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【番外編・備忘録】タイ・バンコク旅行記③〜アユタヤ編〜2024.06.28-07.02

初日、2日目編↓

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3日目 世界遺産アユタヤへ

3日目ともなると海外童貞だった私もさすがにそろそろ異国のアレコレに慣れてきた。ようやく色々な交通手段を調べたり自発的に動く気になってきたのである。その意味で3日目以降にアユタヤを持ってきたのはナイスな判断だったと思う。

アユタヤはバンコクから北に80kmほど離れて位置している、かつて王朝が存在したタイの古都である。世界遺産に登録されており、タイ旅行の定番スポットの1つになっている。ここでは遺跡群を巡るほか、水上マーケットや象に乗れる場所があったりして日本にない東南アジア感がたっぷり味わえる。

ロットゥーに揺られバンコクからアユタヤへ

アユタヤまではタクシーで800バーツほど。鉄道だと安く200バーツほどだが、ホテルからトータル3時間かかるようなので(フアランポーン駅→クルンテープ・アピワット中央駅→アユタヤ駅)、ロットゥーを利用してみることにした。ロットゥーとは日本で言う乗り合いバスのようなもので、チケット制なので価格交渉をしなくて良く、安くて(70バーツ)早く移動できる移動手段である。朝食を済ませた後、ホテルからタクシーでモーチットマイ駅(北バスターミナル)へ移動する。

モーチットマイ 英語表記もほとんどなく全然わかんない

モーチットマイはほとんどタイ語表記のみでいよいよさっぱり訳わからなくなってきた。しかもスタッフには日本語はもちろん英語が通じない。唯一「アユタヤ」という言葉は伝わったように思えたが、極めて大雑把に方角を指さされて終わった(その方向に歩いていってもフードコートしかなかった)。

こうなれば頼れるものはスマホのみ、日本人のブログに登場する写真を参考に30分ほどチケット売り場を探し歩いたがそれらしき場所が一向に見つからない。普段ならイライラしてくるところだが、ここまで来るともはや楽しくなってきた。全然わかんない

全然わかんない

スマホ調査を続けると、どうやらアユタヤ行きのロットゥー乗り場はタクシーで降ろされた場所とは異なるらしいことに気が付いた。

降車場所(✗)と正しいアユタヤ行きロットゥー乗り場(◯)

モーチットマイと検索して指定された場所=降車場所は上記✗の位置だが、ロットゥー乗り場は幹線道路を渡った先のminibus terminalという場所だった。

上記地図に対応したストリートビュー

ロットゥー乗り場。幹線道路のガード下にそれはあった。

グーグルマップではロットゥー乗り場まで乗り場までシャトルバスを使う経路が表示されたが、歩道橋を渡ってすぐのところにある。B-4の窓口で無愛想なおばちゃんに70バーツを支払い、次いでおばちゃんとは対照的に陽気な笑顔のおっちゃんに案内されロットゥーに乗り込んだ。ロットゥーはその名前からトゥクトゥクのようにタイ固有の乗り物かと思っていたが、日本の羽田空港の近隣駐車場からの送迎バスと同じ、普通のハイエースクラスのバンであった。

アユタヤの怪しい現地ガイド

ロットゥーに1時間半ほど揺られアユタヤに着くと、降りてすぐに陽気なナイスガイから案内を受けた。ロットゥーの運転手が彼に何かを伝えていたので、間違いなくこれはグルになってぼったくられるやつだと思った。進研ゼミで見たやつだ!

こうなると彼の親しげな笑顔も、英語に混ざって聞こえてくる「トオイ、アルクノツライ、ヤスイ、アンシン」などの言葉は全て怪しさを伴って響いてくる。

英語に日本語を混ぜて慣れた口ぶりで案内してくるナイスガイと私

1時間300バーツでトゥクトゥクで各地を回ってくれるという。帰りの時間を聞かれ17時と伝えると(後述するが帰りはタイ国鉄をすでに予約しており、18時発であった)5時間1500バーツのプラカードを見せられた。正直5時間も要所を回ってくれて2人で6000円ならば十分に良心的ではあるがここはタイランド。相手の言い値はぼったくり成分を大いに含んでいるので即決してはいけない。

細君と共に渋っていると彼はおもむろに手帳を取り出して、日本人観光客からのメッセージを見せ安全性をアピールし始めた。そこには可愛らしい字で「男前に案内してもらえて良かったー」「楽しかったですありがとう」などの文章が書かれていた。もはや懐かしき日本語である。

そして交渉の末「4時間以上なら特別にタイ人と同じ200バーツ/1時間ネ」とのことで、最終的に1時間200バーツで4時間で手を打った。

彼はここでの営業担当のようで、交渉が成立すると黒光りする肌にサングラスを掛けた無口で無愛想なおっちゃん(以下、黒光りと呼ばせてもらう)の元へ案内され、促されるままに赤いトゥクトゥクに乗り込んだ。同じトゥクトゥクでもバンコク中心部のデコトラのようなデザインと異なり三丁目の夕日のオート三輪という風貌であった。正面から見ればまあ普通だが、後ろから見ると床はトタン板で落車防止の手すりの接続部は錆びて今にも断裂しそうで、一言で言えばオンボロであった。このままどこかへ売り飛ばされても不思議ではない趣であった。

赤いトゥクトゥクと黒光りドライバー

結果的にはガイドの内容は大満足だったし、1時間200バーツというのは概ね相場通りだったようなので、ボッタクリ詐欺師と第一に思ったことは彼らに謝らねばならない。

ワット・ヤイ・チャイ・モンコン

まずはトンガリ屋根が特徴のワット・ヤイ・チャイ・モンコンに降ろされた。どうやら我々がスポットを見ている間、黒光りは待機しているようだ。当然、出発が何時頃だの見どころがどうだの、そんな案内はない。この時点ではまだ詐欺に遭っている可能性、つまり戻ってきたら居なくなっている可能性が捨てきれなかったので、チラチラと振り返りながら歩みを進めた。

備忘録とはいえ公開するものなので一応断りを入れておくが、私には歴史的建造物や文化財の教養もなければ興味もそれほどないので基本的に解説は割愛する。

仏像にかける布は端のほうで50バーツで販売されていた。どこで見ても仏像は右乳首を出していたのが印象に残った。もしかすると右乳首にはなにか宗教的に重要な意味があるのかもしれない。

そういえばタイパンツも殆どが右側だけにポケットが付いていた。乳首に限らず右、というのが特別なのだろうか。

アユタヤ水上マーケット

「もう黒光りは居なくなっているのではないか」そんな拭えぬ思いを彼は打ち破ってくれた。駐車場に待つ赤いトゥクトゥクを見た時には黒光りのことを見直していた。ヤンキーが普通のことをすると過大評価されるあれである。

ちゃんと待っていてくれたトゥクトゥク

ラミネート加工された地図を指さして、続いての目的地はアユタヤ水上マーケットだと教えてくれた。細君はまだお腹が空いておらず水上マーケットは後にしたかったようだが、黒光りは「OK?」と聞いてはくれたものの、異を唱えても水上マーケットを示す指は動かなかった。

アユタヤ水上マーケットは大きな池を取り囲むようにお店と通路が位置していて、中央の浮島と随所に橋が渡された構造になっていた。入場料200バーツを支払うと、まずボートに案内され、マーケットを一周してからお店を見て回ることになった。

細君と少年

どこかで見た光景だ。バイオハザード5で完全にこれと同じステージがあった。ボートを操縦しながら橋や屋根の上から弓矢を放ってくるマジニを倒しつつ、時折襲いかかってくるワニの即死攻撃をかわしながら石版を集めるチャプター3-1そのものである。

水上マーケットというとボートに乗りながら水上で売買をするイメージを持っていたが、ここはそうではなかった。売られているものは金額も含め市街地と大きく変わらない。また、日本の忍野八海よろしく子供たちが餌を撒いて魚を集めていたので近寄ってみると、それは巨大なナマズの群れであった。

巨大なナマズの群れ。この一切中が見えない池にどれだけ生息しているのだろう。

私は結構生き物好きで、特に昆虫と魚類が好きなのだけれど、この光景にはゾッとした。

エレファントキャンプ

次に象に乗るべくエレファントキャンプへ移動した。象に乗るのは私も細君もとても楽しみにしていたイベントである。ちなみに水上マーケットにも象乗り場はあるのだが、細君調べによるとぼったくりらしいので、エレファントキャンプで乗るのが良い。

待機場には休憩中の象たち。餌の野菜が売られているので餌やり体験ができる。

と思ったら待機列の後ろの方に座っている象もいた。海外に疎い私でもこの辺りの国では象が神聖な動物であることくらいは知っているので、なんだかありがたい気持ちになってくる。

象に乗るのは1人400バーツで、遺跡を眺めながら街を闊歩する。当たり前のように車と象が共存しているのがまさにお国柄という感じだ。

自分たちが象に乗っている様子は残せないね、なんて話をしているとさすが商魂たくましく写真販売があった。160バーツ+データ70バーツと結構強気な金額だが、これは一生に一度の可能性が高いのでケチるところではないと判断した。

ワット・ロカヤスターラーム

次に向かったのは寝そべる仏陀像(?)の場所だった。ここは最初にfreeつまりタダ、と聞いていたので、現金残り600バーツしか持たない我々にとって僥倖のはずが、着いて早々に蓮の花と線香を20バーツで買わされることになった。

寝そべるお釈迦様。とても良い笑顔である。

なぜ寝そべっているのかと言うと、全ての教えを説き終えて入滅せんとする姿なのだそう。つまり「人生全てやりきって後は死ぬだけやねん」という状態だ。私もそんな風に最期を迎えられる人生にしたいものである。

ワット・マハタート

次に仏像の首が木の根に埋まっているところへ。入場料50バーツは現金カツカツ民には痛手だが仕方がない。中に入ると件の木の根に埋まる仏像の首の他、首のない仏像が多数あった。

何故首のない仏像が??さすがに気になって調べたところによると、アユタヤ王朝が侵略され敗北した時、敵国が勝利の証として仏像の首を落としていったのだそうだ。例の木に埋まる仏像の首も、破壊され捨て置かれた首を取り囲むように木々が生えて形作られた。

街中至るところに寺院があって、一時的でも出家することが大変な名誉であって、修行僧(monk)を尊敬し崇め、見ず知らずの外国人観光客にさえも祈りを捧げてくれるような信心深いこの国で、仏像の首を落とすということがどれほど残虐な行為なのかは想像に難くない。50バーツをケチろうとした憐れな私達だが、行って良かったと思う。

突然の日本語表記

アユタヤは基本的にタイ語と英語(+中国語)表記だったのが、ここで突然思い出したかのように日本語が現れた。外国のちょっと変な日本語からしか得られない面白さがある。

ワット・チャイワッタナーラーム

ここまででもうだいぶ満足していた。手持ちの現金も尽きかけていて、案内終了の16時までは残り30分ちょっと。もうこれで打ち止めにしてくれて構わない。そんな意思表示も兼ねて少し余分に時間を潰してトゥクトゥクへ戻ると、今度は何の案内もなく出発した。スタート地点に戻りやや早い終了になるかと思いきや、また新たなスポットで停車した。どうやらこの黒光り、見た目とは裏腹にキッチリ仕事をこなすプロ意識の高いおっちゃんのようだ。

なんか、白い三角屋根のやつ

しかし我々はすでに寺院も遺跡も十分に満足していた…言い換えれば飽きていたので適当に散歩して時間を潰しトゥクトゥクへ帰還した。今度こそ終了らしく、両手で大きなバッテンを突きつけられた。

敢えて歩いてアユタヤ駅へ

ロットゥー乗り場に戻るとまた朝のナイスガイである。帰りのロットゥーのチケットを買うように言われたので、18時の電車を予約していることを伝えた。するとそれまで2時間あるからボートで川を巡ると良いと、また得意の英語と日本語混じりの営業が始まり、おもむろにどこかへ電話をかけ始めたので渾身のno thank youを突きつけた。向こうも慣れているのだろう、特に気分を害した様子もなく、アユタヤ駅の方角を示してくれて「ありがとうコップンカー(タイ語でありがとう、の意)」で締めくくられた。

もうこの頃にはすっかり仲良しに…なんてことはまったくない

電車の時刻まで余裕を持たせておいたので、すぐ近くのカフェレストランで軽く食事をした。ここはクレジットカードが使えるので現金難の民は参考にされたい。

さてこのロットゥー乗り場もといレストランからアユタヤ駅までは徒歩3kmほど。

アユタヤの地を、ただ歩く

途中で見つけたタイ米ショップ

アユタヤ駅まで歩く場合、途中で川を渡る必要があるのだが、ここが幹線道路をモロに徒歩で渡るしかなくて日本なら即ニュースになりそうな光景であった。

すぐ傍らを車が走る、恐怖の橋渡り

アユタヤ駅に近づくと「ラキスキー」「ラッキスキスキ♪アユタヤ〜♪」と大音量の歌を流すトゥクトゥクが止まっていて、妙に耳に残るその歌を口ずさんでいるとアユタヤ駅にたどり着いた。

「ラキスキー」は文脈的に「ようこそ」のことかと推測したが全然違うようで、記事作成時点でも意味が分からないでいる。タイ語で「愛する」をlakと発音する(ラキと読むのかは分からない)ようなので、愛する皆さん、とか愛する土地、みたいな意味合いだろうか。もしご存知の方はコメントを頂けると幸いである。

予約は簡単、しかし大らかなタイ国鉄

帰りはアユタヤ駅からバンコクのクルンテープ・アピワット中央駅間を結ぶタイ国鉄(https://dticket.railway.co.th/DTicketPublicWeb/home/Home)の特急をネット上で予約していた。冒頭で書いた通り3日目ともなると「タクシーで帰ってもつまらんな」なんて思いも芽生えていたので、タイの特急列車に乗ってみようじゃないかと、エアコン付きの一番高い席(260バーツ)を予約した。HPはタイ語と英語が選択でき、ある程度の英語が分かれば「えきねっと」や「スマートEX」と同じくらい簡単に予約することができる。

アユタヤ駅

こうして私達は異国の田舎の駅に辿り着いた。世界遺産の最寄り駅とはいえ規模感や作りは日本の地方の無人駅と同等であり、改札という概念はなかった。

線路とプラットホームを仕切るものはない

そしてプラットホームと線路は地続きになっていた。日本でも地方のローカル線では珍しくないが、好きに歩き放題という雰囲気が日本のそれとは大きく異なっていた。

「ム」が何故か反転する日本語表記

私達が乗る予定の電車は上から2番目、18:05発予定のSPECIAL EXP.だが、この列車だけが脅威の37分遅れであった。注意深くアナウンスを聞いていたが、遅延の理由どころかそもそも遅延していることすら触れていなかった。タイ滞在3日目、もうこのくらいで驚いたりはしない。というよりは、日本の電車が几帳面&厳しすぎるんじゃないかと思う。

そして掲示板を見る度にサイレントに遅延が伸びていて、結局約1時間遅れで特急列車が現れた。どこで乗るのかさっぱりだったが、予約している車両を伝えると駅員が誘導してくれた。駅員が示した車両の、1つ隣の車両が私達の予約した車両だった。

車内の様子

快速列車が90バーツ、特急が260バーツだったのでその差約3倍。日本で言う特急と新幹線の中間くらいの価格設定だが、車両が豪華…なんてことはない。エアコン付きなんて豪華ラグジュアリー列車だぞ!なんて細君に得意げに話したが、よく考えたら日本では当たり前のことだ。しかしさすがの特急であり、バンコク中心部のクルンテープ・アピワット中央駅までわずか50分足らずで着いてしまったので一番高い特急列車は伊達ではなかった。

広すぎたクルンテープ・アピワット中央駅

そうしてクルンテープ・アピワット中央駅に辿り着くと、そこは空港と見紛うほどの広大な空間だった。そして外はスコールと呼ぶべき土砂降りの雨。思えばこっちに来てから天気予報というものを考えたことがなかった。起こったことをそのまま受け入れる大らかな精神性が身についたのかもしれない。

そしてクルンテープ・アピワット中央駅からホテル最寄りのフアランポーン駅まで戻るのが高難易度であった。Grabでタクシーを使うつもりが混んでいるせいか一向に捕まらず電車を使うことにしたのだが、大きな駅の割に他言語民に分かるような案内表示がなく、駅員に身振り手振りで伝えるしかなかった。

結果としては駅前のロータリーに隣接した線路を直接歩いて、Bang Sue junctionという駅?から電車に乗る必要があった。

クルンテープ・アピワット中央駅 ロータリー

クルンテープ・アピワット中央駅からBang Sue方面。高架下に見える電車がフアランポーン駅に向かう電車

Bang Sue駅はタイ語表記しかなかったが、もうそれくらいでは動じない。ボディランゲージを駆使し、雨の中全力で走って発車間際の列車に乗り込むことに成功した。後から調べると最終便だったようで、これを逃したら事実上帰れなくなっていた。

テップ・バーへ行く

刺激的なバンコクの日々もいよいよ今日が最期の夜なので、屋台やコンビニではなくちゃんとした店に行ってみようと、フアランポーン駅から徒歩で行けるテップバーというBarを訪ねた。

テップバーは口コミ評価が高く、クレジットカードも使えてタイ音楽の生演奏が楽しめるちょっとお高め(カクテル400バーツくらい)のバー。

隠れ家的な雰囲気のテップバー 入口で身分証明のためパスポートを求められた

メニューは英語が併記されている

手を伸ばせば触れる距離で始まったタイ音楽生演奏

ビールとカクテル、料理数品を注文して1600バーツほど。クレジットカードが使えて英語も通じる。今日一日の中では最もコミュニケーションが取りやすかった。

こうして、タイ旅行で最も刺激的だった一日が終わった。

 

最終日へ続く

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