カラーオーダーで3ヶ月待ちして納車したTyrell FSXも納車から2ヶ月余り経過し、電車はもちろん飛行機輪行にも連れ出しあちこち走ってきました。そして何度か経験したんですよね。チェーン落ちで展開不能になる事態を…。
ネットで調べてもあまり情報が出てこないので私の扱いに問題があるのかと思いましたが、X上では同じ経験をしている方がちらほら。
ということで今回の記事は折りたたみ時にチェーン落ちして展開不能になる原因及び直し方、あとついでにGreen Cycle Station直伝のTyrell FSXの折りたたみ方について示したいと思います。
Tyrell FSXの折りたたみ方
まずは私のTyrellの購入店であるGreen Cycle Station直伝の折りたたみ方です。
サドルにCarradiceのサドルバッグマウント、バッグマンが付いていますが、それ以外はごく普通の状態のTyrell FSXです。洗車前なのでバッグ類を外しています。
いつも通りクランク側から撮影しましたが、折りたたむ際はBROMPTONと同じく、車体の左側に立ちます。
①フロントをインナー、リアを2番目に軽いギアにする
まずはフロントディレイラーをインナー(軽い方)にし、リアディレイラーをロー(軽い方、歯が大きい方)に設定します。リアは2番目に軽いギアにします。一番軽い位置でもできるそうですが、Tyrell公式の動画でも2番目と言っていました。
②クランクの位置を設定する
左クランクを12時の方向もしくはシートチューブと平行になる向きにします。BROMPTONでは逆に左クランクが真下を向くようにするので双方のユーザーは注意。
③シートステー、チェーンステーをたたむ
まずシートステーとシートチューブの接合部にあるピンを抜きます。
まず左側から押し込んで、右側からピンに付属のリングを引っ張って引っこ抜きます。
続いてクイックリリースレバーを開放します。
ここまででクランクの位置がズレてしまったので適宜修正します。
ピン、レバーを外すとシートステーがこのように外れるので
チェーンステーに押し付けるようにしてたたみます。
シートステー、チェーンステーを左側から見るとそれぞれ凸凹のマウントが付いていて、程良い硬さでハマります。
④後輪をたたむ
クランクの回転軸あたりを中心に後輪を前方に持ってきます。このとき前輪が後輪の左側に来るようにハンドルを切る必要があります。この後輪の動き自体はBROMPTONとほぼ同じですが、またまたハンドルを切る向きがBROMPTONと逆なので要注意。
この後輪の動きについても、左側から見るとチェーンステーとダウンチューブに凹凸関係のマウントがあり、シートステー同様ぴったりハマるようになっています。
この凹凸を噛み合わせると、凹のマウントの右側の穴とダウンチューブ側のマウントの穴が一直線上に来るので、ここに最初に抜いたピンを差し込みます。
このとき重力により噛み合わせが外れる方向にずれるので、足や膝を使って後輪側を少し持ち上げるようにサポートします。
最終的にはここにピンを奥まで差し込みます。
この後輪の作業の際、このようにシフトワイヤーが凹マウントにハマっていることがあるので挟み込まないように留意します。
注意点 このマウント、動くぞ!
この後輪の折りたたみ作業ですが、時々マウントが動いてハマらないことがあります。
いずれもボルトで留められているマウントですが、かなり締め込んでも割と動きます。これに気づかず出先で急に折り畳めなくなって冷や汗をかいたことがありますが、冷静に手で微調整してあげればOKです。
⑤フロントフォークをたたむ
これはTyrell FSXの特徴的というか変態的な折りたたみ機構の1つです。カーボンフォークが折れるという脅威のシステム。
まずフロントフォーク左側のピンを引き抜きます。
先程のピンと異なり、こちらはピンの中央の突起を押すと先端の方の突起が引っ込む構造をしているので、ピンの中央を押しながらでないと抜けません。
ピンを抜いたらフォーク正面のクランプを緩め、写真のように前輪が後方に来るようにたたみます。
この時点で前後輪、シートステーの接地点、により自立します。この位置にしたところでフロントフォークのピンを戻します。
同じようにピンの中央を押した状態で元の穴に差し込み、フォークを畳んだ状態で固定します。
⑥ハンドル、シートポストをたたむ
あとはステムに付属している六角レンチを使ってステムを緩めてハンドルをフレーム側に回してコンパクトにします。サドルはバッグマンが付いているので逆向きにしていますが、通常はシートポストを下げるだけで大丈夫です。
ちなみにハンドルを曲げる向きは公式にはこの写真と逆(正面に向かって左)ですが、私は左側を下に横倒しにする(=ディレイラー側が上になる)ことを想定してこの向きにしています。
バッグマンはこのようにブラケットを通すようにすると干渉せずシートポストをほぼ一番下まで下げることができます。
こちらが完成形です。BROMPTONくらいギュッと詰まった折りたたみフォーム、メカメカしくてかっこいいですね。
ちなみにこのままでは前輪が開くように動いてしまうので
私はいつもロードバイク輪行用のりんりんバンドを使ってこのようにフレームと一緒に固定しています。
展開時の注意点
展開する際は基本的に逆の順番(フロントフォークを展開→後輪を展開→シートステーを固定する)で上記手順を行うだけですが、後輪を展開する際にはリアブレーキを掛けた状態(ブレーキレバーを握りながら)展開します。
現行のSHIMANOコンポではこれをしないとチェーンによりフロントディレイラーに過度の力が加わり最悪一発で破損するそうです。
理由が気になり恐る恐るブレーキを握らず展開した時の挙動を観察してみました。さすがに完全展開まではしませんでしたが、おそらくこのようにチェーンがズレてフロントディレイラーに横の力が働いて破損するのだと思われます。
チェーン落ちして展開不能になった時の対処法
続いてはいよいよトラブルシューティング編です。この直し方はディレイラー等に負担をかけないよう自分なりに考えて実践しているやり方で、公式にTyrellあるいはGCSから聞いた方法ではありません。ゆえに同じことをして悪いことが起きても自己責任でお願いします。
「チェーン落ち」とは一般的にはフロントディレイラーからインナーもしくはアウター側にチェーンが落ちることを指し、ディレイラーの調整不良か激しい振動を伴うライドで起こります。
ここで言うチェーン落ちは折りたたんだ状態でフロントディレイラーのインナーギアにかかっているチェーンがさらにインナー側に落ち、チェーンがチェーンリングとフレームの間にはまり込んで後輪が展開できなくなる状態を指します。
正常な状態
まずこれが通常通り展開可能な、問題がない状態です。
フレーム側の黒い部分(以下、可動部とします)とチェーンの位置関係に注目すると、チェーンは可動部の外側(このアングルでは下側)に位置しています。これが正常。
このときフロントディレイラーを見てみると、チェーンはややインナー側に引っ張られますが、インナーチェーンリングと噛み合った状態です。
チェーン落ちした状態
続いてこれがチェーン落ちして展開不能な状態です。可動部とチェーンの位置関係を見てみると、チェーンが可動部の内側(上側)に来ているのが分かります。この状態で展開しようとするとチェーンがストッパーとなり展開不能になります。
横から見た状態。明らかにチェーンがクランクの回転のほぼ中心に来ています。
折りたたんだ状態でクランクを動かすとチェーン落ちする
前述のように、折りたたんだ状態のチェーンの位置は元々結構際どい状態になります。
後輪を折りたたむことにより通常の展開時に比べ、チェーンがややフレーム側に引っ張られます。またこの際チェーンとインナーチェーンリングが完全には噛み合っていない状態になります。
チェーン落ちするタイミングは例外なく折りたたんだ後に駅構内を歩いたり、バス輪行で横倒しにして他の人の荷物にまみれた後でした。自宅の室内で何度折りたたみと展開を試してもチェーン落ちは起こりませんでした。すると考えうるのは運搬時にのみ起こり得ること。具体的にはクランクを動かしてしまうことでした。
ということで実験です。まずはチェーン位置およびクランク位置が正常なこの状態でスタート。
ここからクランクを自然に動く向き(ぶつかった時に動いてしまうであろう方向)、左側から見て時計回りに動かしてみました。
するとそれに伴ってチェーンが動いていき…
クランクを1/4周ほど、干渉して動かなくなるところまでゆっくり動かしたところチェーン落ちする瞬間が確認できました!
完全にチェーン落ちです。やはりまず間違いなく運搬時にクランクが動いてしまうことが原因のようです。室内で練習=持ち運びを伴わない状況では起こらないことの説明がつきました。
意図的にチェーン落ちを起こした時のクランクの位置。チェーンがフロントディレイラーを出てすぐのところでめちゃくちゃ屈曲しているのが分かります。
チェーン落ちの直し方①
今のところ治す方法は2つ。繰り返しですが自分なりに試して今のところ上手く行っている方法というだけなので、この通りにやったら壊れた!責任取れ!系のクレームは受け付けません。
まずはクランクを左から見て反時計回りにゆっくり動かして元の位置に戻す方法です。運が良いとクランクをカチャカチャ動かしているだけで勝手に戻ります。折りたたんだ状態で直らなければ後輪側のピンを抜いて後輪を動くところまで展開しながらクランクを動かします。
ただし後輪の展開はブレーキを掛けながら行わなければならないので、フロントディレイラーに変な力が加わっていないかどうかを確認しつつ半分ほど展開しつつクランクを動かすという結構大変な作業です。
ただし何度か実験した感触としては折りたたみ状態でクランクを動かして直らない場合はあまり粘りすぎず②に移行した方が良いです。
チェーン落ちの直し方②
チェーンを指で押して元の位置に戻すパワー系解決です。アホみたいですが確実性が高い方法です。チェーンを押して先の「可動部とインナーチェーンリングの間」を抜けさせられればOK。
最初は後輪を半展開しながら無理やり押して頑張っていましたが、どうやら「可動部とインナーチェーンリングの間」が最も広くなるのは折りたたんだ状態のようです。
よってポイントは完全に折りたたんだ状態で行うこと。考えてみればクランクの動き程度につられて落ちてしまう、チェーンよりわずかに幅が広い程度の隙間なので逆もまた然りということ。写真のようにクランクの回転軸を中心としてその両方から均一に、フルパワーをぶつけるというよりはじわーっと力をかけていくようにすると抜けやすいです。
この時チェーンを無理に引っ張るとフロントディレイラーにもろにダメージが入るので、フロントディレイラーに変な力が加わっていないか十分に確認しながら行います。
考察 12速コンポなら起こらない?
この現象は「インナーチェーンリングとフレームの間の隙間がチェーンがギリギリ通る幅になっている」せいで生じます。もっと広ければ落ちても簡単に戻るし、もう少し狭ければそもそも落ちないはずです。
ゆえにチェーンが薄くなる12速コンポの場合は問題にならない可能性があります(多段化するほどスプロケットの間隔が詰まるためチェーンは薄くなる)。もしかすると「チェーン落ちしやすくはなるものの簡単に戻せる」もしくは「落ちていても展開時に勝手に戻るので落ちたことを意識することがない」かもしれません。
こちらの記事によるとSHIMANO11速のチェーンの厚み(インナープレート幅+アウタープレート厚みx2)は3.6+0.65x2=4.9mm、12速チェーンでは3.35+0.6x2=4.55mmとなり、0.35mmの差があります。機材がないので実験しようがありませんが、この0.35mmで例の隙間を突破しやすくなるのかは興味が湧くところです。
しかしいずれにせよ、デフォルト=11速コンポとして販売している以上、できることならこの隙間を詰めるのか逆に広げるのか、ぜひ改善して欲しいところです。少し削ればそれだけで解決しそうな気もしますが、折りたたみの可動部ないしチェーンリングを削ることになるので手が出しづらい場所です。Tyrellさんお願いします!
Tyrell FSXのチェーン落ちについてまとめ
折りたたんだ状態でクランクが動くとチェーン落ちする
手順通りに折りたたむとクランクが飛び出すような位置に来るので、どうしても運搬時にぶつけて意図せず動きやすいです。今思いつきましたがりんりんバンド等を使ってクランクが動かないように固定するのはありかもしれません。
直し方①はクランクを元の位置に戻す
抵抗がない範囲でクランクを動かすと運が良ければこれだけで直ります。
直し方②は直接チェーンを手で戻す
折りたたんだ状態でクランクを中心に、その左右から指でチェーンを落とすように押し込みます。じわーっと力をかけるのがポイント。
あくまでいち個人の経験談による記事でした。もしかするとどこかもっと信用できる情報元が出している情報があるかもしれません、なにか本件に関する情報を持っている方はコメントもしくはXアカウント等で教えていただけると幸いです。