雪山じゃなくても
私は本格的に道具を揃えて登山を始めたその年の冬からいきなり雪山デビューも果たしました。既に登山歴の長い友人から「軽アイゼンだけ買えばレインウェアでも行けるから!」と強く誘われてのことでした。何年も前のクリスマスの日のことです。
それから冬になるとソロでも仲間内でも雪山ばかり登るようになってしまったのですが、近年は雪がない「冬の低山」も結構好きだなと思うようになりました。
冬は低山が一番快適な場所かもしれない
ここで言う冬とは山シーズン上の冬、つまりは11月頃〜3月くらいまでの広い概念です。夏は暑くて虫が多くて時に草木を掻き分けなければならず、山頂に着いてもちっとも涼しくならないため低山登山は辛くなりがちですが、冬はそれらのネガが全てなくなります。
冬になると虫もいなければ草木が道にせり出していることもなく、空気が澄んでいて景色が良くなります。また低山の山頂は完全に開けていることが少ないので、逆に吹きざらしに遭わずに済むため山頂に滞在しやすくなるという利点に変わります。
この「滞在しやすく景色が良い」というのは山ヤにとって一番幸せな環境です。夏場は次第に雲が増えたり遠くが見えづらくなりがちですが、冬は1日中遠くまで見渡せる日が多いです。
私は3000m級の山々の「どこを見ても山しかない人間の営みと切り離されたような景色」もたくさん見てきましたが、「街と繋がっているような低山の景色」もまた別の魅力があります。
高山に行き慣れている人の中には低山の景色なんて…と思う人もいるかもしれませんが、そもそも標高1000~1500mくらいでも、人口建造物に比べれば相当に高いところなのでコンディションさえ良ければ相当景色が良いはずです。
また冬は日没が早いためどうしても時間にシビアになりますが、低山の方が時間的余裕を持ちやすく山頂での時間・山歩きの時間を長く取りやすいです。私はまだピークハント的な登山ばかりしていますが、ぴりりと冷えついた空気を肌で感じながら、葉を落とし越冬に向けて静かに活動を止めていくような木々の間をただ歩くのも良いものです。
山の中森の中を歩くこと自体を楽しむような登山にはやはり冬が快適だと思います。
雪があってもあまり危なくない
また、低山は雪山デビューするのにも最適です。基本的に森林限界を超えることがないので強風でも木々に守られ過ごしやすくなり、滑落によって即命に関わるような場所も少ないです。例えば群馬の名峰赤城山なんかは積雪量が多く、がっつり雪山ハイクが楽しめる割に危険箇所はほぼなく安全に雪山登山を楽しめる場所です。
もちろん雪山は急な天候の変化により遭難のリスクが上がりますし、低山だからといって死の危険がないというのは間違いですが、得られる体験の素晴らしさの割にはハードルが低め、それが冬の低山登山だと思います。
概して冬の登山は寒さと雪の影響で行ける場所が限られるため、雪山登山をしない人からするとオフシーズンのように思われがちですが、このように実は冬は低山のベストシーズンと言えると思います。夏山の辛い要素がなくなる上に登山者も減るので静かな山歩きが楽しめます。
私も今年の冬は飯能アルプスや奥高尾縦走路を繰り返し歩きたいと思います。