
職場の後輩3人に仕事そっちのけで山の写真を見せびらかしたり山の良さをプレゼンしたりしていたら「山行ってみたいです」との希望が聞かれたので、登山初心者3名の引率の先生をしてきた話です。後半に今回の企画の候補として考えていた山をリストアップしたので人を山に引きずり込もうとしている山屋の皆さんや登山を始めてみたい人の参考になれば幸い。
金峰山大弛峠ルート
そんな登山初心者のひよこ達のデビューにチョイスしたのが長野県と山梨県の境目に位置する日本百名山の一座、秩父最高峰となる標高2599mを誇る金峰山です。
富士見平小屋を拠点に同じく百名山である瑞牆山と2座を落とす縦走がメジャーで、こちら側からのアプローチでは獲得標高1100mでCT7時間程度とそれなりにタフな山行になりますが、今回の大弛峠ルートは獲得標高500m程、CT4時間と非常にライトに金峰山の頂を踏むことが可能となります。
金峰山は登山を始めた年の初冬に瑞牆山とともにアタックした思い出深い山ですが、その時は雪が降ってきて景色を全く見られていないので個人的にはリベンジです。
山行記録
大弛峠駐車場
4時半に集合し登山口となる大弛峠駐車場に到着したのが朝8時でした。駐車場自体は埋まっていたものの、そこに続く山道に路駐することが認められているので実質的なキャパはそれなりにあります。例年の情報を見ていても停められなかったという話はあまり聞かなかったので超早朝を狙わなくても大丈夫だろうと見込みましたが、ほぼ駐車場と同じくらいのところに路駐できたので読み通りでした。
中央道勝沼ICで降りてからフルーツラインを通って山道、計1時間半ほどで到着します。インターを降りてからはコンビニが極めて少ないので事前に調べて寄っておくと良いです。

余談ですがここ大弛峠は関東圏の自転車乗りからはかなり高負荷のヒルクライムスポットとして有名です。何気に初めて来ましたが眺望のない乗鞍スカイラインって感じでした。控えめに言って地獄のヒルクライムですね。
あと大弛峠に至る道は途中で日本二百名山のひとつの乾徳山登山口方面に分岐します。12月から5月くらいまでは通行止めになるので、以前同じことをしようとして現地で通行止めに気づいて乾徳山に急遽変更したのを思い出しました。

メンバーは自分の妹と同世代くらいの男2名と女子1名。登山は初めてに近い面々です。

序盤にいきなり登りがきます。とはいえ100mほどの登りで斜度もそれほど急じゃないので慣れてる身としてはちょうど良いアップですが、彼らは早速ゼェゼェハァハァでした。


木々の間からは瑞牆山のような凛々しい岩肌。最初は樹林帯とはいえ標高が高いのですでに景色は良好。


全体的にアップダウンが多めではありますが、一番きついところでも100mあるかどうかなので初心者でも大丈夫。道も登山道としてはかなり整っている方だと思います。


味わってほしい、この稜線に出る直前の高揚感を。



この日は全方面完全に晴れることはなく雲が非常に多かったものの、稜線の高度感を味わえる程度には晴れ間も出てくれました。この3人、モッている。
朝日岳

ちょうど中間地点くらいのピーク、朝日岳。2579mなので金峰山とさほど変わりません。


ここまで来ると目的の金峰山山頂が目の前です。五丈岩の存在感はもちろん、森林限界の境界がはっきり捉えられます。

朝日岳を過ぎたところ、このルートで最も高低差のあるところです。終始歩きやすいなあと思っていましたがひよこ達は「まじでこれ降りるんすか?」「ほんとに道ですか」「うわマジかー」など大騒ぎ。

しかし、社会人なりたての彼ら、ノリが若え。自分もまだまだ若手のつもりですがマジモンの若手を見るとなんかこう、眩しいですよね。
稜線 森林限界を超えて

1名はヘロヘロになりつつ、ついにご褒美タイムの稜線に出ました。

瑞牆山方面

こちらは方角的には秩父方面でしょうか。

金峰山山頂方面。見えているピークまで登るとすぐ眼の前に五丈岩が見えてきます。

ここの稜線は非常に歩きやすいです。富士見平小屋から登ると稜線に出てから1時間ほど歩きますが、こちらは20分もかからずに山頂まで行けちゃいます。

山頂直前の登山道は岩場を巻くように道が続いていますが、岩場を登っていくこともできます。一部オーバーハングの天然ボルダリングのような場所もありますが全体的には浮石少なくアスレチックくらいの難易度です。
金峰山山頂

コースタイム通り、登頂開始から約2時間で金峰山山頂です。厳密なピークはさっきの岩なんじゃないかと思いますが、ちょうどこの写真を撮っている辺りに山頂標識があります。

五丈岩と鳥居。五丈岩は甲府市の昇仙峡近くにある金櫻神社の御神体で、古くからの信仰の山です。以前はロッククライミングをする人が多かったようで、古い登山ガイド本には登れますとも書いてありますが、現在は禁止されています。神社としては神聖な場所であるため安易に登らないでほしいと声明を出しており、数年前にニュースになるくらいには話題になりました。

この五丈岩の裏側も広くて見晴らしの良いポイントです。

富士見平小屋からの表ルートの稜線を見つつ昼食です。ここは晴れていれば南アルプスや富士山も見えるはずですがこの日は雲の中。
師匠仕込みのヤマメシ

今回は森林限界上の稜線歩きと、ヤマメシという登山の良いところ詰め合わせプランです。メニューは先日の大雪山縦走で師匠が作ってくれたカレーをまんまパクりました。彼らには野菜を切るのと炒めるのとを手伝ってもらいました。遠足の飯盒炊爨かな?

師匠直伝の夏野菜カレーです。ベースのカレーは前日夜に作っておいてジップロック二重に入れて冷凍しておきました。夏山だとちょうど山頂につく頃に概ね溶けていて良い塩梅になります。あと肉を冷凍して保冷剤代わりに持っていって山頂で焼いたり煮たり…というのも夏山ならではのライフハックです。


食事中は一瞬完全にホワイトアウトしたのでもう今日はダメかと思いきや、帰路で最後にもう一発晴れてくれました。

瑞牆山もようやく全体を拝めました。本当にカッコいい山ですね。城というか神殿のような佇まい。

前景を入れてもう一枚。金峰山から瑞牆山を眺めるのは初めてですが、今まで見たどこよりもカッコ良いです。ところで彼らも山を見て「かっこいい」という表現を使っていたので将来有望です。昔細君に普通は綺麗じゃないの?と言われたのを思い出しました。


夏山らしい空。

この日は普段山行にしているWindy, ウェザーニュース、てんきとくらす、そら案内のうち2/4が午後になると雨が降るという予報を出していたので14時目標で降り始めました。すると下山した瞬間から小雨が降り始め、車で山道を下る頃には土砂降りに。やはり天気予報に関しては安定のウェザーニュースという感じですが、山に関してはWindyもかなり精度が高い印象です。
大弛峠ルートの感想
歩きやすく体力的にも余裕があるのは想定通りでしたが、慣れていない初心者でも発狂しない程度のアップダウンがあったり軽い岩場があったりと意外とバリエーションにも富んでおり想像以上の良ルートでした。アクセスも良好なのでこれは結果的に完璧なチョイスだったなと思いました。
初心者を連れて行く山の検討
下記の条件で検討しました。
①登山口まで3時間以内
②全行程が5時間以内
③獲得標高が1000m以内(500m程度が望ましい)
④森林限界を超える・もしくはそれに準じた眺望が得られる山
夏山は気温が上がるにつれ上昇気流により雲が発生し曇るので午前中には登頂できるようにしたい、ということで①、②。あと「初心者」の体力がどんなもんか、これは思春期以降の人生で体力がないという経験がない私には想像するしかありませんが…山らしい山を味わうには②、③くらいは求められるので頑張ってもらうことに。④は私の言う山を味わってもらうため、あとは夏の低山は暑すぎて辛いからというのが理由です。基本的に夏の低山は地獄めいているので、森林限界を超えるくらいの高山帯に行くほうが快適な思い出になります。
候補となった山々
湘南エリアに住んでいるので条件①から範囲としては北関東から長野県の諏訪辺りまで。候補としては下記を考えました。
木曽駒ヶ岳
スタートから森林限界を超える絶景、CT4時間以内で約3000m級に登れるという超お手軽高山コース。やや移動時間がオーバーするものの山行が短いことでカバーできる大本命でしたが、夏山ハイシーズンの駐車場事情が尋常じゃないので泣く泣く止めました。ちなみに冬も雪山としては初心者向けの強度なので挑戦しやすく、ゆえにめちゃくちゃ駐車場争いになります。
朝4時、5時頃には満車になるため前日22時頃から現地入りして待機するようなレベルらしいです。オーバーツーリズム、本当になんとかしてくれ。
乗鞍岳
日本で最もお手軽に登頂できる3000m級。往復3時間かからないくらいで木曽駒ヶ岳と同様、気軽に高山体験ができる山。しかしつい先日ヒルクライムに行ったばかりなので除外。ただしここは交通費さえクリアできるなら経験者の引率がなくても登れるくらい道も整っているので3000m級を味わいたい人にはとてもオススメ。
谷川岳
厳冬期や残雪期しか行ったことがないので夏山として行ってみたい、という個人的事情に加え天神尾根ルートならば最初から稜線歩きができて条件をほぼ満たしているので有力候補でした。
大菩薩嶺
我が師匠が初心者を沼に引き込む時に使う山です。今回の金峰山と近い立地で、高速降りてからのアクセスも良好、登りも非常に緩やかで山頂も広く(厳密には山頂は林の中で、その手前が眺望ポイント)、おまけに下山後に温泉がたくさんある場所なので完璧です。
黒斑山
こちらは雪山登山入門にも適した百名山。眺望がかなり良く登りもきつくないのが良いところですがアクセスが通りのがネック。湘南からは4時間以上かかってしまいます。
四阿山
黒斑山と立地的にも近く、同等かもう少しマイルドな登山で良い景色が楽しめる山。ボツの理由は黒斑山と同様、物理的な距離の遠さです。
丹沢大山
我々の居住エリアからは1時間程度で登山口まで行けて登山入門の山として広く知られる大山(おおやま)です。初心者向けと言いつつケーブルカーを使わなければ約1000ml登るので割とガッツリしています。ここも眺望は良いのですが高山帯の高度感や山々が360度に見渡せる非日常感には乏しいのと低山なのでちょっと辛いのが勝るかなと考え除外しました。
瑞牆山
今回登った金峰山とセット的な立地の瑞牆山。ほぼすべての条件を満たしてはいるものの、山頂が狭く他に人が多い場合には山頂で長時間滞在するのが難しいので除外しました。今回は山飯も体験してもらうのも副ミッションです。
富士山周辺の山
遠目からの富士山は見慣れていても、富士吉田市のように眼前にド迫力の富士山を見るのはなかなかないことなので富士山ドーン系の山も候補でした。除外の理由はハイシーズンの富士五湖エリアという懸念、低山であることなど。