ジェットボイルについて語りたい
私が心から信頼し愛用している登山道具にジェットボイルミニモという調理器具があります。ジェットボイルといえばその名の通りに瞬間湯沸かし器の異名を持つ、とにかく沸騰までが爆速の調理器具です。
その秘密はバーナーとクッカーの接地面の「フラックスリング」。クッカーの底が蛇腹のようなひだ状の構造になっていて表面積が非常に大きくなることで極めて高い熱効率を実現しているそうです。
まあこんな理屈は抜きにして、高所かつ爆風や極寒という過酷な環境になりがちな登山でも本当にすぐにお湯を沸かしてくれるので、使うほどに信頼が増していくような道具なのです。
キャンプ用品に非ず
そんなジェットボイルですが、しばしば「キャンプ用でしょ?」と軽んじられることがあります。私もかつてはそうでした。
確かに同じアウトドアと言っても、基本的に車ありきで道具の体積や数や重量の制約がないキャンプ用品と、重量はもちろん体積もシビアに見られる登山道具とではその性質は大きく異なります。
その観点で行くとジェットボイルは重くてかさばる(というイメージが強い)ので前者に分類されがちなのも納得です。しかし持ち前の燃費の良さにより、2泊くらいの縦走でもOD缶が一番小さいサイズ1つで済むので、実はシステム全体で見ればさほど大きな差はありません。
雪山も含めて過酷な環境であればあるほど湯沸かしの速さは光りますので、ジェットボイルはキャンプ用品ではなく立派な登山道具であると声を大にしてお伝えしたい。
湯沸かしだけじゃない ジェットボイルミニモ
ここからは私が使っているジェットボイルミニモというモデルの話です。このモデルはサーモレギュレータを搭載したことでジェットボイルが苦手としていた弱火の維持を克服しさらに寒冷地での使用にも対応したモデルです。
また、底の深い筒状のモデルが多い中で直径が大きく底が浅め(他のジェットボイルに比べ)の形状をしているためクッカーとしての使い勝手が大幅に向上しており、カレーやシチュー、鍋などの煮込み料理がしやすくなっています。
雪山でも爆速
そして私が一番気に入っているポイントは雪山でも同様に使えること。これに尽きます。経験してきた中でいうと-5〜-15度の雪山でも夏山と遜色ないスピード感で沸騰してくれます。これは3000m級でも同様です。
私はジェットボイルの他に高火力軽量コンパクトバーナーの代表格のプリムスP153を使用しています。こちらは寒冷地用のOD缶を使えば同じ環境でも使えますが、体感的には水・食材を温めるまでにジェットボイルはもちろん夏山でのP153よりもかなり時間を要します。(ちなみにジェットボイルのガス缶はそのまま寒冷地で使えます)
あとは風が強い環境での火の維持は明らかにジェットボイルの方が良いですね。風に吹き消されて投げ出した経験がありません。
ある年の12月後半の瑞牆山山頂でのエピソードです。私がP153で湯沸かしを始めたのとほぼ同時にジェットボイルで湯沸かしを始めた紳士がいたのですが、私がようやく沸騰したお湯をカップ麺に注ぐ頃に彼は既にスープを飲み干し撤収に取り掛かっていました。
思わず「ジェットボイルってこんな寒くても使えるんですね」と話しかけたら彼はニイッと笑い「キャンプ用だと思ってたでしょう?雪山でも速いですよ」と言い下山していきました。これが私がジェットボイルに興味を持ったきっかけでした。
なぜ寒冷地でも強いのか?
ガス缶の中身は主にブタン、イソブタン、プロパンで、この順に沸点が低くなる=低温で燃焼するので、その配合比率によって性能が変わってきます。雪山使用を考えるなら沸点が低いプロパンが望ましいのですが、プロパンは体積が大きく缶の内圧が上がってしまうため100%プロパンにすることは難しいです。
そのため一般的に冬季対応のものでプロパンの比率は20~30%程度、残りはブタン、イソブタンで構成されています。通常のガスと高所用・極地用のガスはこれらの割合が異なります。
ジェットボイルのガスは比率非公表ですが、最も沸点が高いブタンを含まないという特徴があるため寒冷地により適していると評価されています。ジェットボイルのガス缶が高いのはここに理由があるんじゃないかと思います。
私のジェットボイルミニモはサーモレギュレータが搭載されており、公式にはマイナス6℃でも動作すると書かれていましたが、経験上は-15℃の極地までは特に危うげなく働いてくれました。こういう極限環境でしっかり仕事をしてくれる道具は本当に心強いです。こちらの記事で興味深い実験をされているので紹介します。
実は・・・
ジェットボイルにはジェットボイル専用のOD缶を使うように注意書きがされています。続きはもう分かりますかね。そう、もちろん自己責任にはなりますがプリムスとかEPIとか他メーカーのOD缶でも普通に使えます。普通にというのはジェットボイルの爆速も維持されるということです。
(もっと言うとCB缶からOD缶に中身を移し替える節約DIYをしたOD缶でも普通に使えます)
ただし前述の通り、寒冷地性能はジェットボイルのOD缶によるものなので雪山や高山で使う場合には専用のOD缶でないと性能が発揮されません。ちなみに私は基本的に専用のOD缶しか使いませんが、荷物を分担した関係で他メーカーのOD缶しかないような場合は普通にそれを使います。
ジェットボイル 良い
かれこれ4年ほど使っておりますが、壊れても全く同じものを買い続けますね。バーナーの宿命で着火装置がすぐヘタるというネガはあるものの、用途に対してクッカーの形状さえ合致していれば登山道具として特に文句の付けようがない性能です。
逆にキャンプ用品として見ても燃費の良いコンパクトな一体型クッカーで、吊り下げたりフレンチプレスコーヒーが入れられるアクセサリーがあったりして、撤収間際のブレイクなんかで役に立ちそうです。