山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

雪山が最高なので雪山登山初心者が雪山デビューするのに最適な山を紹介します

はじめに

都内が100年ぶりに11月の最高気温を更新したり寒暖差が激しい2023年秋でしたが、12月を目前にいよいよ本格的な冬が到来しそうで、山ヤにとっては待ちわびた雪山シーズンの到来です。そこで雪山にチャレンジしてみたい方に向けて、今まで自分が登った雪山デビューに適した山を紹介していきたいと思います。

自己紹介

私は学生時代に友人に誘われて登った南アルプス仙丈ヶ岳の景色を見て本格的に登山にハマり、同年冬には同じく友人に導かれるまま八ヶ岳の蓼科山で雪山登山デビューを果たしました。最初は危なそうだからと雪山だけはやらない!と思っていましたが気づけば雪山の楽しさを発信し誘う側になっていました。

雪山デビュー時。当時はレインウェア上下と3シーズン靴に10本爪の軽アイゼンで登っていました。

厳冬期装備を一式揃えた最新版

現在は本格的な厳冬期装備を一式揃えて雪山を楽しんでいますが、雪山に関しては日帰り限定で基本的には危険箇所が少ない初心者向け〜中級者レベルくらいの山に限定して登っています。厳冬期のアルプスなどには挑みません。

雪山といっても色々ある

「雪山登山」と聞くと山をやらない人は口を揃えたように「なんでそんな危ないことするの?」「眠ったら死ぬぞってやつでしょ?」「いつか死ぬよ」エトセトラ。漫画「岳」の世界のようなエクストリームな世界を想像する人が多いです。無積雪期の登山でさえアルパインクライミングをイメージして危ないから止めろと言う人が少なくないです。

しかし何事もピンからキリまであります。一瞬でも気を抜いたら滑落しておそらく死んでしまうような、選ばれし者しか近づいては行けない場所もあれば気温にさえ耐えられるのならば命の危険はまずないような場所まで様々です。

死ぬ系の雪山

残雪期 西穂高岳

厳冬期 甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

厳冬期 甲斐駒ヶ岳黒戸尾根

厳冬期 赤岳頂上直下

上の写真は中級者以上とされる山々です。こういうところは確かに命の危険が伴いますし、ある程度の経験と技術がないと近寄れない場所です。

死なない系の雪山

厳冬期 木曽駒ヶ岳

厳冬期 縞枯山

厳冬期 北横岳

これらの写真はいずれも初心者向けとされている山々で、実際に雪山デビューの女性メンバーを含めて登った場所もあります。気温や風などの気候こそ過酷なものの、技術的に難しい場所や滑落の危険などはほとんどない上に数時間程度で堪能することができます。今回は私が登ってきた中で後者に該当する、誰でも安心して楽しめるであろう雪山たちを紹介していきます。

雪山デビューにおすすめの山々

全体のコースタイム、アップダウン、危険箇所の有無といった登山自体の難易度と眺望などの雪山の楽しさを総合してランキング形式にしています。

第1位 北横岳/縞枯山・茶臼山(八ヶ岳)

第1位は雪山入門の超定番、北横岳です。北八ヶ岳ロープウェイを用いて標高を稼ぐことができるため、コースタイムが短く獲得標高も低くお手軽ながらも2000m級の迫力ある眺望が得られ、南八ヶ岳から南アルプス、北アルプスの稜線まで人気の山々が一望できる最高の雪山体験になると思います。縞枯山と茶臼山は北横岳の隣の山で同時に周回することもできるので同立にランクインしました。まるで絵本の中に出てくるような雪の森歩きで非日常感もたっぷり味わえます。八ヶ岳都内からでも登山口までのアクセスが良いことも特徴で、迷ったらここに来れば間違いないと思います。

北横岳山頂に続く稜線

絵本の世界のような雪の森歩き

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第2位 天狗岳(八ヶ岳)

第2位は同じく北八ヶ岳の2峰のピークを持つ天狗岳です。私が初めてソロで登った雪山でもあります。こちらはロープウェイこそありませんが終始穏やかな登りで山頂からは360度のパノラマビューが楽しめ、南アルプスや北アルプスなど名だたる山々を一望することができます。こちらも雪山入門の山として鉄板です。

天狗岳山頂から 南アルプスの眺望

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第3位 四阿山/黒斑山

3位は我らが登山隊のリーダーである師匠が雪山デビューに最適と推奨しているこの2座が同立です。いずれも浅間山近くに位置しており四阿山は群馬県嬬恋村、黒斑山は長野県小諸市に位置しています。都内や神奈川県からは登山口までのアクセスは遠いものの、登山としてはいずれも5時間程度のコースタイムで穏やかな登りなので十分日帰りでアタックできる山です。

四阿山は前半は登山というよりはだだっぴろい高原ハイキングなのでスノーシューで遊ぶこともでき、ほぼ稜線歩き状態なので終始眺望が良く、槍ヶ岳や大キレットの稜線を眺めることができます。

四阿山 序盤のスノーハイク

四阿山 山頂のパノラマビュー

黒斑山は何と言ってもその山容からガトーショコラと呼ばれる冬の浅間山を間近で眺められる最高のビューポイントです。

黒斑山 ガトーショコラこと冬の浅間山を目の前で眺められる

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第4位 赤城山

後半6位は群馬の名峰、赤城山です。夏は蒸し暑く虫が多くつらい環境になりがちな低山ですが、雪山シーズンになると雪山入門にとても良い環境に変わります。木々が爆風から守ってくれて、滑落の危険箇所も少なく、雪のおかげで自由に登ることができたりと良いことがたくさんあります。赤城山は積雪量が多いのでルートを外れてラッセルの練習もできますし、雪と存分に戯れて遊ぶことができます。山頂の眺望も日本百名山に選ばれるだけあってなかなかのものです。

赤城山 眺望スポットより

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第5位 木曽駒ヶ岳(中央アルプス)

第4位には中央アルプスから木曽駒ヶ岳がランクインです。3000m級ながらこちらも約1000mを登る日本最大級のロープウェイを使って比較的お手軽にチャレンジできる山で、稜線に出るまでの千畳敷カールの大迫力な地形が魅力です。標高差400mのカールを登り切ると後は山頂までほぼ平坦歩きで、アルプスの名を冠しながらも道幅が非常に広いため危険箇所がほとんどなく楽しめてしまいます。

木曽駒ヶ岳 千畳敷カール スタート地点からこの景色です

ただし環境的にはマイナス15度前後の極寒の中で常に爆風が吹き付けるため滞在するだけでも非常に過酷な場所です。技術的な難易度は低いものの本格的な厳冬期装備が必要です。また気温が上がる3月以降になると地形的に雪崩のリスクが高くなる場所でもあるので、1~2月の厳冬期がおすすめです。

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第6位 西穂独標(北アルプス)

同じく日本アルプス、あの北アルプスから西穂独標がランクインです。新穂高ロープウェイで一気に高度を稼いでスタートすることができて、独標の直下を除けば斜度が緩くてハイキング気分で歩けます。西穂高岳エリアは独標をはじめ数多くのピークが連なる稜線を歩きます。西穂高岳から先には非常に高難易度な破線ルートが続きますが、積雪期であっても独標までならば難易度は低いです。雪化粧を纏い神秘的な美しさを見せる北アルプスは一見の価値があります。

西穂独標から西穂高岳方面を望む

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第7位 硫黄岳(八ヶ岳)

久しぶりに八ヶ岳から硫黄岳です。硫黄岳は広大な山頂からの抜群の眺望に加え、爆裂火口のダイナミックな光景が楽しめますが、難易度は高くなく登山初心者向けの山として知られます。

広大な硫黄岳山頂

厳冬期登山としても技術的な難易度は低めで危険箇所も少ないのですが、これまで紹介した中ではコースタイムが長いため求められる体力レベルが高いので下位にランクインしました。厳冬期で日帰りする場合は美濃戸口から先、赤岳山荘ないし美濃戸山荘からスタートできることが理想なので車を選ぶという難しさもあります(美濃戸口から先は四駆+金属チェーン携行が必須)。

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第8位 西吾妻山

第8位には東北の百名山、西吾妻山がランクインです。こちらはゲレンデのリフト上がスタート地点となっているので高度を稼ぐことができる上、全体的に穏やかな道になっています。序盤から裏磐梯の抜群の眺望が楽しめます。

序盤から裏磐梯の迫力ある景色

そして西吾妻山といえば何と言ってもスノーモンスターです。山形の蔵王と並び、スノーモンスターが発生する数少ない地です。毎年必ず見られる景色ではありませんが、一生に一度は見ておくべきです。

西吾妻山 スノーモンスターに囲まれて

山としての難易度は低いですが、登山に使える時間がゴンドラの時間に規定されてしまうので標準タイム以上のペースで歩けないと慌ただしくなります。また関東圏からは遠く移動含めると日帰りが難しいので下位に来てしまいました。

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第9位 谷川岳(天神尾根ルート)

世界一の人食い山として知られる谷川岳ですが、西吾妻山と同じくゲレンデをスタートとする天神尾根ルートならば、終始稜線歩きで絶景を堪能しながら初心者の体力でも十分日帰り可能なので初心者でも挑戦可能です。また国民的登山アニメことヤマノススメに登場する特別な山でもあるので個人的に推し山です。

谷川岳 トマの耳より

岩場など技術が求められる場所はありませんが、下位にランクインしたのは気象条件が要因です。谷川岳は日本海と太平洋側双方の風を受け止める地理的な特徴があり、1日中晴れることはないと言われるくらい、天気の急変が多い山です。積雪期には過去2回登っていますが、いずれも晴れ予報、登山指数Aだったのにも関わらず山頂付近でホワイトアウトを経験しました。さすがに視界不良の状態で闇雲に歩くと滑落の危険はある場所なので、初心者の場合はソロではなく必ず経験者に連れて行ってもらう方が良いです。

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第10位 唐松岳(北アルプス)

最後はギリギリ初心者向けと言って良いかなと思う、北アルプス唐松岳です。唐松岳は長野県北部、スキーで有名な白馬八方尾根を歩きます。唐松岳は夏季も冬季も初心者向けと調べてヒットする場所で、終始稜線歩きで大迫力の絶景を味わえる素晴らしい山です

終始最高の稜線歩き

個人的に過去の登山体験の中で今だにベストだったと思っている場所でもあります。山頂から見た後立山連峰と日本海の水平線はあまりに現実離れした景色で強烈に目に焼き付けられました。

唐松岳山頂から 後立山連峰を望む

唐松岳も行動可能時間がリフトの時間で規定されてしまい、始発のリフトに乗っても8時以降のスタートになります。コースタイムは長めなので標準のペースではかなりカツカツになるため、日帰りするには歩く速さと体力が求められます。私の時も最終リフトギリギリくらいの下山かつ装備の問題などもあり山岳レスキューの方に叱られることになりました。

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まとめ 

雪山は雪山でしか絶対に味わえない体験だ

これまで登った中で初心者向けにおすすめできる山々を紹介しました。こうして振り返ると登ってきた雪山は入門向けの山ばかりですが、物足りなさを感じたり登って後悔したことはありません。同じ山でも積雪期になると全然違った景色になりますし、低山であっても非常に美しい景色に変化します。高山では夏山以上に現実離れした神々しい景色が味わえます。雪山と言っても難易度は本当に様々なので、記事を読んで「意外と自分でも挑戦できそうだ」と思っていただけたら嬉しいです。

雪山のリスクについて

天候さえ良ければリスクは低い

雪山登山が夏山よりもリスクがあるのは確かです。雪山は留まるだけでも厳しい環境であることが多いので、天気急変による行動不能、低体温による命の危険はどこでもあります。しかしここで紹介した山は気象条件さえ良ければまず危険に晒されることはないだろうと思います。もちろん急変したらどうする?という問題はありますが、天気予報を見て怪しければ止めておくとか停滞を想定してツエルトや防寒着を多めに忍ばせておくとか、できる範囲で備えるしかありません。そのリスク自体は時期問わず山では想定しておくべきものです。

装備について

実は上位にランクインした北横岳や天狗岳などは雪山を始めたての頃で、レインウェア+軽アイゼンで登っていました。今一緒に登る仲間もほとんどは3シーズン靴+軽アイゼンで登っています。「雪山をやるならば覚悟を持て、装備をケチるなら雪山には入るな」と言う人も多いと思いますし、私自身も今では同じ意見です。

しかし天候が良いコンディションで厳冬期靴に12本爪アイゼン、上下ハードシェルにピッケルを装備しないと例えば北横岳に登ってはいけないか、四阿山には挑めないのか、と言えば正直そんなことは全くないと思います。誤解を恐れずに言えばむしろオーバースペックかもしれません。

私が伝えたいのは一気に厳冬期装備が揃えられない人でもまず体験してみるというのもありだということです。その場合はもちろん経験者とともにというのが条件になるとは思いますが、登山に使える防寒ウェアにレインウェア、あとは最低限軽アイゼン(前爪あり)とストックがあれば今回の第1位〜4位の山であれば問題ないと思います。

もちろん、最初から揃えてしまうのが結局安上がりにはなるので雪山を始めるぞと決めている人は一式揃えちゃった方が良いです。私の装備をまとめたので良ければ参考にしてみてください。

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雪山は最高です

雪山を舐めるなと怒られてしまう部分もあるかもしれませんが、極端に敷居高く感じる必要はないのかな、というのが個人的な意見です。それよりもとりあえず経験者に連れてってもらって体験するのが良いです。雪山はきっと人生に新たな楽しみをもたらしてくれます。