毎年何かしらの異常気象を経験している気がしますが、今シーズンの冬は特に暖冬で例年にないことがたくさん起こっています。登山においては例年なら雪たっぷりのはずがまるで春口の残雪期くらいしか雪がなかったりして、例えば2023年末は福島の安達太良山まで遠征してようやく雪を拝めました。
そんな暖冬で毎年行っている八ヶ岳辺りは雪不足なので、たっぷりの雪と戯れるべく富山まで遠征してきました。
日本二百名山 金剛堂山
金剛堂山は富山県南部、ほぼ立山と同緯度に位置する山で、世界遺産の白川郷よりもさらに北側に位置しています。百名山でこそありませんが、山頂からは富山湾から立山連峰の素晴らしい眺望が得られる人気な山です。
アクセス
関東圏からは長野県の松本から上高地線、飛騨高山を経てアクセスすることになります。中央道松本ICにて高速を降りた後は155km、3時間半ひたすら下道というソロハイカー殺しな遠征です。
ちなみに関越道で群馬→長野県長野市→新潟県と北から回り込むルートもありますが、距離が大幅に伸びて時短にも節約にもならないので上記のルートの方がおすすめです。
厳冬期は北側の「金剛堂山冬季登山口駐車場」を登山口とするピストンが一般的です。
山行データ
標準コースタイムは往復6時間ほどですが、帰路はほぼ下りっぱなしなので雪山歩きに慣れていれば十分巻けると思います。
飛騨古川に前日入り
さすがに移動含めて日帰りするのは物理的にほぼ不可能なので、土曜日昼過ぎに集合して飛騨古川に前泊して臨みました。
今回のパーティは例によって学生時代の登山隊のうち、私と師匠、KW氏にY嬢のスタメン4名です。卒業してからもう5年経ちますが、毎年数回山のために集まっている貴重な友人たちです。
1泊1.5日くらいの日程での弾丸富山遠征を企画してくれる師匠がいるのはもちろん「帰ってくるのがほぼ確実に日曜日の日付けが変わるギリギリ、当然翌日は仕事」という条件で躊躇わず参戦してくる狂った人間しかいないのが長続きの秘訣です。
温泉旅行×登山
メンバーの所在地が東京、千葉、静岡と散り散りなので今回は甲府で集合して1台に乗り合わせて移動しました。18時頃に飛騨古川のお宿「飛騨ともえホテル」に到着しました。移動だけで5時間ほど。控えめに言ってクッソ遠いです。
このブログで何度かおすすめしている温泉宿の前泊を伴う登山スタイルですが、たった1泊でしかも翌朝は大抵早いとはいえ、宿泊することで旅行気分が味わえるし当日朝の移動に余裕が生まれて登山の満足度も上がるので本当におすすめです。
金剛堂山 山行記録
前泊地の飛騨古川から登山口までは約1時間半の道のりなので8時登山開始を想定して6時に宿を発ちました。6時出発なんて仕事じゃ地獄ですが登山ならだいぶゆとりのある時間設定です。
登山口までは山道である471号線を北上し、登山口より北側まで進んで戻ってくるようなルートになるのですが、この471号線は冬季通行止めになっているので注意してください。記事作成時点ではGoogleマップはこの道を避けてルート案内してくれますが、我々が行った日はGoogleマップがこれを認識しておらず、引き返して迂回する羽目になりました。
金剛堂山登記登山口駐車場
ルート変更したりコンビニに寄ったりで8時半頃に登山口に到着しました。既に満車状態で路駐で溢れていました。登山口にトイレはないので注意。
今回の装備。昨年日帰り登山に30Lも要らないという結論に至った私ですが、さすがに雪山装備では日帰りでも装備が多いのでリッジ30を使います。しかも今回は新兵器のスノーシューがあるので重装備です。ちなみにスノーシューはインターネット上でやまどうぐレンタル屋というお店でレンタルしました。
ここ最近のソロ山行は天候に恵まれなかったため久々の青空な気がします。
KW氏、Y嬢もスノーシューを装着し参戦です。
序盤が一番の急登
金剛堂山はスタート直後が最も斜度がキツいので早速汗だくになります。最初は林間なのでよほどシェルは不要です。
トレースは十分ついており、想像よりも雪が締まっていましたが、それでもトレースを外れるとツボ脚なら膝上まで沈むしんどいラッセルです。
1時間弱ほど歩くと少しなだらかなこの景色。まだまだ登りはありますが、急登はおしまいです。
急登を終えるとすぐに景色が開ける
振り返ると山の間から日本海の海岸線が見えました。
山頂まで1/3くらいしか進んでいませんがもう既にこの景色です。サイコー!
登山者の多くはスノーシューを履いており、山スキーで登る人も何人かいました。写真右側にスキーのトレースが付いています。私はせっかくのスノーシューなので平坦なところではトレースを外れて歩きました。トレースに縛られず、好きなように歩いて良いのは自然の本来の楽しみ方な気がしました。
かなり晴れてくれましたが、向かう山頂方面は雲に包まれなかなか姿を見せません。雲の動きは早いものの、山の向こう側から常に雲が発生しているような感じでした。
中間地点あたりで登り返し
全体の半分くらいのところで一度登り返しがあります。
東の方にはひときわ白く青い山々。北アルプス北部、立山連峰です。別格です。
時間とともに進行方向はどんどんガスってきましたが…
振り返ればこの青空です。同時刻に撮っているとは思えないコントラストです。
それにしてもさすが富山まで来た甲斐があって雪たっぷりです。今回はトレースと締まった雪のおかげで結果的にはスノーシュなしでもと登山可能でしたが、これでも例年よりは少ないらしいので基本はスノーシュがないとかなり厳しい山と思った方が良さそうです。
ぼくたちの山頂
進行方向は一瞬晴れることもありますが基本はずっと雲の中。結局山頂は一度も拝むことはありませんでした。
山頂は晴れない…かな?
とりあえず手前のピークまでは行こうか
(百名山じゃないし)山頂に拘らなくてもいいんじゃね…?
…
よし
ここを山頂とする!!!!!
眺望がなくとも山頂を踏むことには意味がある、と思っている派ではありますがそれはイコール登山では山頂を踏まなきゃだめだ、という意味ではありません。我々はみな、山でしか見られない景色を見るためそして山で師匠メシをいただくために山に登っているので、コンディションが悪いのに山頂に拘る必要はありません。
今回は山頂手前の眺望をもって登頂としました。こういう価値観まですり合わせられないと他人との登山は上手くいかないだろうと思うので、SNSとかでは山仲間を作りにいけない私です。
冷たい風に煽られ立ち止まるとすぐさま身体が冷えていく、本来ならば生物の滞在を許さない厳冬期の山。ここでしか見られない景色、ここに立つことでしか味わえない気持ち。VRも含め映像技術がどれほど進化しても、これらを味わうためには自分の脚で登るしかありません。
山の上から見下ろす街並みも
遠くの水平線も
明らかに装いが異なる3000m級の山々も、どんなに頑張って写真におさめてもこの場に立った体験の1/3も伝わらないと思います。
さて、金剛堂山はコース全体を通して休憩を取れる開けた場所が多くあるのでゆったり食事が取れます。雪山に来るたびに小さい椅子なり断熱シートなり必要だと思うのに下山すると忘れてしまう不思議。
今日のメニューは師匠が前日に3時間ほど煮込んで作ってくれた牛すじのどて煮です。事前調理で現地では温めるだけの時短スタイルで、熱源は例によってジェットボイルミニモです。調べれば出てくる沸騰まで何秒、という数字以上に引くほどすぐ沸騰します。風があろうと関係なく。雪山登山の調理器具はこれ一択ですまじで。
小学校で1人は居る真冬でも半袖半ズボンの少年よろしく雪山登山でも冷たい飲み物で水分補給をする私ですが、ようやく雪山で温かいものを摂取する大切さに気づきつつあります。
このどて煮にY嬢が用意してくれたホットココアは最高で、これだから寒いの嫌いなのに雪山には好き好んで来てしまうんだなんて改めて思いました。
まとめ
・関東からはクソ遠いので誰かと行くべし
・最初の急登を過ぎれば登りはきつくない
・距離、コースタイムは雪山日帰りとしては長めなので余裕を持つべし
・暖冬でもスノーシューが活躍→普段は無いと厳しいと思われる
・山頂まで至らなくても満足できる眺望の良さ
・クソ遠いのに見合った価値あり
金剛堂山でした。