公道における安全確保とルールの話
私のTLだけかもしれませんが、最近やたらと公道の危険運転や安全に関するポストがよく流れてくるようになりました。危険運転や衝撃的な事故映像、または誰もが遭遇しそうなシチュエーションでの事故映像は話題になりやすいですが、よくよく見ると本当に回避不可能だったのかと疑問に思う事故もしばしば目にします。
煽り運転するアタオカがいたら刺激せずすぐ譲って先に行かせた方が自分の身を守れるし、ウインカーなしで曲がるような免許持ってる理由が分からん奴もいるから車間距離は取るに越したことがない。ルールを守る正しさなんて殺されてしまったら何にもならない。
— かみやしろ@山と自転車のひと (@kamiyashiro_i) June 20, 2026
こういう「ルール的には正しいけど危ない」場面でルールを守っている自分が優先!と危険を顧みないのは危険予測が甘過ぎるのですなわち運転が下手ということ。 https://t.co/TsoAZzqwMl
— かみやしろ@山と自転車のひと (@kamiyashiro_i) June 20, 2026
先日ちょっと話題の事故に関する私見を述べたら賛否様々な意見をいただいたので、一例として私の安全確保に関するスタンスやマイルール的なところをまとめてみたいと思います。文章ばっかりなので見苦しいかもしれません。
前提:交通法規・マナーは守るべきだが…
当然ですが私は大前提、交通法規・マナーは守るべきというスタンスです。それができないなら公道に出る資格はないと考えます。ただし「安全確保」を優先した結果ルール違反になるケースについては、ルール絶対遵守すべきという立場ではありません。
「危険運転をする他者が存在する以上、残念ながら公道はルールを守っていれば安全が保障されるわけではないので、身の安全を第一に走りましょう」
— かみやしろ@山と自転車のひと (@kamiyashiro_i) June 21, 2026
という文章を読んで、これをルールを守らないことを正当化する側の発言だと解釈して「でもルールは守るべきです!」と言う人がいるのが怖い。
結果的にはルール違反を正当化することになっているかもしれませんが、そもそも交通法規やルールというのは行動における安全性の確保のために存在しているはずなので、手段と目的を履き違えるべきではないというのが私の考えです。
実情に即していないルール
批判の声が集まりがちな2026年4月からの自転車新ルールが記憶に新しいですが、「自転車から1m以上の距離を取って追い越さなければならない」を筆頭に、日本の道路事情に合っていないルールが存在するのもまた事実だと思います。
手段と目的の履き違え?
あと個人的には一時停止で車輪が完全に停止しなければ違反とする杓子定規さも、やや疑問を抱きます。出会い頭の事故が起きやすい場所だからこそ飛び出さず左右の安全確認をしてから出ましょう、というのが目的のはずですが、しばしば完全に停止すること自体が目的となった取り締まりが行われています。
ルールはルールなんですけど、少なくともほぼ停止するくらいまで減速して左右確認をした場合は目的を果たしているからヨシとする、くらいの”遊び”はあっても良いんじゃないかと思っています。これしきで違反取られるのは馬鹿らしいので完全停止しますが、いつも疑問には思っています。
ルールの正しさより安全確保
この言葉で意図するところは2つあります。一つは安全確保のためのルール違反の例。もう一つはルールを守ってさえいれば良いわけではないということです。
①ルールより安全確保が優先されるシチュエーション
例えば非常に交通量が多くみんなかっ飛ばしてくる道路や、路駐する車が多くて死角が多い道路を自転車で走る場合は歩道を走る方が安全でしょう。ルール的には原則は車道を走るべきですが、その結果事故に遭うくらいなら安全確保を優先すべきと考えます。もちろん、歩行者が多く歩道を走ることで歩行者を危険に晒すことがないという前提です。都心みたいに車道も歩道もどうしようもない時は諦めて押し歩きするしかありません。ルート設定の未熟さを呪いましょう。
②ルールを守っていても危険なシチュエーション
これを主張したいがためにこの記事を書いたと言っても過言ではありません。次で掘り下げます。ルールを守っていてもルールを守らない人に殺される危険があるのが公道です。ルールを守っているから正しい!と自己主張するのではなく、十分な危険予測と安全確保をすべきという話です。
ルールを守っていても安全が担保されるわけではない
これを主張したいがためにこの記事を書いたと言っても過言ではありません。大事なことなので二回言います。冒頭に貼り付けた自転車と大型車が接触しかけた動画を題材にしつつ、また最近通っていた普通二輪教習で学んだ、ルールを守ることと危険予測、安全確保に関して考えていきたいと思います。
ルール的に正しいことと安全であることはイコールではない
有名なコレもそうだけど、自転車はこの走り方が正しいのハードモードすぎる https://t.co/Nug4LQV0MN pic.twitter.com/gOQY8GOjUo
— 牛乳やさん (@lWemIrzRvQoODfx) June 20, 2026
まずは件のこの動画。交通法規の観点からも自転車に落ち度はありません。自転車は常に左車線の左端を走行しなければならず、その車道が左折専用レーンであっても走行すべき位置は同じだからです。Xで色んな意見を聞いた上で見た結論としては、この動画は「トラックは左折時に自転車を認識できていたものの、自転車が直進するとは思わず事故になりかけた」もしくは「自転車がトラックの死角に入っていて左折開始時点まで認識されていなかった」のいずれかではないかと推測します。いずれにしてもルール的にはトラック側の落ち度が100%です。しかし、私は安全確保の観点で見れば自転車側にも十分落ち度があると考えます。
自分の身の安全が他者の倫理に委ねられているから
なぜルールを守っている自転車側に安全上の落ち度があるかというと、車とほぼ並走する形で交差点に進入しているからです。もし左折車から認識されていなかったり、もし左折車がウインカーを使わずに曲がってきたら?他者も必ずルールを守るという性善説的な社会であれば危険はないでしょうが、現実世界では他者という自分でコントロールできない要素による危険要素があまりに大きいシチュエーションだと私は考えます。
自転車が車のはるか前方を走行していたのに、交差点手前から車が急加速してきて高速で左折してきて巻き込まれるような事故だとしたら残念ながら避けられないでしょう。居眠り運転の車が対向車線をはみ出して当たりに来るようなもので、こればっかりは運が良ければ緊急回避できるかどうかで、自衛の術はないかなと思います。
ルールを守りつつ他者という不確定要素にも備えるのが安全確保
ということで私が言いたいルールより安全確保、というのはルール違反を正当化する口上などではなく、他者が危険運転するかもしれないという可能性を考えて危険予測をするということです。車のすり抜けをしない、運転が下手な車には近づかない、交通量の多い道路は迂回する、等々です。
自分自身の心がけとこのシチュエーションに対する対策
自分語りになりますが、私が自転車やバイクに乗る際に心がけていることや安全確保のマイルールを示します。
・大原則として他人の運転は一切信用しない
前述の通り、一時停止で止まらないかもしれない、優先関係無視して曲がってくるかもしれない、左右確認をしてくれないかもしれない、という”かもしれない運転”を徹底的に意識します。車でもそうですが、運転中の何気ないワンシーンでどんな危険があるかな?と教習所のビデオみたいに脳内で考えてみたりするの意外と面白いです。
・優先関係によらず原則は車を先に行かせる
二輪と車で起こりがちな右直事故や左折時の巻き込み事故。これらは防ぎ得る可能性が高い事故の代表なので特に注意します。具体的なシチュエーションとしては交差点手前で前にいる車が左折ウインカーを出している時や右折待ちの車がいる交差点を直進するときです。前者であれば十分に減速し交差点に差し掛かる時点で車側としっかり距離を取っておき、自然と車が先に左折するように誘導します。時には自分が停車したり、ハンドサインで先に行ってもらうようにしています。右折待ちの車については、自分が交差点に差し掛かるまで距離がある場合にはできるだけハンドサインを出して先行してもらいます。自分以外の直進車との兼ね合いもあるのでそのまま直進することもありますが、運転席のドライバーの挙動もできる限り確認したうえで直進するようにしています。
・動いている車の横には入らない
走行位置は車の左後方で、どんなに接近しても真上から見て前輪が自転車の後縁にかからない距離感を守ります。走行中の車の真横を走ると少し幅寄せをされただけでこちら側は大クラッシュにつながりますし、左折時の巻き込みのリスクも増えるので非常に危険です。ただし、信号待ちで完全停車中であったり、渋滞でほとんど動いていないような状況であれば片足がすぐに着けるような体制のもと、徐行ですり抜けることはあります。機械的にこういう時にも絶対にすり抜けをしない、としてしまうと後続の二輪の通行を著しく妨害することがあるので、あくまで安全に行けると判断できるかどうかで決めています。
・交差点進入時には十分に減速する
これは主に二輪側としての右直事故対策です。二輪は車体が小さい分、対向車からは実際の距離以上に遠くにいるように見えるため、車は二輪からするとなんで出てくるんだというタイミングで右折してきます。これもルール的には直進車優先で右折車の落ち度ですが、事故で死ぬのはこっちなので出てくるかもしれないという前提で減速しつつ進入します。
・交差点に車と並走した状態で進入しない
前述した通り、車と並走していると死角に入りやすくなり左折時の巻き込み事故のリスクが増えます。教習所では30m手前という十分な距離を持ってウインカーを出すよう教わりますが、実際には直進すると思っていたら突然曲がる車は非常に多いです(余談ですが昔住んでいた山梨には山梨ルールというローカルで危険な運転が横行しており、曲がるのと同時にウインカーを出す危険運転がその一つです)。ということで先行車がいれば左折か直進か見極められるまでは後方に位置しておきますし、交差点手前から加速してきて並ばれたら減速か停車し車を先行させてから進みます。
・渋滞している交差点を直進する際の安全確認の徹底
渋滞により青信号なのに車が交差点に進入できない状況は、その横をすり抜ける二輪車と右折車の事故が起こりやすいシチュエーションです。どちらの立場でもやはり出てくるかもしれない、何なら出てくるだろうくらいの気持ちで臨みます。特に二輪側であれば車の横を抜けきる際は一時停止するくらいのつもりで構えています。
・自分が人をはねてしまったり事故を起こしたら…という想像を定期的にする
人を轢いてしまい怪我を負わせて罵られる、轢き殺してしまい相手家族に泣かれその後の人生を殺人犯として生きていくことになる、とか急いだあまり接触事故を起こし、警察を呼んだりなんだりでかえってものすごく時間的負担が増えたり、日々の生活に相手側と過失割合のやり取りをする労力が追加されたら…という最悪の状況を想像し、そうなるくらいならゆっくり運転しよう、とか多少遅れてもそれよりはマシか、と考えるようにしています。自分の身に起きた場合の最悪さをできるだけ具体的に想像してしんどい気持ちになるのがポイントです。
かもしれない運転と逆だろう運転
自分自身が今の危なかったなと思うシーンや、他者が事故を起こした/起こしかけた場面を思い返すと、動いている車の横に入らないこと、交差点での減速、一時停止左右確認の遵守、だけでもずいぶんと危険を回避できると思います。やはり「相手がルールを守らないかもしれない」「何か危険なことが起こるだろう」という、かもしれない運転・逆だろう運転が基本にして最強の心得だと考えます。
私は自分の身さえ守れる確率が上がればそれでいいし、反論もあるでしょうからみんなこのように運転すべきとも思っていませんが、コントロールできない他者という要素に文句を言うよりも自身のリスクコントロールに努める方が有意義なのは間違いないと思います。
シチュエーション別の危険予測
交差点でのすり抜け
巻き込まれたくなきゃ交差点ですり抜けんな
— ちょろ (@VmyFkvFHNt64067) June 22, 2026
当たり屋かよ https://t.co/6a18QCxu2v
非常によく見かける、二輪が左折車に巻き込まれそうになる場面です。自転車もバイクも、ライダーが自認している以上に車からするとびっくりするくらい見えづらいんですよね。特に左後方を走られると意識的に見ようとしないと厳しい。加えて交差点手前では左折車は”幅寄せ”をしなければならないのでリスクはさらに上昇します。横に入ると急な幅寄せやふらふら運転などの外的要因に対して身を守る術が全く無くなるので、やはり基本はすり抜けはせず例外として渋滞で停止中は状況により前に出る、くらいが良いと思っています。
合流時の事故
一時停止を無視して飛び出してきた車との事故映像が話題になるたび、コメント欄には
— ツキノワプロダクション(from 月の輪自動車教習所) (@tsukinowapro) June 19, 2026
「相手が100%悪い」
「こんなの避けられない」
という意見が並ぶ。
確かに、一時停止を守らなかった側に大きな責任があることは間違いない。
しかし、教習指導員として映像を見ると、別の視点も持つのである。… https://t.co/vlpLPfEcCd
一時停止のある側道から出てきた軽自動車と直進車の衝突事故。一時停止自体はしているように見えますが、いずれにしても直進車優先の状況で軽自動車側が出てくるタイミングを誤っているので落ち度は軽自動車側にあります。
しかし危険予測の考えでいくと私はこの教習指導員の方と同じ意見です。もし直進車側が「左の車が変なタイミングで出ようとしてくるかもしれない」という発想でもう少し減速していたらこの事故は防ぐことができた可能性があると思います。繰り返しですがルール的にどうこうではないのです。相手が想定外の挙動をした時に対応できるようにしておくのが危険予測による安全運転です。
右直事故
交差点で直進する二輪と右折車の接触事故のことで、件数が多いこともあり右直事故という名で呼ばれています。これも二輪が小さいために実際より遠くにいるように見える錯覚で右折車がタイミングを誤るというのが事故の本態です。警視庁の事故データでも単独事故を除くと一番多い事故になります。車で直進する時に比べ、自転車に乗っていると右折車がやたらと強気に出てくるなぁと思っていましたがこういう事情があるようです。あとは車しか乗らない人だと、ドライバーが思っている二輪の速度と実際の二輪の速度感がズレていて、結果的にタイミングを誤るということがあります。
交差点は怖すぎる
直進優先というルールは一旦置いておいて、もし車が出てきたら停車できるくらいの速度感で交差点に進入することで大半は事故を回避することができるのではないかと思います。二輪教習でもそのように教わりました。私は自転車で危険な思いを何度かしたことがあるので右折待ちの車を見るを緊張が走ります。低速で進入して確実に車が出てこないと判断したら加速して早めに抜けるようにしていますが、一番やってはいけないことは青信号だけ見て何も考えず直進することです。
サンキュー事故
交差点で右折待ちをしている時、対向車に譲られて進んだ時にその横をすり抜けてきた二輪と衝突するのがこの事故です。これも右直事故と同様非常に多い事故で、譲ってもらった状況ということでサンキュー事故の名が付いています。

交差点のすり抜けをするとこういうリスクがあるので止めましょうという前述の話に繋がりますが、右折側に注目してみると「譲ってもらえたから早く出なければならないという急ぐ心理」と、「譲ってもらったことで無条件に安全に行けるような気がしてしまう心理」によって安全確認がおろそかになるというのが本態だそうです。
これも普通二輪教習で教わったのですが、私自身も確かに譲ってもらえた時は早く出なきゃと普段より速い挙動をしているなと思い当たりました。右折で車の前を通過する時は路地から道路に出る時と同じシチュエーションと考えて一時停止するくらいの方が安全です。
まとめ:事故は高難易度のステージで発生するのではない
一部偉そうに指南しているような箇所もあるかもしれませんが、車でも自転車でもバイクでも公道の運転における安全確保として私が心がけていることを網羅してみました。
交通事故の多くは日常にあふれている、誰もが遭遇するシチュエーションでのちょっとした判断ミスや怠慢が元で発生します。ステージが進むにつれてクリアが難しくなっていくゲームなどとは異なり、運転が長くなるほど危険だらけの高難易度なコースを運転させられるわけではないので、同じ場面でも人によっては事故が起きるし、人によっては事故どころか危険なシーンにすらならないものです。残念ながら誰が運転していても100%避けられない事故もあるでしょうが、殆どの事故はそうではないはずです。
ということはルールを守れば良いというところに留まらないさらなる安全意識、危険予測によってだいぶ安全性を高めることができるのではないでしょうか。