初日〜3日目編↓
最終日 近場を巡る
この頃になるともうだいぶこちらの色々に慣れてきていて、言葉が通じない相手への価格交渉も屋台での食事も、3歩歩けばトゥクトゥクドライバーに言い寄られることも言語の壁で難解な鉄道利用も抵抗がなくなっていた。そんな最終日は遠くの観光地に行くことはせず、名残惜しむようにバンコクの街並みを歩き回ることにした。
ホテルは10時チェックアウト。荷物を預かってもらえるか打診するつもりでいたら、向こうの方から荷物を預かってくれた。
マッサージのはしご
まずは2日目にも行ったアルンダオリエンタルマッサージへと向かった。この時点でもう現金は二人合わせて1000バーツくらいしか残っていなかったし、いちいちカードが使えるか調べるのが億劫だった。ちなみにこの時のGrabドライバーが日本人かと思うくらい丁寧で好感触の接客だったので20バーツのチップを渡した。財布の紐をちゃんと締められる細君は怪訝な顔をしていたが、一度やってみたかったのだ。
細君は高級なオイルマッサージ500バーツ/1時間(それでも日本の相場に比べれば破格だが)、私は肩背中首に特化した350バーツ/1時間にした。お互いに上半身をスイングされてバキバキ鳴らされる、また異なるパワー系であった。
タイのマッサージ店はいつ行っても「HAPPY HOUR foot 200THB/1h」の看板が出ている(いつ行っても閉店セールをしているアメ横みたいだ)。着替えが要らずよりカジュアルに受けられるフットマッサージは、今回の旅で一番の極上体験だった。ただし我々は後述の市場で現金をほぼ使い切った後だったので、手当たり次第card OK?と聞いて回って、フットマッサージ250バーツ/1時間の店に入った。店頭で客引きをしている店のほとんどは現金のみなので注意されたい。
プラトゥーナム市場
続いてはアルンダオリエンタルマッサージから徒歩圏内にある市場へ向かった。
手押し車で大量の衣類を運ぶ人や屋台と呼んで良いのか分からない小規模の露店、歩行者の隙間を縫うように走るトゥクトゥク。この4日間で感じたタイらしさが凝縮された景色だった。
これだけ様々な国・文化圏の人が居ると他人の目線だとか周囲の人と違うことなんて気にならなくなる。日本社会の過剰な同調圧力を思うと、やはり他の国や文化を学んで多様性というものを理解するのは重要だと思った。
イメージ通りのタイの混沌がここにはあった。
すごい、こんなにたくさんの看板があるのにほとんど分からない!
Cafe Amazon
バンコク中心部で日本のスターバックスくらいの頻度で目にしたCafe Amazonについに潜入した。タイの石油会社が創設したタイ最大級のチェーンカフェで、2023年末には日本にも上陸しららテラスTOKYO-BAYに出店を果たしている。明らかに南米の鳥にアマゾンをイメージしたカラーリングの看板はひと目見たら忘れない。
店内は薄暗く、木々に覆われたアマゾンのジャングルをイメージしているのだとか。
バカ舌なので味の表現が難しいけれど、苦みとかコクが強く好みの味だった。
市場は迷路のように入り組んでいて、歩く羅針盤を自負する私でも方向感覚が狂わされた。意外にもトイレがいくつか市場内にあって配慮が行き届いていた。ちなみに利用には5バーツ必要なので注意。市場の中心にあったこのフードコートはメニュー豊富で美味しかったです。
買い物を終えフットマッサージを終え、残る現金は二人合わせて200バーツとなった。時間も余裕があったのでホテルまでの3kmの道のりは歩いて巡った。
このカオスも見納めかと思うと寂しい。実際帰国してから、今まで雑多だと感じていた立川駅前がやけに静かで殺風景に見えてしまった。
タイのLOFTや無印良品
カオス空間を歩いていたと思ったら突然オフィス街みたいな整然とした街並みが現れるのも面白いところ。見慣れた文字を見つけた。
やはり異国の地でもLOFTはLOFTだった。ちなみに物価が安いと言われるタイだけれど、あくまで屋台やタクシー、交通機関、市場などでの現地の商品に限られる。タイに行けば電化製品やブランド品が安く買えるなんてことはなくて、むしろ日本より高く付く。LOFTの雑貨の相場感も日本と同じかやや高めで、日本のキャラクターグッズ(クレヨンしんちゃんが人気のようで至るところに売られていて、他にはSPY×FAMILYや呪術廻戦など)は特に高価だった。
無印良品もだいたい日本の1.0~1.5倍くらいの価格帯。無印のシンプルなテイストはタイ人にはウケない気がするけれど。
ARL-Airport Railway Link-
いよいよホテルに戻り、時刻は18時頃。帰りのフライトは23:45発なのでかなり早いもののスワンナプーム国際空港へ移動することにした。初日は右往左往しながら流しのタクシーを拾って移動したが、帰りは空港に直結する電車ARL(Airport Railway Link)を使ってみることにした。
ARLはバンコク中心部のパヤタイ駅とスワンナプーム国際空港をわずか30分程度で結ぶ鉄道で、クレジットカードは使えないが45バーツという低コストで利用できる。
Grabタクシーでパヤタイ駅に降ろしてもらい、看板を頼りにARLの改札まで移動する。パヤタイ駅は先のオフィス街、ショッピングモールなどが群生するエリアにあって、BTSやSRTなど様々な路線が走っているがARLに向かう案内表記が頻繁に設置されているので周囲に注意を払えば迷わない。
ARLに乗るには券売機でトークンを購入する。スワンナプーム国際空港まで45バーツ、これで現金残り110バーツになった。屋台や空港のMAGIC Food Pointなら2人分の食事をするのには十分だ。改札に入る際にトークンを指定の場所にタッチして、降りる時にはコインのように改札機に投入する。
スワンナプーム国際空港
小銭混じりのなけなしの110バーツをチャージしてもらい、1バーツも残さず完璧に使い切った。しかし、朝気取って20バーツのチップを渡していなければここに卵を2つトッピングできた。卵と見ず知らずの優良タイ人ドライバー、あなたならどちらに20バーツ払いますか?
空港内はハイブランドショップが大半を占め、そうでなくとも普通に物価が高くて何も買う気がしなかった。外国のタバコのパッケージは恐ろしいと聞いていたのでお土産に買って帰ろうかと思ったけれど、あまりの禍々しさに躊躇してしまった。日本でもこうしたら相当売上が変わってくると思う。
無事入国手続きを済ませ時間を潰していると、細君の腹の虫が鳴き出した。身の置きどころのないエアアジアXの機内のオーバーナイトフライト、途中で起きて眠れなくなったら大変だと理由をつけマックに入った。しかし空港価格もありめちゃくちゃ高くて、日本で言うポテナゲ的なモノにしとこうと思いきやなんと600バーツ。迷った末日本ではもう食べられないクオーターパウンダー250バーツとポテトとドリンク400バーツ、2000円以上の軽食となった。
帰りもあのすし詰めフライトか…げんなりしていたけれど奇跡が起きた。なんと一番前の座席で、足を伸ばしたり組んだりし放題。これはやはり朝の20バーツの善行のおかげに違いない。ぐっすり…とはいかなかったものの、なんとか翌日に響かないくらいの睡眠を確保して無事帰国することができた。
初海外に行ってみた感想
海外旅行に一切の興味がなかった私。それが控えめに言って海外旅行も悪くないな、そう思えるようになったくらいには刺激的で新鮮で楽しい体験だった。これが最初で最後だと確信していたけれど、もしかしたらそうではないかもしれない。いや、なんならタイにはまた行きたいと思う。
海外に行けば視野が広がるのか
行ってみて一番良かったと思うのは、端的に言えば日本と全く異なる文化を知ることができたこと。最初は日本と比べて云々と否定的に感じていた事象も、気づけばありのままを受け入れられるようになっていた。
食事をしながらスマホをいじりながら接客する気ゼロの露天商たち。逆に商魂たくましい観光地の人々。交渉が必須なタクシーやトゥクトゥク。みんな我先に、けれどなぜか事故が起こらない混沌とした道路事情。値切り交渉が当たり前の文化。適当過ぎる仕事ぶりの駅員。
どっちが良いとか悪いではなく、日本と全く異なる人々の営みがあることを知識として知っているのと現地で体験するのは全然違っていた。これは登山や自転車旅にも通ずる、私が大事にしている価値観そのものだった。
海外に行った日本人がよく言いがちなセリフとして使い古された「海外に行けば視野が広がる」というアレ。悔しいけれどあながち間違いではない気がする。上記のようなことを体験したことがあるかないかは「自分と違う人に寛容になれるかどうか」とか「自分の常識が必ずしも他の人に通用するわけではないことをどれだけ理解できるか」ということに大きく影響すると思う。
まあ、別に私は趣味以外には意識が最底辺に低い人間なので意識高い系みたいにはなれないけれど「日本で一応ちゃんと社会人までやってきた自分の常識が通じないこんなおもしれえ場所があるんだなぁ」と知れたのは大きな収穫だった。
日本の英語教育も捨てたもんじゃないと思う
よく日本人は中高6年間(最近はもっと長いだろうけれど)も英語を学んでいるのに、英語力はからきし、喋れるだけですごいなんて遅れているにもほどがある。みたいな意見をよく耳にする。確かに何事も6年間も時間をかけてモノにならないのは明らかにやり方が悪いし、自分含め日本人が英語ダメダメなのはその通りだと思う。
けれど、今回タイに行ってそんな自分たち日本人も「英語さえ書いてあれば安心」と思えるくらいには英語に助けられたし、英語が話せる人相手であれば少なくとも意思の疎通や自分が知りたいことある程度を聞くこともできた。正しい英語でもなければボディ&単語ランゲージがほとんどだけれど、その能力がデフォルトで備わっているのは日本の英語教育のおかげなんじゃないかと思う。
街中や観光地、交通機関で目にする英語は難しい単語も構文もないし、義務教育の範疇で意外と分かるもんだと思う。YESとNOとOKくらいしか通じない(正直これだけでも結構なんとかなってしまうけれど)タイ人を見ていると、これは決して当たり前のことではないと思った。実は密かに英語を勉強している私。モチベーションの維持が課題だったけれど、異国の地でもなんとかできる「ツールとしての英語」という視点が持てたのもまた収穫であった。
言葉が通じなくともお互い伝えようとさえすればなんとかなることを知れて良かった。むしろ同じ言語で話が通じない人と話すよりも、言葉が通じなくともお互い伝えようと必死になる方がよほどコミュニケーションだと思った。
最後に
「まるまる使える5日間があったらどうするか?」この問いに対する答えは、現時点ではやはり海外旅行よりは5日間かけないとできない山行や国内の自転車旅をしたい。これは変わりないけれど、変わったこととしてはこの問いの答えが「海外旅行よりも登山や自転車旅の方が好きというあくまで好みの問題になった」こと。私にとっては未踏の山々を歩いたりまだ見ぬ景色を求めてペダルを回すのが一番好きなことだけれど、海外旅行はその体験に匹敵しうると考えを改めた。なので状況によっては山よりも自転車よりも海外旅行、という発想になることもあるかもしれない。〜fin〜