では心もとないという絶妙なバランスです。
荒天が分かっていたり天候急変の可能性が高い夏山の高山なんかじゃダブルウォールテントを持っていくと思いますが、そうでなければ積極的にツエルト泊をしていきたいと思いました。