山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【テント泊登山】鳳凰三山にテント泊して最高の御来光を見てきた② 青木鉱泉ドンドコ沢ルート2022.10

鳳凰三山テント泊day2

鳳凰三山テント泊登山2日目。眺望をほぼ得られず早々に明日に備えて迎えた2日目です。鳳凰小屋スタートです。

初日はこちら。

www.mount-road.com

山行データ

山頂で御来光を見るために

4時に起きて撤収、朝食を済ませ5時には出発する予定で朝を迎えました。相当早いつもりでいましたが現場の様子としてはだいぶ後発組だったようで、テントの数は半分以下になっていました。

鳳凰小屋から地蔵岳までは約1時間、500mアップです。山頂で御来光を望むには4時過ぎに出る必要があるので確かに我々は少し遅かったかもしれません。

朝食

朝食担当は私です。学生時代の登山でよくやっていた、ゆるキャンを参考にしたスープパスタです。事前に切ってきたブロッコリーとベーコンを茹で、早ゆでパスタを投入しクノールのスープの粉末を投入して完成です。クノールのスープを使うのがポイントで、味付けが不要になるゆえ手数が少なく済み、茹で汁を無駄にせず、かつ温かい汁物で身体を温められるので早朝や厳冬期向きです。しかも学生の頃やっていたので安上がりなのも良いところ。お試しあれ。

5:24 鳳凰小屋出発

朝のトイレ待ち渋滞などを経て5:24に鳳凰小屋を出発します。わずかに東の空が明るくなり始めていましたが、まだまだヘッデンが必要な時間帯です。

朝陽に急かされながら黙々と登っていきます。

100mほど登ると樹林帯の終わりが見えてきます。

朝と夜の境界が曖昧になっていきますがまだ太陽は姿を現しません。

頂上直下の砂浜

長過ぎる樹林帯をようやく抜け、ついに視界が晴れてきました。頂上直下は遠目にも白く見えている砂浜で通称蟻地獄。以前登った時には3歩進んで2歩下がるといった有様で足を取られ続けて全然進めませんでしたが、今回は違う場所かのように歩きやすかったです。シーズン終わりということもあり、踏み固められ続けた集大成だからでしょうか。

御来光

我々が樹林帯を抜けたまさにその瞬間、出来すぎているタイミングで東の雲海から太陽が顔を覗かせました。その場に居た誰もが釘付けになりました。

夜が明ける世界で一番美しい瞬間です。

行く先を見ると燃えるようなモルゲンロート。空には月が浮かんでいます。

赤く染まるオベリスク。昔涸沢で見たモルゲンロートも一瞬でしたがここはさらに刹那的でした。

新海誠の映画に出てきそうな、神秘的な夜明けです。雲海が良い仕事をしています。いつからだろう、夕焼けよりも、朝が好きになったのは。

地蔵岳山頂

地蔵岳山頂2764m。オベリスク直下の賽の河原です。

威風堂々と佇むオベリスク。イルカの頭のような奇岩。オベリスクの頂点には本格的なロッククライミングのスキルが必要ですが、その直下までは通常の装備で登ることが出来ます。スリリングではありますがぜひ登るべきだと思うのはその眺望がサイコーだったからです。

甲斐駒ヶ岳

まずは南アルプスの雄、甲斐駒ヶ岳。山梨県を象徴する名山です。

北アルプス

甲斐駒ヶ岳の右側、さらに奥には北アルプスの山脈が一望できます。槍ヶ岳から大キレットまでの稜線がはっきりと確認できます。

乗鞍岳

甲斐駒ヶ岳の左側奥には槍穂高から少し離れたネコミミ様の2峰の山頂、サイクリストの聖地こと乗鞍岳です。

仙丈ヶ岳

さらに左方に視線を移すと南アルプスの女王、仙丈ヶ岳のカールが見えます。甲斐駒ヶ岳に比べ、稜線に緑が溢れ女王の品格を醸し出しています。

富士山

南を見ると雲海にそびえ立つのは唯一無二、天下の独立峰富士山です。

八ヶ岳

東を見ると八ヶ岳の全貌が見えます。この角度から見るのは初めての経験で、なかなか見慣れない不思議な形です。最高峰赤岳の存在が際立って見えます左端には諏訪富士こと蓼科山の丸い山頂が顔を覗かせています。

右に仙丈ヶ岳、左には標高日本第2位、第3位の北岳〜間ノ岳。

オベリスク直下の鳳凰山大神。なむなむ。

仙丈ヶ岳は私にとって登山を始めたきっかけの特別な山です。カールの圧倒的なスケール感、山頂から見た景色に、こんなにも知らない世界があったのかと震えた4年前を思い出しました。

雲海に浮かぶ、浮世絵のような富士山。どこから見ても分かる、これだけ大きな独立峰は本当に他に例がありません。登山を始めると富士山は標高の数字だけじゃないのがよく分かるようになりました。

賽の河原

地蔵岳、賽の河原。現実世界と思えないこの景色だから、本当に世界の境界なのかもしれない。

雲海とオベリスク。

右から北岳、間ノ岳、農鳥岳。この3峰は白峰三山と呼ばれています。甲府盆地から櫛形山を超えて頭だけ見えている山々です。

地蔵岳から縦走路方面。次の頂の鳳凰三山最高峰、2840mの観音岳を目指します。

北岳間ノ岳アップ。

甲斐駒ヶ岳と地蔵岳。

オベリスク直下の砂浜、通称蟻地獄。御来光の感動であまり気になりませんでしたがこうしてみるとすごい斜度です。もはや壁じゃないのこれ。

観音岳 鳳凰三山最高峰

観音岳山頂。鳳凰三山最高峰なだけあり、ここまでただでさえ絶景パノラマだったのがさらに広く見渡せるようになります。

観音岳から薬師岳と富士山。逆光で分かりづらくなってしまいましたがが山肌は白く、燕岳のような風貌をしています。さらにオベリスクのような奇岩も見えます。

一面が雲海ということもあり、海の水平線に浮かぶ孤島のような富士山。その佇まいはもはや不気味にすら感じられます。古くから信仰の対象になるのは十分に頷けます。何かが宿っているような気がしてしまう。

縦走路ラスト、広々とした山頂の薬師岳から歩いてきた軌跡を振り返ります。白い砂浜に紅葉が彩りを与えている、天界の縦走路です。観音岳から60m下るので地蔵岳や甲斐駒ヶ岳は見えなくなってしまいます。

薬師岳山頂 白峰三山を正面に望む 

薬師岳山頂2780m。地蔵岳方面の眺望を失う代わりに、目の前に白峰三山がそびえ立つ圧巻の眺望です。左端の方にはギリギリ塩見岳が見えています。

感想

登山を始めて、地元民しか知らないような低山、メジャーオブメジャーの日本アルプス、そして東北遠征シリーズをはじめとする地方の名山など、色々な山を登ってきて、その度に異なる感動に出会ってきました。みんな違ってみんないい。十人十色。単純な比較は決してできませんが、この鳳凰三山は群を抜いている部分があります。それは憧れの山々全部盛りというところ。北アルプス、中央アルプス、南アルプスに八ヶ岳連峰、浅間山、秩父最高峰の金峰山、天下の名峰富士山。日本百名山がいくつ見えるのか。日本の登山家が憧れる山々の大半が、この縦走路から全て見えてしまいます。もはやオールスター戦。これまでのステージのボスと再戦するロックマンにありがちな最終ステージです。これほど情報量が多い稜線があっただろうか。

山の位置関係を把握し山座同定ができるようになった今だからこその楽しさもありました。山に興味がなかった頃に連れられた登山では、山の名前など何一つ覚えられなかったのに今では中部の山域は大半が名前はもちろん標高まで言えるようになったので不思議なものです。

南アルプスはアクセスが悪い上に森林限界が高く眺望までが遠いのが特徴で、なかなか足が向かない人も多いと思います。実際今回の山行も稜線に出るまでは眺望もなく、変わらない景色の中をひたすら登る我慢の時間が続いたので、数字で見る以上にキツく感じられました。全体的に斜度もきつめなので足のトラブルも起こりやすいです。

それでも、稜線上は唯一無二の圧倒的な世界がありました。VRや映像の技術がどれほど進化しても、自分の目で実際に見た体験は絶対に超えられないと思います。写真でも動画でも伝えられない世界は確実に存在します。

ということで、稜線までの登りは安易に人に勧めたら死の間際まで恨まれかねない苦行ですが、この稜線を歩いたら誰もがきっと許してくれる。そう確信できるので人に勧めたいと思います。ちなみに日帰りと泊まり、両方やった身として絶対泊まりで登るべきです。そして御来光を見るべき。

苦行に御来光に極上の稜線歩きの鳳凰三山でした。