山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【ロードバイク】松本からロードバイクで自走してめちゃくちゃ乗鞍ヒルクライムしてきた 2023.7

松本から自走で乗鞍へ行こう

言わずと知れた自転車乗りにとっての聖地乗鞍へ。毎年夏になると行かなければいけない気がしてきてしまう乗鞍へ。今年は松本前泊を挟んで完全自走で走破してきました。やってみて行きは辛いですが帰りはほとんど下りなので思っていたよりは無謀なチャレンジではありませんでした。ただし上高地線はあまり自転車で走るべき道ではないと思うので同じようなことを考えている人は参考にしてみてください。

www.mount-road.com

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松本前泊の記録。雑談です。

畳平へのアクセス

乗鞍畳平は松本から国道158、上高地線をひたすら西に進んだ北アルプス南部に位置し、松本からの距離は走行距離で約60km、獲得標高約1000mで、高速道路はないのでこれは車でも自転車でも同じです。

乗鞍ヒルクライムでは乗鞍観光センターをスタート地点とした20km、1200mアップの乗鞍エコーラインを登ります。いつも観光センターに車を停めて登っていますが、途中の三本滝レストハウスまでがマイカーでアクセスできる最終地点なので、自信や時間がない場合には少しショートカットすることができます。

なぜ自走するのか

一人で長距離長時間運転したくないからです。登山でこれまで東北3周分くらい遠征してきましたがそれは仲間がいたからできたことです(ほとんど運転は任せたけど)

alu.jp

私は中央線沿線の民なので特急あずさで2時間半もかからず松本までワープできて、得られるものは寝るなり本を読むなり好きに使える往復5時間と運転からの開放、そして酒をいつ飲んでも良くなるアルコールフリーパス。この時点であずさ一択なのですが問題点は松本から乗鞍までをどうするか。今まで登山に乗鞍に飽きるほど走った158号線は狭いし長いし登るしどう考えても自走したくはありません。けれどその自走さえ頑張れるなら得られるものはあまりにも多いので考えた挙げ句、己の脚を信じてみることにしました。

プラン、時間的見通し

ルートは先述の通り、前泊地松本駅から158号線を思考停止で進み続け、まずは乗鞍観光センターを目指します。そこから乗鞍ヒルクライムを経て畳平がゴールにして折り返し地点。せっかくなら岐阜側の乗鞍スカイラインを下ってみたかったですが台風の影響で通行止めが続いているため、帰り道も全く同じルートを辿ることにしました。

見通しとしては

往路:松本→乗鞍観光センター(3時間)→畳平(2~3時間)

復路:畳平→乗鞍観光センター(40分)→松本(2~3時間)

所要時間は自分のStravaの過去の走行ログの数字から予想した時間です。畳平の滞在時間、下山後の風呂と松本でお土産を買う時間を含め、全所要時間は12~13時間ほどと予想しました。翌日仕事であることを考えると18時くらいまでにはあずさに乗りたかったので、逆算すると5時台に出る必要がありました。

総獲得標高2315m 史上最大のヒルクライム旅の幕開け

AM5:30 松本駅出発

前泊のドーミーイン、御宿野乃の最上階より明け方の松本盆地。製氷機から先日買った真空断熱ボトルに氷を詰められるだけ詰めている時に撮った写真。あの山のさらに奥の方まで行くんだ…自走で…。

スタート&ゴールが松本駅なのでライド中に不要な鞄やサンダルは全て駅のコインロッカーに預け、結局出発したのは5:40頃でした。ちなみにカメラを入れたまま預け入れをしてしまい史上最速で400円失いました。松本駅のコインロッカーは一時取り出し機能がない悪徳ロッカーなのでよく気をつけてください。真夏なのでもうすっかり明るいですが気温はまだ20度前半で、肌寒いと涼しいの間くらいで非常に気持ちが良いです。山の方は晴れていて、松本のシンボル常念岳の綺麗な三角形がよく見えていました。(写真中央やや右です)

終始道なりに進めば良いので頭を使わずとにかくペダルを回していれば良い親切なルート。乗鞍観光センターまで果てしなく遠いイメージがありましたが数字にしてみるとたった42km。この数字が松本から自走で行けるかもしれんと思ってしまった一番の要因でした。

常念岳アップ。前常念岳と常念岳の2峰が綺麗。

158号線は駅から5kmほどの松本ICを過ぎたくらいから一車線になります。交通量は特別多くはありませんが道幅が狭く、対向車がいると自転車を追い抜くことはできないくらい。この辺りは交通量が増えてくる前に通過してしまいたいところです。

国道158号序盤から乗鞍岳がこんにちは

常念岳が視界の真横になってきたあたり、山の切れ間に見覚えのあるシルエットが見えてきました。

山の奥の一層高い山、本日の目的地乗鞍岳がこんにちは。今からあのほぼてっぺんまで自転車で行きます。正気か。

10kmほど走るとずいぶんと雰囲気が変わってきて、一度も車両を見たことがないローカル線と並走しながら山の中へ誘われていきます。

ファイナルセブン

山に入ったなと思うと割とすぐに右手に出てくるファイナルセブンことセブンイレブン波田赤松店です。文字通り乗鞍・上高地方面最後のコンビニなので補給をする最後のチャンス。(飲み物の自販機くらいはこの先もありますが)

ファイナルセブンのほぼ向かいのここは上高地方面のバスと乗鞍方面のバスの乗り換え地点、新島々バスターミナル。松本からバスで行きたい場合はこれを使うと良いです。

山岳エリアへ

松本からファイナルセブンにかけてはほぼフラットで、後半は斜度1-2%くらいのわずかな傾斜がありますが概ね平地の感覚で進むことができます。ファイナルセブンを過ぎたくらいからいよいよ山岳エリアになります。

登り基調で斜度4-6%くらいが基本で、ちょくちょくこういう急な登りが混じってきます。完全に登り一辺倒かと思っていましたが案外そうでもなく時々下りが入ってきます。さらにファイナルセブンの前後と、最初のトンネルの直前には比較的しっかりした下りがあります。ってことは帰り登らなきゃいけないじゃん。

世にも珍しい、鼻の穴みたいなトンネル内分岐地点。トンネル内はたぶん自転車が走ることは想定されていないのでめちゃくちゃ怖い。前後灯マジで必須。

分岐を抜けるとダムがあって小休止。

上高地-乗鞍高原分岐から乗鞍ヒルクライムは始まっている

スタートから1時間半、30kmほど走った地点でようやく青看板に乗鞍高原の文字が現れます。グーグルマップで調べた通りの距離感なので、ということはここから10kmで500mも登らなければいけないようです。

乗鞍エコーラインを除くと乗鞍まであと10km!のここから先がベースの斜度が上がって一番キツかったところです。というかもうここから乗鞍ヒルクライムは始まっています。

斜度8%くらいが当たり前になり始め、斜度2桁がちょいちょいと顔を出してきます。景色もなかなか変わらず進んでいるのかよく分からなくなってくるところですが、過去の記憶によるとこのたぬきが見えたら残りわずかだった気がします。

そんなことはありませんでした。実際にはたぬきが出てきてから斜度は増してくる上に全然終わりません。たぬきが出たら残りわずかとか言ったの誰だよ。

AM8:10 乗鞍観光センター着

スタートから2時間40分ほど、ようやっと乗鞍観光センターに着きました。この直前の10kmが本当に辛くてまだスタート地点に着いただけという事実を受け入れられません。なんで今までの半分の距離で今まで以上登らなければいけないんだろう。

乗鞍ヒルクライムスタート

左側の尖ったピークが乗鞍岳剣ヶ峰3026mの最高峰です。今日の目標の畳平は右側の端の平らなところです。

空には羊雲。綺麗ですが天気が崩れるサインなのでもしかすると登る頃には眺望がなくなっているかもしれません。少なくとも午後には完全に曇りそうな空気です。

今回の乗鞍はtada車にとっては初。tada車in乗鞍を撮りたかったのが今年も乗鞍に来た理由の大半を占めるのでたくさん撮るぞい。

空が似合うtada車。

三本滝レストハウスにて休憩していると初老の紳士に話しかけられ、みかんをいただきました。どうやらトンネル辺りで私を見かけてどこから来たのか気になっていたらしいです。松本からですと言ったら引いていた。うん、今日以前の私も同じ反応すると思う。

気温は20度くらいで、予想通り雲が増えてきて日光が遮られたので登っていても肌寒いくらいでした。ウインドブレーカーを完全に失念していたのでダウンヒルが極寒になりそうで不安になります。山は寒いと分かっているのについ下界が暑いと舐めプしてしまうの何度目だろう。

位ヶ原山荘で起死回生のコーヒー

森林限界手前、位ヶ原山荘。写真が少ないのでテンポよく来ているように見えますが全然そんなことはなくてもうボロボロです。途中の冷泉小屋から位ヶ原山荘までのつづらは眺望がない上に斜度が8%くらいにちょっと増してくるので本当にきつい。ましてや今回は乗鞍観光センターで既に脚を使い果たしかけていて最初からギア比1の最低ギアだし、秘伝の13枚目リア66Tが生えてくるよう必死に念じます。

気持ちも折れかけていたのと標高が上がってますます冷え込んで来たのでコーヒーでも飲もうと立ち寄ります。そういえばここで休憩するのは初めてです。

少し薄暗く静かな位ヶ原山荘。

コーヒー450円。淹れたてでちょっとしたお菓子も付いていて心に染みました…。もう引き返してもいいかなって何度も思った今回の乗鞍ヒルクライムですが、このコーヒーがなかったら畳平までは辿り着けなかったと思いますガチで。予定より時間がかかって焦っていましたが、やっぱり一度バイクを離れてしっかり休憩するのは大事なんだなとしみじみと。

店内にはなんとろんぐらいだぁすとーりーず!のサイン色紙!!今年は亜美ちゃんと同じジャージを着て来たぞ!!うひょー!!!!!日付は2021年、意外と最近です!

亜美ちゃんの力もありちょっとは脚が回復していました。嘘です、していません。けどもう畳平は見えています。残り350mアップ。位ヶ原山荘から先も冷泉小屋から先と同じく斜度がきつめで過酷ですが、ゴールの畳平が見えているのと森林限界を超えて眺望が良くなるので気持ち的には全然違います。あと毎回劇的に息が切れ始めるのがこの辺りからなので、おそらく酸素濃度が下がるポイントなんだと思います。

そうは言っても脚の限界が近い!めちゃくちゃ辛いぜ!!

恒例の季節外れのスキーヤーを遠目に眺めます。毎年思うけど物好きすぎでは??ってきっと向こうも思ってるんだろうな。季節外れのスキーヤーにドン引きするときスキーヤーもまたこちらにドン引きしているのだ。

最後のコーナーを抜けて畳平までのラストのここ。平坦に見えて普通に登りなのでイキってラストスプリントとかすると5秒で死にます。(死んだ)

遂にゴール、乗鞍畳平2702mへ

ヒルクライムの終点、長野と岐阜の県境を抜けると

畳平!!!!!

岐阜側、乗鞍スカイラインのゲート。来年開通していたら今度はこっちから来てみよう。

AM11:33 乗鞍岳畳平

スタートから約6時間、遂にゴール!!!!!

やっとtada車を連れて来られた!!!!!

到着時点の記録。2175mなんて自転車じゃ過去最高です。

畳平には夏らしい入道雲がまさに急成長してきている最中で、気温はなんと16度。少し陽が出てきたから良かったですが、普通にめちゃくちゃ寒い。目標では11時までに着きたかったのでだいぶ遅れてはいるものの、食事を摂らないとさすがにもう無理そうだったのでレストランで食事をして、お参りをして、滞在時間40分ほどで帰路に着きます。

最後に岐阜県高山市と長野県松本市の看板が同時に収められるこのアングルで一枚。

意外とほぼ下りっぱなしだった帰路

12:15 畳平からダウンヒル開始

今まで登ってきた道を一望します。名残惜しいけど帰らなきゃ。

バスがまるでミニチュア。かわいい。

いつもはあそこまで降りるのか〜と感慨深くエンディングの気持ちになりますが、今日は下り切ってからこの山域を抜け市街地まで走らなければいけないのでまだまだ冒険は終わりません。エンディングどころか半分です。しかし畳平から乗鞍観光センター、乗鞍観光センターから上高地-乗鞍高原分岐までの30kmはほぼ全部下りで、そこから松本までは登り返しはあるものの基本的には登ってきているので帰路は実質下り基調の30kmということになります。

なんだか行けそうな気がしてきた…!

さすがに頂上近くは寒いダウンヒルでしたが

午後になると高原とはいえ28度くらいまで気温が上がっていたので震えて下ることにはならずに済みました。それにしてもの入道雲、青と白の空がたまらなく好きです。

あっという間に三本滝レストハウスが眼下に。

夏の空ってずっと見ていられます。ああ、ずっと夏ならいいのに。

12:50 乗鞍観光センター

もうブレーキワークにも自信がないくらい疲れていたので何度かコーナリングが膨らんでヒヤヒヤしながらも乗鞍観光センターまで過去最速35分で下りきります。ここから松本までは行き2時間半、色々加味して3時間見ておけば大丈夫でしょう。目標は17時。

行きは走って感じていた以上に登り続けていた。というのが全体を通しての感想です。思っていたより斜度があったので行きで想像していたよりも下りっぱなしだったし、特に乗鞍観光センターから上高地-乗鞍高原分岐までは完全に乗鞍ダウンヒルの続きでした。

気を抜くとすぐ60キロとか出ちゃうあの感じがプラス11km続きます。10%の下りからのヘアピンカーブみたいなところが数か所あるので気が抜けません。いい加減にして欲しい。

帰り道で最大の登り返しは最後のトンネルを抜けた後、8%ほどの坂があります。行きでずいぶんと下るなと感じた場所でしたが、ここまでの下りでかなり脚を休められた上にそんなに長くないので、2000mオーバー登った身からすると消化試合のようなものです。

あとはファイナルセブンを抜けたあと、緩い登りがあるのが最後であとはラスト12kmくらい、松本まで若干の下りのほぼ平坦道です。行きより交通量がだいぶ増えているのでそこだけ注意が必要でしたが、ここまでが下りっぱなしで非常にラクだったので楽しむ余裕が残るくらいには回復してきました。

14:20 完走!本当のゴール

行きに予想した以上に帰路は下りっぱなしだったので、なんと畳平から1時間30分で松本に帰ってくることができました!!122km、最終獲得標高は2315m。松本から自走で乗鞍に行けた!!もう貧脚とは言わせない!!!

サウナと山賊焼き定食を激推したい瑞祥

もう回数券買った方が安いんじゃないかと思うほどしょっちゅう来ているのがスーパー銭湯の瑞祥(ずいしょう)です。158号線と19号線が交差するところのちょっとしたモールのようなところにあります。おそらく乗鞍帰りのサイクリストも北アルプス帰りの登山者も皆ここに集まるんじゃないかと思うくらいには館内で山で見た顔を見かけます。

ここは広くて綺麗な上にサウナがしっかりしていて(サウナ・水風呂が広く適切な温度であり、ととのいスペースが絶対順番待ちにならないくらい十分確保されている)750円で利用できるので普通に日常的に使いたいクオリティ。

食事処も広くて綺麗な上に

信州名物の山賊焼き定食890円が山の帰りにも満足できるボリュームでめちゃくちゃハイクオリティで私が一番推したいポイントです。松本の厨十兵衛と合わせてここの山賊焼き定食ももう身体の一部。

松本から乗鞍まで自走して

松本-乗鞍観光センターで体力を使い果たしてしまうんじゃないかと恐れていましたが、たぶん好き好んで乗鞍に登りに行く人の体力と脚力があれば自走乗鞍は全然可能だと思います。ただし山道の狭さとトンネルがネックになるので、走行に時間がかかる往路は交通量が増える前の早朝に通過するべきだと思います。復路では大半が下りっぱなしなので、トンネルを全て抜けるくらいまではそれほど車を足止めすることなく通過できます。気にしなくていいです。ただし途中からバスに乗るようなエスケープは基本的にはできないので、本当に登れない人や初心者は体力をよく見極めた方が良いかと思います。

ただしまた来年同じことをするかというと微妙なところ。思ったよりは大丈夫でしたが正直乗鞍までは楽しい道ではないし辛いし、トンネルはシンプルに危ない。ということでまた車を使わず乗鞍に行くなら松本からバスを使います。軽く調べた感じ自転車も乗せてくれるようです。実は今回、前日の夜にあまりに明日登るのが嫌になってこの方法を思いつきました。しかし平日にも関わらず満席だったので選択の余地がありませんでした。夏は特に登山者ですぐ埋まってしまうようで、さらにザックが多いと自転車を積み込めないかもしれないので結局自走しかねえって可能性も。

路線バス | 長野のバス・鉄道ならアルピコ交通株式会社

最後に、今回の一番の功労者はつい最近購入したロードバイク専用真空断熱ボトルのサーモスFJP-600です。こういう辛いライドほど冷たい飲み物を補給できるのがめちゃくちゃ大事だなと痛感しました。飲み物の追加は500mlを2回で、朝5時半に詰め込んだ氷がダウンヒル開始まで生き残っていたので終始キンキンに冷えた飲み物を飲みながらライドできました。夏のライドはもう保冷ボトルなしでは走りません。

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1日2000m超えの登りという未知の負荷が味わえて、嫌いな運転をしなくても乗鞍に行けることが分かったので良い経験でした。