Apple Watchを使い始めて4年目になりました。普段使いのスマートウォッチとしてはもちろん、登山用の時計としても活躍してもらうつもりで導入したガジェットですが、バッテリー性能を除けば非常に有能な登山道具だと思います。
後から出たUltraがずっと気になっていたのと、3年間使ったSeries 7のバッテリーがヘタってきたのとでこの度Apple Watch Ultra2に買い替え、唯一の欠点であったバッテリー持ちが改善し全ての山ヤにおすすめできるガジェットになったと思います。ということで山ヤ目線でApple Watchを評価してみたいと思います。
登山でのApple Watch活用
登山アプリはヤマレコ端、YAMAP派、ナショナルジオグラフィック派など様々かと思いますが、Apple Watchを導入するのであればヤマレコで使用することをおすすめします。
使い方
私が使っているヤマレコで説明します。
①スマホアプリのヤマレコで地図をダウンロード
②ダウンロードした地図をApple Watchにも転送する
③登山口でスマホアプリの方で登山開始にする
以上です。あとはApple Watch上でリアルタイムに山行データが表示されます。
Apple Watchを登山時計として最大限利用する場合にはヤマレコアプリを起動しログを取っている状態のスマホと連携させる必要がありますが、②の工程があるためスマホがなくなったとしてもApple Watch単独で地図や方位を表示することが可能です。これが他の登山アプリに対しヤマレコが優れている点です。
スマホを取り出す必要がなくなる
Apple Watchとスマートフォンを連携させて使用することで、いちいちスマホからアプリを開かずとも腕元で地図をはじめ現在のペース、次のチェックポイントの通過予定時刻などの情報が得られるようになります。スマホを操作するのはログの開始時と停止時のみ。
特にヤマレコは一番最初にApple Watchに対応しており、もう4年も前ですがApple Watchに専用の文字盤をリリースしたことで話題になりました。今でこそYAMAPもApple Watch対応していますが、率先してApple Watchに対応したヤマレコの方が利便性は大きく上回ります。私はもともとYAMAPを使っていてApple Watch導入にあたってヤマレコに鞍替えしましたが、Apple Watchの文字盤にアプリのアイコンではなくアプリ内の情報が複数表示できるのは非常に便利です。
ひと目で登山中の情報が見られる
これは私が実際に登山中に使用している文字盤ですが、Apple Watch Ultra2は無印Apple Watchより大画面になったことでさらに表示できる情報量が増えています。
左上から時計回りに気温/天気予報、夜明け/日没の時刻、バッテリー残量、フィットネス、潮位、山行中のペース表示で、中央が登る山のコースデータです。もちろんどこに何を表示するかは好きにカスタムできます。
ワンタップで地図が出せるのが神
スマホを取り出すのはそれほど億劫じゃない、という人もいるかもしれません。私がそうでしたが考えを改めることになります。歩きながらのチラ見でも情報が見られるようになるのと、中央の地図もしくは左下のペース表示のアイコンをタップするとヤマレコの地図が表示されるため圧倒的に小まめに地図を確認することができるようになるからです。
Apple Watch上での地図表示です。スマホアプリの画面そのままなので違和感なく使えると思います。ダイヤル操作で拡大・縮小ができます。
写真は山行終了後に撮っているので自分の位置を示すアイコンがありませんが、山行中は自分の位置および自分が向いている方向が画面上に表示されるので、分岐ポイントやジグザグの道を細かく見ながら進むことができます。この方向表示はかなり正確でこれまで何度も救われました。
あと地味に素晴らしいのがここ、現在歩いてきた距離と現在地点の標高も文字盤に表示されるので山頂まで、登山口まであとどのくらいかというのを常に数字で把握することができます。
Apple Watch Ultra2に買い替えてみて
ここまでは無印Apple WatchでもUltraでも共通している使い勝手なので簡単にUltra2のレビューをしてみたいと思います。
◎バッテリー持ち最高!
私の日常生活での使い方は就寝時の睡眠ログから始まり常にLINEや着信の通知はオン、60分のワークアウト(筋トレ・屋内バイク)です。Ultra2に買い替えて一番良かったと思うのはやはり圧倒的な電池持ちです。具体的にどのくらい良いのか以前使っていたSeries 7と比較してみます。
手元に残っていた覚え書きなので大まかな目安になります。Apple Watch7の終盤はもはや日帰り登山にすら使わなく(使えなく)なっていましたが、Ultra2のバッテリー消費はざっくり1日30%前後、雲泥の差です。特に初めて装着して眠った翌朝は残99%でぶったまげました。
Ultra2初となる先日の厳冬期伊吹山登山ではこんな感じ。
前日:昼12時に100%の状態で出発→前泊(睡眠ログも使用)
当日:通知オンの状態で往復約7時間の山行を経て23時頃帰宅。バッテリー残28%
翌日:ワークアウトなしの日常使用。21時で残17%
すっかり信頼したので当日朝100%にせず前日昼から付けっぱなしで臨みましたが全く問題なし。しかも機内モードの設定をし忘れていましたが、その必要もないことが分かりました。
公式で36時間を謳っていましたが少なくとも日帰り登山や60分ワークアウトを挟む程度であればその通り使えそうです。むしろそれらのアクティビティをしないのであれば36時間は容易に超えています。
◎画面の大きさは正義
Apple Watch7も45mm幅の画面が大きい方を使っていましたが、Ultraではさらに画面が大幅に大きくなっているので明らかに視認性が増しています。先の登山用の文字盤もサイズが大きくなった分表示できるアイコンも増え、使い勝手に磨きがかかっています。特に現在の歩行距離、標高が見やすくなったことと地図表示で一度に確認できる範囲が広がったこと。スマホの画面などに比べればわずかな差ですが、実用上では非常に大きな違いです。
◯/△大きさと重量は明らかに増加
無印Apple Watchと比べてUltraは普通の腕時計をしているくらいには大きさも重量も感じます。無印Apple Watchは非常に薄型軽量で装着していることを忘れられるくらいでしたが、Ultraは明確に存在感があります。
私はメイン用途を登山用時計のつもりで購入したので、大きくなって「らしさ」が増したのと操作しやすくなったのとで大満足で、むしろもっと大きくてもいいからバッテリー持ちを無限大に向上させてくれと思うくらいですが、特に女性が付ける場合にはかなりゴツい時計という印象になりそうです。
△アクションボタンの存在意義は…
無印Apple WatchにはないUltra独自の第3のボタンであるアクションボタン。真っ先に思ったのは「ワークアウトを割り当てたらジム通いで便利そう」でした。確かに便利ではあるんですがコンプリケーションの多い文字盤に割り当てておけば良いだけの話なので、現時点ではわざわざ強調するほど良いものとは思いません。コンプリケーションを表示しないシンプルな文字盤を好む人には喜ばれそうですが。
△ジェスチャー操作?
Series9, Ultra2から人差し指と親指で摘むような動きをする「ダブルタップ」が使えるようになったと大々的に宣伝されましたがこれもイマイチ。「Series 7にもあるけど?」が最初に思ったことです(アクセシビリティで設定すると同じ動作で操作が使える)。
しかもこのダブルタップ側から設定すると例えばクラウンを押すという動作が割り当てられなかったりするので自分の使い方ではアクセシビリティから設定する方が都合が良いですし、そもそも同じジェスチャー操作なら統一してくれという感想しかありません。
Apple Watch Ultra2、おすすめか?
山ヤには明確におすすめ
まず私のように登山目的にApple Watchを使用している人には明確におすすめします。大きく重くなることを厭わなければという前提にはなりますが、このバッテリー持ちだけでも導入する価値があります。まず1泊2日をフルで使う泊まりの登山では充電不要で使えそうですし、頑張れば2泊3日までは使えるんじゃないかと思います。
例えば去年行った北鎌尾根、2日目が難所にして要所、頻繁に地図を見られる利点が最大限に生きるシチュエーションですが、このバッテリー持ちならば少なくとも充電なしでも槍ヶ岳を抜けるまでは仕事を全うしてくれるでしょう。最終日の下山時はバッテリーが切れててもスマホでログを取れていれば十分なので。
バッテリーも永遠の命ではありませんが、もし数年使用してヘタってきて修理対象の80%になったとしても、単純計算で少なくとも丸1日は憂いなく使えるはずですし、100%スタートでの1泊2日くらいならそれでも持つ見込みがあります。
多くの人には要らない気がする
では山では使わない場合はどうか。つまり毎日充電することが特に問題にならない人にとってはどうかというと不要だと思います。見た目の好みなどを除けば無印とUltra2の違いはバッテリー持ちが良くなることだけな上、睡眠ログを使用=就寝中も付けておく場合には大きさと重量はデメリットにしかならないので、コストと利点が明らかに見合わないと思います。
Apple Watchの充電、実はそんな手間じゃないから
反Apple Watch派の人からは毎日充電するのが手間、という意見が圧倒的に多く聞かれますが、ワイヤレス充電かつ充電速度が非常に速い(体感1時間もあれば満充電になる)なので置き場さえ確保できれば入浴時に外して置いておくだけで充電できることになります。スマホも毎晩充電するのが普通の感覚になっているならばさほど手間には感じないと思います。
私のApple Watch7も登山で使えないレベルにバッテリーがヘタっていたものの、普段使いではジムから帰ってきたら置き場=充電場所に置いて寝る前に付ける、これでほぼ支障なく使えていました。
充電頻度が減るといっても毎日が3日に1回になる程度の違いなので、日常生活で使うだけならそれほど光る利点ではないのかなと思います。逆に登山では山行中の電源周りの懸念と荷物が減らせるので非常に大きい違いになります。
あとは同じ理由で頻繁に旅行や出張をする人にはメリットが大きそうです。
周期的に今年2025年9月にはUltra3が出る可能性が高いので買うタイミングとしては勿体なかった気がしないでもありませんが、期待していた以上のパフォーマンスで大変満足しました。