私には一度は泊まってみたいと思う宿が3つありました。一つは上高地の帝国ホテル、一つは日本一標高の高いホテルであるホテル立山、そして今回宿泊した美ヶ原、王ヶ頭ホテルです。
滅多に取れない素敵な宿が取れたので来られる人〜!
ちなみにKW君がやってくれました
予約開始の瞬間に奇跡的に繋がって取れました
王ヶ頭ホテルは半年前から予約開始となり、特に雪のシーズンの週末は争奪戦になります。彼は私より遥かにライブチケットを勝ち取ってきた実績のあるオタクなのでこの手の戦いには慣れています。
ということで今回は山行記録ではなく王ヶ頭ホテルの宿泊記です!まさに至高の体験というべき時間を過ごすことができたので詳しく紹介したいと思います。
いざ美ヶ原へ!
冬季のアクセス
冬季の美ヶ原で大変なのはアクセスです。車山、霧ヶ峰と美ヶ原を結ぶビーナスラインは冬季通行止めになっているので、車で行く場合には諏訪湖から東回りに142号→178号線の経路になります。ただしこの道は積雪量が多く斜度もきつい山道なので少なくとも4駆+スノータイヤは必須で、時期によってはチェーンも必要になると思います。
送迎もあるようなのでその年の公式情報を参照してください。
山本小屋ふる里館
今回は男4人パーティで例によって甲府で集合して昼食を取り14時頃に現地に到着しました。
ジムニー、ランクル、ハイエース、RAV4等々。さすがに選ばれし車揃いでした。前述の通り道路にはかなり雪が残っていて2駆ではたどり着けるか怪しいと思います。
まずは牛伏山へ
駐車場から歩いて10分程で山頂に立てるお手軽な展望台が牛伏山です。
雪はもうかなり少なくなっていてスノーシューどころかアイゼンも要るのか?という前情報だったので3シーズン用の靴と念の為のアイゼンだけで臨みましたが失敗でした。場所によっては股関節近くまで沈むので持っているならスノーシューもあった方が良いです。
まるで要塞のような、宇宙基地のような王ヶ頭ホテルまでは4kmほど、思ったよりは歩きます。
牛伏山山頂より。すでに360度の大パノラマです!
美ヶ原ハイキング
雪が少なめといっても一面の銀世界。遊歩道に沿って歩く分にはスノーシュー等は不要でしたが、手前の木は遊歩道の柵なので雪の深さが想像できるかと思います。
せっかくの雪山なので遊歩道を外れて好きに歩いてみました。油断しているとラッセルみたいになる時があるのでこういうことをするならスノーシューは必須です。
我々の他にもフリーウォーカーがいました。斜面はゆるく危なくもないのでスノーシューの練習に良さそう。
山本小屋からは1時間ちょっと歩いて王ヶ頭ホテルです。
王ヶ頭ホテル宿泊記
エントランスとラウンジで優勝
一歩足を踏み入れると時の流れが変わったかのような幽玄な空間がありました。この笹茶は24時間飲めるようになっていて夜間の星景撮影でもすぐに暖を取ることができます。このホテルにはあらゆる場所にこのような休憩できる空間が用意されていたのが非常に印象的でした。一息つくのも一苦労な街作りをする都心の偉い人に見習ってほしい。
さらに17時からアルコールを含むウェルカムドリンクサービスがあります。
統一感のあるエレガントな設えのラウンジです。後で出てきますが夜の雰囲気もまた抜群に良かったです。
ラウンジは窓側からテラスにそのまま出られるようになっています。まさに星景撮影のためのような構造。
こちらは2Fにある星のテラス。星景撮影や天体観測の本がずらりと並ぶ憩いの空間です。チェアでくつろぎながらあるいは外に出て星を眺めることもできます。
星のテラスの他にも、ロビーから客室に向かう途中、このような休憩スペースが随所に設置されています。
極上の客室
廊下には美ヶ原で撮られた四季折々の写真が展示されています。
そしてここが客室です!南向きの和洋室で、なんとこたつに入りながら山々を眺められるという贅沢三昧な仕様。我が家では細君が動かなくなってしまうためこたつを廃止して5年が経ちましたが、久々に入るとなんて天才的な暖房器具なんだと思います。
少し身を乗り出すと南アルプスをほぼ一望することが出来ます。
分かる範囲で。さらに右の方には聖岳なども確認できるそうです。
高級そうなエスプレッソマシンと王ヶ頭ホテルマグ。ちなみにこのマグは売店で購入できます。
最上階
最上階は広々としたくつろぎ空間、そして夜のシアター会場にもなっています。
21時からプロジェクターにて美ヶ原の自然や生態の解説イベントが行われます。またここから屋上に出られるようになっていて、限りなく屋内に近いところで夜中の星景撮影、天体観測ができるようになっています。
日没を撮る!
ホテルを出て裏側に回り込むと、正面に槍穂高連峰を臨む展望スポットがあります。
八ヶ岳と南アルプスがうっすらと西日に照らされて
少し視線を逸らすと富士山も佇んでいます。
山目的でこのブログを読んでくれている方には何の話やねん案件ですが、私は日没間際の空と大地の境界線のこの色が大好きで、これをモチーフにした自転車に乗っているくらい大好きです。
雲が多くて厳しいかと思っていましたが
雲と山々の隙間から強烈な西日が現れました。
光条を出した写真はレンズの構造的にスマホでは撮れない写真の一つ。ただ最近は絞り羽根がついたレンズを搭載したスマホというのも存在するらしいですね。
日没後の燃える空に君臨する御嶽山。その山容から遠目でも一発でわかりますね。
まるで絵画のような燃える空。信じられないかもしれませんがこれは加工でもなんでもなくほぼ見た目通りの色合いです。AIが生み出すエキセントリックな画像よりも時に現実の方がよほど現実離れした世界を見せてくれます。
豪華夕食を食らう!
食事会場もまた豪華絢爛、色使いや設えはどことなく大正ロマンな雰囲気。
かわいいイラスト付きの説明書き。
イワナの塩焼き。そういえば今日から渓流は解禁日ですね。
お風呂がすごかった
写真はありませんが、予約・追加料金不要で使える貸し切り風呂、大浴場ともに最高でした。大浴場の一部の窓が開かれていて、そこから満点の星空が見えました。全体的に薄暗く雰囲気があるなあ、と思っていましたがおそらく星が見えるように暗くしてあるんだと思います。
夏の3000m級、冬の高原、いずれも星景撮影は撮影可能時間=寒さに耐えられる限界までの時間という耐久レースですが、なんとここは全裸で温かいお湯に浸かりながら星空を好きなだけ眺められるという完全防備の世界、例えるならば真夏にクーラーが効いた部屋で毛布をかぶってアイスを食べるやつの極限という感じです!この体験だけでも足を運ぶ価値がありますね。
星景を撮る!
今回は登山というより普通の旅行なので夜間にガッツリ撮影をすべく明るい広角レンズとガチ三脚を持ってきていました。日没後から完全にガスってしまったので半ば諦めていましたが、入浴中に星が出てきたので撮影に繰り出します。
まずは屋上で撮った写真。結構街明かりが近く電波塔が複数あるので構図は決めやすいものの星が写し込みづらい印象でした。あと地面が金網になっているので三脚を立てるのが非常に難しく、数枚で断念しました。
ここで撮影をするなら三脚の接地面を大きくする何らかの工夫が必要です。一番はベニヤ板などを貸し出してもらえると良いのですが。
というわけでホテルの外に出ることにしました。真夜中の誰も居ないラウンジがあまりに素敵でした。
そして玄関際には昭和の文豪が座っていそうな雰囲気ある喫煙室。これを超える喫煙室が果たしてこの世にあるだろうか。吸わない人でも一目の価値はあります。
どうしてもホテルと星空を撮りたかったので貸出用のクロックスを履いてできるだけ歩いてみました。やはり建物の明るさに引っ張られてしまうので難しいです。
指先の感覚はとっくになくなっていて、本能がもう退けと言っているのを感じるほどの極寒でも星景撮影はやっぱり楽しい。20秒の露光時間が永遠にも感じられるくらい寒いけれど、その場に居られる幸せを感じます。
しかしすぐに安全で温かい屋内に逃げ込める王ヶ頭ホテルの撮影環境は普段よりは無理が効きますね。最高としか言いようがない。
とはいえ気づいたら夜明けまであと3時間、みたいになっていたので星ぐるぐるは寝てる間に放置プレイにしました。20秒露光のライブコンポジットで1時間半くらい。幸いブレも強い光源が差し込むこともなくガッツリぐるぐるさせられました。
もう少し気力があれば構図を取り直して完全に円形になるぐるぐるを撮りたかったですが限界でした。
夜明けも撮る!
翌日は曇天予報だったので朝食ギリギリまで寝ようと思っていたらごご来光が見られそうだ!と今旅の功労者KW氏が叩き起こしてくれました。
1時間ちょっとの睡眠で死にそうになりつつホテルの外に出てみると夜明け直前のナイスなタイミング。
知ってる人も知らない人も、みんなが同じ思いで同じ方向を見つめる一体感はこの時間にしか味わえません。ここからはコマ送り風に。
夜が明けました。こんな光が見られるならば睡眠などくれてやるというものです。
再び笹茶で暖を取りつつ朝食に向かいます。
朝食はここに加えて食後のデザートそして任意で焼きたてのパンが食べられます。夜も思いましたが意外にも食事の量ががっつりしています。
名残惜しくもチェックアウトする頃には先のご来光と打って変わって驚きの白さです。
50mも離れれば見えなくなる濃霧で遭難の疑似体験でした。
王ヶ頭ホテル宿泊記 まとめ
日本百名山の1/3が見られるという大変な好立地の王ヶ頭ホテル。ちょっと上から目線な言い方ですがその立地の良さに甘んじることなく、ホテルとしての設備やスタッフの接遇等のホスピタリティが大変に素晴らしかったです。
王ヶ頭ホテルで得られる体験は景色ありきのものもありますが、仮に天候が悪くともホテルステイ自体が十分に素晴らしい体験になるのでどんな状況でも宿泊する価値はあると思いました。ただ、やはりこの超好立地を最大限に活かす工夫が随所に散りばめられているので晴れやすい冬を狙うとより極上の体験になるのかなと思います。
そんな今回の金額は1人27000円ほどでした。金額は絶対値で見れば安くはないものの、これだけの体験が待っていると考えればもはやタダではといういつもの理論が適応されます。
一度は泊まってみたい=一度泊まれれば良いと思っていましたが、何度も訪れたい場所になりました。案外小さい子連れの宿泊客も少なからず居たので、今後は家族を連れて違う時期に来てみたいと思いました。
おまけ:プチ聖地巡礼クライ
ホテルの帰りは上諏訪駅近くの蕎麦屋で昼食を摂り、私は上諏訪駅からあずさに乗って立川に帰りました。上諏訪。かみすわ。カミスワ。聖地巡礼。ピンと来ますかね。そう、その通り2024年で最も注目されたアニメの一つ、ガールズバンドクライです!
第7話、桃香さんがかつて憧れたミネさんに誘われてメンバー全員でライブを観に来る回。そのライブハウスがこの上諏訪clubrockheartです。
シーンとしては短いながらも作中では主人公が改めてこの世界に身を投じようと決意するきっかけにもなる印象的な場面です。こんな偶然来られるとは感激感激。ちなみに上諏訪駅から徒歩圏内です。
彼女たちが飲んでいたお店はここの焼き鳥屋さん。
上諏訪駅前のこの看板もそのまんまですね。