山と自転車

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【燕岳〜大天井岳縦走①】2023.6 ちょっと日本一の山小屋、燕山荘に泊まって縦走してきた。中房温泉〜燕岳【燕山荘 宿泊記】

 

日本一の山小屋、燕山荘へ

燕山荘は北アルプス表銀座縦走路の入り口、燕岳直下に標高2712mに位置する山小屋で、泊まって良かった山小屋ランキング堂々1位の「日本一の山小屋」です。収容人数は650人と超規模でなんと創立100周年を迎えたというのでもはや山小屋という域を完全に超えて老舗旅館レベルです。

かなり前もって計画をすべき

そんな燕山荘に泊まってみたかった師匠の発案で今回の企画が立ち上がりました。ただし燕山荘はその人気っぷりも凄まじく、予約開始の3月中旬には夏山シーズンの週末がほぼ埋まってしまうほどなので、皆で予定を合わせてから予約を取るのはまず不可能です。

6月に燕山荘を予約したよ

できるだけみんな休み合わせてね

そんな中ある日師匠からこんなLINEが来ました。3ヶ月前に6/3-6/4の日程で予約を取ってもらい、予定が合わせられる人で行こうという最大公約数的なプランです。

ざっくり行程

6/3 山梨集合→中房温泉→燕山荘→燕岳ピストン

6/4 燕山荘→大天井岳ピストン→中房温泉→帰路

メンバー

結果として今回は個人的には例のない7人という超大所帯の登山になりました。

イツメンの師匠、私、HG氏、KW氏に加えて山ヤ女子Y嬢、ほか女性陣。我々は皆結構忙しい職業に就いているのですが、働き盛りの20-30代がこれだけ予定を合わせられたのは幸運もあると思いますが一番は休みを合わせる努力をしたおかげです。

日本の社会人はみんな忙しいですが結局のところ合わせる気があるかどうかに尽きると思います。

登山口 中房温泉駐車場

前置きはこの辺で、山行開始です。登山口は長野県安曇野市、中房(なかぶさ)温泉。ずっとちゅうぼう温泉だと思っていたので読みがなを。

最寄りのICは安曇野ICで、そこから1時間ほど。最後は約10kmの山道をひたすら車で走ると中房温泉にたどり着きます。中房温泉の駐車場は有料ですが、その手前に出てくる登山者用第1〜第3駐車場は登山口まで1kmほど歩かなければならない代わりに無料です。全部合わせて100台以上のキャパがあるので停められない心配はシーズンofシーズンでもなければ大丈夫なはず。

ちなみに燕山荘といえば年末年始も営業していることで知られていますが、冬季にはこの山道が通行止めになるので下界から中房温泉まで歩かなければならず、必然的に中房温泉1泊を挟んだ2泊3日以上の行程になります。

(車でもうんざりする山道なので歩くなんて信じられないけれど…)

中房温泉 登山口

登山口には温泉や自動販売機、トイレがあります。

北アルプス3大急登 合戦尾根

中房温泉から燕山荘までの道のりは合戦尾根といい、標高差1300m、CTは4時間ほど。北アルプス3大急登の一つであるのでそれなりに登りごたえがあります。

ただし噂によると長野県民の小学生の登山遠足の舞台になるくらい(そのため長野県民の多くは登山が大嫌いになって育つとか)なので危険箇所はなく技術も要らず体力だけです。

ロープウェイあるじゃん、あれで登ろうよ

あれは物資用ね

前日に線状降水帯が発生し日本広域が土砂降りに見舞われていたので登山どころじゃなくなっている可能性がありましたが、水はけの良い尾根らしくちょっと湿ってる程度でした。山ってしゅごい。

キャッキャウフフしていた女性陣が次第に喋らなくなるくらいにはずっと登りが続きます。斜度もまあそれなり。合戦小屋手前くらいまでは眺望らしい眺望もないのでまるで南アルプス。もっとも南アルプスとは比較にならないくらい短いですが…。

前半はずっとガスっていましたが標高が上がってようやく雲を抜けつつあります。おひさまが眩しいぜ。

結構こまめに看板が出てきて親切ですが、距離を出されてもしんどい割に進んでいないのが分かって余計しんどい。

合戦小屋目前、神々しい北アルプスの稜線らしき山肌を捉えた!

合戦小屋直下、ここもあと何分看板がこまめに出てきます。

合戦小屋

スタートから2時間15分、合戦小屋に到着しました。

合戦小屋といえばスイカが有名だけどさすがにまだ時期外れ。おしるこがあるようです。

水場はなく、補給するならペットボトルの水を買わなければならないので担ぐが吉。

山飯 具に手を抜かないマルタイラーメン

昼食はマルタイラーメン。チャーシューはもちろん半熟煮卵にネギ、メンマまで全て揃えてくるのはさすがの山岳料理人こと師匠。

先週の尾瀬で大人数用に買ったラージメスティンがここでも生きてきます。棒ラーメンを折らずに茹でられる上に3人前くらいまではいっぺんに調理できるので時短になります。安い、便利、壊れない!ラージメスティン!

合戦小屋を過ぎるとようやく稜線へ。槍ヶ岳が普通に見え過ぎててびっくり。

前情報通り合戦小屋を過ぎると雪が残っていました。ただし斜度が緩い上にシャーベット状なので慎重に歩けばアイゼンは不要です。

本日のお宿、燕山荘。

もうすでに絶景。槍ヶ岳〜大キレットを経て北穂高岳まで早くも展望が開けてきます。

ど真ん中の雪混じりのちょっと平らなピークが北穂高岳で、その左のカール地形の頂点は奥穂高岳です。そして後から気づきましたが両者の真ん中の岩はジャンダルムです。

遂に憧れの燕山荘へ

登頂開始より休憩込み5時間、燕山荘に到着!外観が綺麗すぎて下界にあってもその辺のホテルに引けを取らないレベルです。

燕山荘前は複数のテーブルとベンチがあって広々。燕岳方面と、大天井岳方面すなわち表銀座縦走路ルートに分岐しています。

北アルプスの女王、燕岳。遠目に見ても山肌が白くて本当に美しい山です。北アとしてはなだらかな山容で緑も多く女王の名に恥じない気品ある美しさ。百名山っぽいけど百名山ではない山代表(私見)です。

燕山荘テント場

数年前の燕山荘登山で降雪でテント泊未遂したテン場。このくらいの時期なら私でも泊まれそうな気がします。

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チェックインを済ませた後は荷物を置いて燕岳へ。燕山荘から燕岳は往復1時間ほどで、アップダウンも少ないのでアタックザックすら要らず、手ぶらで向かいます。

イルカ岩

以前は燕山荘より先は雪で進めなかったのでようやく出会えたイルカ岩。実際見てみると想像の3倍デカくて誰がどう見てもイルカでした。

空が…青いぜ

青空と一体化したHG氏は時々1人でたそがれる癖があります。

最高すぎる空の色。撮って出しでこれだからOM-D EM1は良い相棒。オリンパスブルー教に入信します。

メガネ岩

続いてメガネ岩。確かに穴2つ覗いていますがメガネを連想する形ではありませんでした。どちらかというと豚鼻の方がしっくりきます。

燕岳山頂

燕岳山頂、2763m。誰が作ったのか燕岳おにぎりが良い味を出しています。

振り返ると燕山荘。その奥に続くのは大天井岳〜常念岳の稜線。

超広角で、表銀座縦走路から槍ヶ岳。

山頂の景色は見るものというより体験するものだと常々思います。絶え間なく吹き付ける稜線の風、グングン下がっていく体温、山頂の凛とした空気感。ずっとそこに居たいのに、山頂を背にするとちょっと安心する。わずかな高度の変化で劇的に変わる気温や気象条件。

その場で味わった体験までは絶対に再現できないですし、形として残すことができないものです。

夕刻17時半を過ぎても空はまだまだ明るいです。今日の行程をすべて終えて祝杯。

ビールうめえ!!!!!

けど寒すぎwww

山頂の夕日

防寒着を纏って日没撮影に繰り出します。初夏一歩手前の北アルプスは思っていたよりずっと陽が長くて19時近くになっても明るいままでした。

稜線上の黄昏時。

一瞬しか見られないマジックアワー。

夢の世界にいるような色。寒くて外に留まるのがしんどくなってきます。人の存在を許さない環境にこそ絶景がある。

燕山荘内部

いよいよ燕山荘、内部編です。まずは売店が充実、広々とした玄関。

玄関を上がってすぐ、食堂。

玄関正面の廊下にはTシャツの見本たち。

燕山荘案内図。バイオハザード並に階層が分かれていて初見じゃ構造が把握しきれません。今回我々は図中央の第一別館1Fに泊まりました。1階とは書いてありますが図の通り玄関から2フロア分上がったところにあるので実質的には3階です。外からはそんな高層に見えないのでたぶん四次元空間です。

階段のライト。細かいインテリアにも気を遣っているのが見受けられます。

廊下〜談話室

玄関から1層上がって本館2階。

各フロアあらゆる方向に客室が並んでいます。

鍾乳洞のような内張りの階段を上がると3階(別館1階)。

談話室。

談話室の窓からは正面に燕岳が見えます。

客室

別館1階の今回泊まった客室。上下二段のドミトリータイプ(?)になっていて、1区画を2-3名で使います。

我々は7人で宿泊ということで男女別に分かれます。予約数に余裕があったためか3人用の1区画を2人で使わせてもらえたのでこの散らかし具合です。まるで合宿です。

絶景の自炊場へ

別館1階の奥の方に進んでいくと自炊場があります。これは燕山荘の自炊場に下る階段の写真であって決して新築マイホームの写真を間違えて貼ったわけではありません。

自炊場は大テーブル2ヶ所に奥まったところに小テーブルが1つ。2-4組くらいは同時に利用できそうな広さです。

怒涛の山飯ラッシュ

夕食担当はまたまた師匠。ここからはヤマメシの域を超えた怒涛の料理ラッシュです。

もう見慣れましたが当たり前に山中で野菜を切っています。肉と米がありゃいいんだよとはならないのが山岳料理人。

1品目は中華スープ。具材はわかめと九条ネギ。今回は山小屋だから良いですが、山泊では体温が貴重なので温かい汁物を摂ることがとっても大事。後述の鶏肉の煮汁を使っているので山補正抜きに美味い。

2品目。バンバンジー。タレは師匠作でほかは現地調理。山で食うもんじゃないぜ!(褒め)

3品目は青菜炒めとありったけの白米。米は私の担当で、ただのアルミの箱(ラージメスティン)で3合の米が20分ほどで炊けます。始めちょろちょろ中ぱっぱとかあるけどもっと単純。

米と水を入れたらまずは強火→隙間から煙が出始めたらできるだけ弱火にして20分放置→できあがり。以上。

高所で炊くのは初めてでしたが下界のやり方と全く一緒でよく炊けました。米は3合あっても炊く前ならそんなに重くなく、それでいて主食としてエネルギー、満足度ともに最高なので今後積極的に使っていこうと思います。

そして4品目は山餃子!しかもタネ作りから包むのまで山の中でやるという徹底ぶりで、もはや山に泊まるために料理するのでなく山の中で料理するために山に泊まっています。ついに一般家庭用の普通サイズのフライパンも持ってきちゃったし、大人数なこともあって完全に山岳部じみてきています。

山餃子メイキング。大きいジップロック内でタネを作り、袋の角を切って餃子の皮の上にホイップクリームのように絞り出して包みます。上手いことやれば手で生肉に触れず、汚れが最小限で済むのでこれは下界でも役立ちそうなメソッドです。

そして5品目にはデザート。中華のデザートと言えばの杏仁豆腐。さすがにこれは師匠が前夜に作ってきてくれたものですが、風味と食感がものすごく良い柔らかモチモチ系の杏仁豆腐です。どこぞで食べて感激したものを自身で再現したのだとか。そして例に漏れず下界でそれなりにお金出しても遜色ないレベル。たぶん我々は師匠なしで居られない身体に調教されている。

夜景撮影

食後はありったけ着込んで星景撮影タイム。安曇野方面の夜景。

気温は0-5度ほどで、備えがあれば震えず過ごせるくらい。装備はジオラインM.W+スーパーメリノウールM.W+パタゴニアR1+スペリオダウン+レインウェアの5枚。下はタイツ+メリノウールタイツ+パンツ+レインウェア。

この日はほぼ満月だったのでISO1600, F2.8, SS=10秒程度で夜とは思えない明るさ。空が明るい分晴れていても星の数は少なめ。

槍ヶ岳方面は月明かりがさらに差し込んでもはや昼間。

星のぐるぐる。ライブコンポジットを使って30分ほど頑張ってみました。星の回転軸が捉えられて案外良い構図だったのでもう1時間ほど粘ってみても良かったのですが空が明るすぎるので撤退しました。

もうこの時点で完全優勝な気分ですが翌日は確実に晴れることが分かっているので朝焼けから絶景の稜線歩きまで大忙しとなります。2日目に続く。

↓2日目 大天井岳編

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