今年は年齢的に節目を迎えます。転職・転居を考えていることもあり、新しいことややりたかったことに挑戦するチャレンジの年にしようと思い参加した先日のAACRに続き、長らく行きたい場所リストに入っていた福島県の磐梯吾妻スカイラインを遂に走ってきました!
全自転車乗りは磐梯吾妻スカイラインに行くべき
というツイートと共に、数年前写真で初めて見た時からずっと行ってみたい場所だったのが磐梯吾妻スカイラインでした。元ツイートは見つかりませんでしたが、日本離れした浄土平の景色を見た時はこんな場所が日本にあるのかと衝撃を受けました。
磐梯吾妻スカイラインはその名の通り、日本百名山にも選出されている名峰磐梯山と吾妻山を望む山岳道路で、その類まれなる景色から”日本のアリゾナ”とも呼ばれ定期的にSNSで話題になります。この日本離れした景色が見られる区間は全体からするとわずかですが、それでもわざわざ訪れる価値は十分にあります。自転車乗りバイアスは大いにかかっていますが、やはり速すぎないスピードで、思い立ったらその場ですぐ脚を止めて、じっくり景色を堪能できる自転車で行ってこそ輝く場所だと思います。
磐梯吾妻スカイライン ルート
磐梯吾妻スカイラインは福島駅を起点とした周回ルートで距離約80km、獲得標高1700mほどと比較的コンパクトで、北側の高湯側、南側の土湯側いずれから入っても後半戦はダウンヒルがメインになるためゆっくり走っても半日もかからずに堪能できます。
加えて東北新幹線のおかげでアクセスが非常に良いため、首都圏出発であれば無理なく日帰りも可能です。
高湯と土湯、どっちから登るか
私は北側の高湯方面から登るルートを選択しましたが、調べてみるとどうやら南側の土湯方面から登るルートを勧める人が多いようです。実際走ってみた身としては悩ましいですが同じく土湯側から登る方を勧めます。理由は以下の3つ。
①全体の斜度が緩やか
これは明らかな差がありました。高湯からでも激坂というような登りはなくヤビツ峠で苦しんだ私でもそこまでの苦行に感じなかったものの、時折斜度2桁になり、7~8%ほどの斜度の区間もそれなりにあったのでガッツリなヒルクライムです。麓から20kmで1400mほど登る必要があるため、イメージ的には乗鞍に近いです。
それに対して帰路であった土湯側は明らかに斜度が緩く、時折平坦道どころか登り返し(ヒルクライム中であれば下り)が混じってきました。その分距離は長いと思いますが、明らかな難易度の差を感じました。
②ヒルクライム中の眺望ポイントが多い
高湯側は一度視界が開ける高度まで行けば福島市街を望む眺望やつばくろ谷をはじめとする絶景スポットがありますが、その高度までは延々と森の中(しかも全体の中でも斜度がキツい区間)です。
対して土湯側では比較的序盤から谷側に視界が開け、高度を稼げば磐梯山と猪苗代湖を望む象徴的な景色がずっと堪能できます。
③高湯側に比べ人が少ない
ヒルクライムとしては高湯側の方がメジャーなこともあり(磐梯吾妻スカイラインヒルクライムレースでは高湯側のルートです)、自転車乗りの多くは高湯側からアプローチするようです。乗鞍と異なり車やオートバイも走る一般道なので自転車乗りが少ないほうが安全ではあります。
磐梯吾妻スカイライン ライド記録
前述の通り東京発なら日帰りも可能な場所ですが、逆に言えば前乗りしてしまえば前日夜と当日朝がかなりゆっくりできるので、仕事終わりに輪行して前日入りすることにしました。GWの東京駅に近寄りたくなかったので、大宮から新幹線に乗り福島駅近くの「ホテル板倉」に前泊しました。
駅から徒歩7分ほど、輪行状態を解除せずとも辿り着けてしまう好立地ながら、GWで直前の予約にも関わらず、素泊まり3900円と格安。そして
まさかの和室。完全に旅行気分です。そして支配人の方がロード乗りだそうで、玄関で組み立てさせてくれたり荷物を預かっててくれたり何かと親切にしてくれました。自転車が繋ぐ人の和!同じ趣味ってサイコー!
朝9時頃、福島駅を発つ
一応サイコンでルートを作りましたが、駅からとりあえず西に向かって進めば大丈夫です。
ちょっと雲はありますが山の上からの景色も期待できそうです。今回は前日ギリギリまで連日天気予報をチェックし1日中晴れ予報が出ているのを確認してから種々の予約をしたので、勝ち確な計画です。正面方向に見えているのは吾妻連峰でしょうか。
このように青看板だけで磐梯吾妻スカイラインまでの道は容易に分かります。初見に優しい街。
県道70号線 福島吾妻裏磐梯線
70号線に入るとあとはひたすら道なりに進むだけ。意外と交通量があり路肩が狭いので景色が良くとも地味にストレスな道です。
ヒルクライム開始
前方の道が凶暴になってきたところでガーミンが鳴きました。
いくぜ、クライムオン!…あれ、なんの身構えもなく来たけどよく考えたら乗鞍と同じくらいやべえ道じゃないのん?
ああ…圧倒的乗鞍の最初感。
しかし夏空と見紛うほどの青空。なんか凶暴な看板が写ってんなァ…
ふと見上げると桜が咲いていました。まさか5月になって桜が拝めるとは!なんたらと煙は高いところが好きと言いますが、馬鹿な方が良い景色が見られるので馬鹿になった方が人生楽しいですよ。
斜度のキツい区間を抜けると温泉宿エリア。この辺りは温泉の宝庫なのでスルーするのは大変勿体ないけど仕方ねえ…
温泉宿エリアをを抜けるとだいぶ上がってきた感じがします。福島市街方面。
まだ残り800mアップのところでガーミンの表示が狂い始めました。激坂??聞いてないんだが???
吾妻連峰。
先のガーミンの表示で発狂しかけましたが、意味不明なことに特に斜度が上がることはなかったどころか温泉街を抜けたあとは割と穏やかな登りでした。この前のAACR以来心なしか意地悪になってきた気がします、マイガーミン。
つばくろ谷(不動沢橋)
作家、井上靖が命名した吾妻八景の一つがここ、つばくろ谷。
橋を見たら愛車を入れて撮るのが世の理。
ほんとこのtada車良い色してるなぁ。オーダーフレームって最高。思い立ったらすぐこういう写真を撮れるのは自転車だけの特権です。車やオートバイではなかなかこうはいかないやろなぁ(ニチャァ
天狗の庭
ここは天狗が岩を飛んで遊んだとされている景勝地。この時期はまだ木々が冬の様相なのでパッとしませんが…
紅葉の時期になるととんでもない、まさに絶景です。車じゃ道がめちゃくちゃ混みそうだけど自転車で来れば堪能し放題…また来る理由ができましたな…。
きもちええ〜
うひょー
ヒルクライムで登ってきた道を遠くから眺めるのが好きです。
この景色、この山肌が見えてくればもう間もなく核心部です。
danger zone
磐梯吾妻スカイラインはてっぺんの浄土平の1kmほど手前に火山ガスが噴出している危険地帯があります。
なるほど確かに停車禁止、窓を閉めて走れとの看板だ。あれ、生身のローディはどうしたらいいの??息を止めて加速…するにはまだ登りなんだよなぁ。
浄土平 例の景色
danger zoneは特に火山ガスの匂いを感じることもなく症状が出ることもなく通過できました。自転車やオートバイの走行が禁止されているわけではないので、長時間留まらなければ問題ないのでしょうきっと。そしてそこを過ぎるといよいよ
雑誌とかでよく見るやつ!!!!!
かろうじて車種に日本感があるのみ。アリゾナに行ったときの写真なんだけどねなんて言われたら信じますねこれは。バイオハザードのエンディングでクレアさんがバイクに乗ってぶっ飛ばしがちな雰囲気です。
先のdanger zone俯瞰。
浄土平
スタートから1400mほど登り、ヒルクライムゴール地点の浄土平に到着。さすがにここまで来るとまだウインドブレーカーのみでは寒い季節です。
吾妻小富士
浄土平の休憩スポットの反対側。せっかくなので吾妻小富士を登れるだけ登ってみます。火口までは木の階段になっているのでビンディングシューズでも問題なし。
階段を登りきるとド迫力の火口です。巨大蟻地獄。
富士山のお鉢めぐりのように火口に沿って一周歩けるのですが、ここから先は未舗装路になります。さすがにビンディングシューズだと厳しい。こういう時はSPDの方が良いんだろうなと思いつつ、私は登坂力の無さを機材で補うスタンスなので、ヒルクライムと分かっていてSPDで来る気はしません。
サドルバッグに収納できるくらい小さく出来て、Converse ALLSTSR程度には靴底がある輪行用の靴があればめちゃくちゃ需要あると思うんですけど、何か良いアイテムないですかね?
自転車のロックを忘れたので車体の防御力はAlterlockのみ。ギリギリ視認できるので目を光らせています。
下る前に…
冒頭でハイライト区間が短いという趣旨のことを書きましたが、この日本のアリゾナの異名を持つ景色はここだけです。つまり高湯側から登り土湯側に下るプランでは写真を撮る最後のチャンスです。
浄土平から若干下りますが、せっかくなら好き放題に立ち止まれる利点を活かし愛車との写真も撮るべきです。
車体が小さくなりますが引きで道路を長めに入れてみました。この先も続いているという未来に向かう印象の写真になります。
今度は下の道を含めて高度感を演出します。
俯瞰にするとただの記録的な印象が強まります。
山側の斜面からズームで引き寄せ効果を加えてみました。
市街地を含めるとより高度感が出ますね。登ってみたとき広がる世界は小さいほど気持ちいい。
火山ガスみっけ!
最高到達点
浄土平を超えて暫く進むと唐突に磐梯吾妻スカイライン最高到達点の表示が現れます。
看板もありますがめちゃくちゃ地味です。都民の森の都内最高点の表示もそうでしたが最高点シリーズはなんでこう地味なのか。
土湯側へダウンヒル
土湯側へのダウンヒルは意外と漕ぐ場面があります。高湯側なら完全に下りっぱなしでブレーキワークが試される感じですが、前述の通り斜度が緩めかつ平坦や登り返しが一部含まれています。
おそらく吾妻山。
正面は磐梯山です。裏磐梯ですね。
そして磐梯山の左手には猪苗代湖。
tada車×磐梯山
tada車×吾妻山
猪苗代湖が見えなくなるくらいの高度まで下ると分岐。福島方面に進みます。
福島市街。だいぶ降りてきました。
土湯側は案外このくらいまで下ってきてからの方が下り一辺倒になります。気温も上がってきて非常に気持いい下りです。
そういえば福島の町並みを走るのは初めてです。何なら登山では夜中とか早朝にしか滞在してないので昼間の風景を見るのも初めてですが、道も綺麗で遠くには山が広がっていてとても好みな風景です。
遠くに見える山は近すぎず、甲府盆地のように迫りくるような印象がなく、空とのバランスが良い塩梅です。8年住んだ甲府盆地は山に囲まれている感が強すぎて閉塞感を感じる人もいるらしいので…
昼食はどうしようかと考えていたらちょうど道すがらにびっくりドンキーがありました。幹線道路沿いに看板がいくつもあるので自然と導かれます。子供の頃、家族で外食するお店で一番好きでした。今はもっと好きです。なんて、なんてサイクリスト向けの食事なんだ…!
感想
全人類は〜〜すべき、みたいなちょっと前から流行っている主語が大きい構文はあんまり好きじゃないんですが…全自転車乗りは磐梯吾妻スカイラインに行くべき。
どんな景色であっても「どんな労力をかけてでも来て良かった」と思う人もいれば「あんなに苦労してこのくらいか」と思う人も居て、価値を感じられるかどうかは人それぞれです。ゆえに全人類構文はあまり好きでなく、私は人に勧める際には移動にかかる金銭的・時間的コストに見合うかも含めて考えます。
そんな前置きを踏まえても、やはり誰しもにおすすめできる場所だと思います。今回は新幹線を直前に取りましたがそれでも東京郊外からの往復で2万円弱、乗り換えの手間や現地での移動の手間は輪行旅としては最もラクな部類ですし何より無理なく日帰り可能なサイズ感なので、さらにハードルは下がります。17時までは通行可能なので、昼前に福島駅を出発できれば余裕で楽しめます。評判の浄土平の景色はやはり唯一無二で、他のヒルクライムスポットと代替が効きません。あの乗鞍ですら、同じような景色は見られません。必ず福島駅までの往復の交通費や手間や移動時間に見合う体験ができると断言して良いでしょう。
ということで御託を並べてしまいましたが、念願の磐梯吾妻スカイラインは全自転車乗りにオススメできる絶景ルートでした!