山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【雪山デビューに】厳冬期北八ヶ岳 縞枯山・茶臼山日帰り登山 極寒ハイキング2022.12【2022年山納め】

雪山初心者も安全に楽しめる北八ヶ岳

山に自転車に旅行に遊びまくった2022年の締め括りは今冬季初となる雪山登山です。雪山で料理がしたいという師匠プレゼンツ。雪山デビューの女子もいるので初心者にぴったりな北八ヶ岳ロープウェイを利用した縞枯山登山です。パーティは私と師匠、Y嬢と雪山デビューのI嬢の4名で臨みます。

Y嬢は我々登山仲間の中の数少ない女性メンバーであり主力です。社会人になっても冬の四阿山や雲竜渓谷などを共に行動している立派な登山家です。もう一人のI嬢は富士山や立山縦走くらいでは全く体力の底を見せないという驚異的な体力の持ち主です。

北八ヶ岳で坪庭へ

北八ヶ岳ロープウェイは最寄りが諏訪南ICで、甲府からちょうど1時間程度と非常にアクセス良い場所です。ロープウェイの終着駅の坪庭から先は雪山登山、それより下はゲレンデになっていて登山者とスキーヤーが混在しています。往復2100円也。

ロープウェイでいきなり坪庭の2237mまで高度を稼ぐことができます。この日は外界は晴れ予報ながら八ヶ岳の登山指数はC。遠目から見ても八ヶ岳だけ雲がかかっているという八ヶ岳あるあるなコンディションでした。気温計はこの時点ですでにマイナス10度を指していました。

登山者が多くトレースは十分

雪質はふかふかですが登山者が多いためトレースは十分で、かなり踏み固められています。序盤はアイゼン無しで進んでいけるくらいです。凍っていたり斜度がきつくなければアイゼンかストックのどちらかがあれば大丈夫です。

ちなみに私はカメラを携行しているため基本的にはストック1本派です。登山始めた頃はマストアイテムなのかと思っていましたがそんなことはなく、足回りに不安がある人のサポート的位置づけです。今では雪山以外で使うことはありません。

坪庭からの登山道は10分ほど進むと雪山デビューの超定番の北横岳方面と今回の縞枯山方面に分かれます。どちらに進んでも山頂までは1時間程度で、ところどころ斜度がきついところがあるものの、基本的には緩やかな上に滑落=死、というような場所はなく、森の中を歩く時間が長いため風にも煽られにくい守られた環境です。気温以外は。

風の強い雪山で見られるエビの尻尾。

縞枯山を目指して進みます。序盤はほとんど水平移動です。

雪山デビューのI嬢。普段なかなか我々パーティと予定が合わないので今回は久々の参戦です。運動自体も久々ということで下りの足運びに苦戦していました。足裏全体で接地するのが慣れないとなかなか難しいようです。

絵本の世界のような雪の森歩き

絵本の世界のような圧倒的銀世界を進みます。だだっ広いところから森に入っていくので冒険です。

縞枯山荘

森を抜けるとこれまた絵本の世界に出てきそうな三角屋根の見た目が可愛い縞枯山荘です。八ヶ岳は冬季でも営業している山小屋が多いのが特徴で、こちらも例に漏れず営業中でした。そういえば冬季も山小屋が営業しているためか厳冬期の八ヶ岳は難易度低めに思われがちなのをなんとかしたい、とTwitterの山関係者が呟いていました。ちゃんとお金をかけた装備じゃないと死にます。マイナス10度以下はワークマンとかじゃ無理です。

現実離れした雪化粧の森。岩と氷の殿堂こと北アルプスもカッコいいですが、子供の頃の絵本に出てきたような雪の森も美しくて好きです。

縞枯山荘の先は雪の多い森の中

縞枯山荘を過ぎるとまた森の中に入り、これまでの平地歩きからようやく登山らしくなりました。距離は短いながらそれなりの斜度で、縞枯山まで一気に登らされます。といっても標高差は200mくらいです。

ある程度踏み固められているとはいえ、かなり雪深いです。トレースを少し外れて歩くとすぐに膝上まで沈み込んでしまいます。雪の重みによる倒木も目立ちます。

一同が登りに飽きてきた頃、木々の隙間から青空が覗きました。この青と白は雪山を始めてから出会った色。今では大好きな色の組み合わせの一つです。予定はまだありませんが次にオーダーする自転車はこの配色にしようかと思っています。

縞枯山山頂

縞枯山山頂。山頂自体はこの通り森の中で眺望がありませんが、5分ほど歩くと展望台があります。

見渡すのは南アルプス方面。外界の白いエリアは八ヶ岳山麓の原村。都会から移住し農業を始める人に人気の原村。うまくすると相当儲かるらしく「1億会」という億り人のみが参加できるコミュニティがあるという噂です。ほんとうかな?

展望台に出るとこれまで打って変わって爆風に煽られます。女性陣は飛んできそうです。風がやんでいたわけではなく木々が遮ってくれていたのだということを知りました。八ヶ岳の爆風は半端ではないので留まることは非常に困難です。5分と持たずに撤退しました。

続いて本日のゴール、茶臼山へ向かいます。一度鞍部まで下って登ることになりますが標高差的には縞枯山までの登りでメインは終わりです。

茶臼山山頂

縞枯山山頂から1時間足らずで茶臼山山頂に到達します。縞枯山と同じく山頂自体は森の中で歩いてすぐのところに展望台があります。

爆風の茶臼山展望台

茶臼山展望台。思わず耐風姿勢を取りたくなるほどの爆風を浴びながら、体温低下との戦いが始まります。どのくらい爆風かというと体重73kg+厳冬期装備の私が3歩分押し戻されるくらいです。一瞬体が浮きました。

この日はすっきりと晴れ渡らなかったこともあり、森の木々の美しさが際立った。逆風に立ち向かうような生き方をとことん避けて生きてきた身としては爆風に煽られながら雪に包まれながらも凛として佇む姿には見習うべきものを感じる。

主峰赤岳方面は残念ながら終始雲の中でその姿を拝むことはできませんでした。来年は厳冬期赤岳に挑む予定なので待っていやがれ。

ゆうに10cm以上に育ったエビの尻尾。風が吹いてくる方向に向かって育っていくのでそのエリアの風向が分かります。触ったらすぐに崩れそうな見た目に反して氷柱のごとく硬いです。うかうかしていると我々にもエビの尻尾が生えそうな勢いなのでこちらも早々に撤退し、樹林の中で昼食タイムにします。

極寒でも頼れるジェットボイルミニモ

気付いたらLINEのグループ名が「雪山で料理したい」になっていて、ヤマメシ担当の師匠の料理人としての熱意を感じました。メニューはなんときりたんぽ鍋です。意味不明です。

しかしほぼ無風の樹林帯とはいえマイナス12℃の極寒世界。師匠のプリムスバーナーは使用不能になってしまいました。その傍らで私のジェットボイルが平然と作動してくれたのでなんとか熱々でいただくことができました。

余談:ジェットボイルはなぜ雪山で使えるのか

ガス缶の中身は主にブタン、イソブタン、プロパンで順に沸点が低くなる(より低温で燃焼する)ので、その配合比率によって性能が変わってきます。雪山使用を考えるなら沸点が低いプロパンが望ましいのですが、プロパンは体積が大きく缶の内圧が上がってしまうため100%プロパンにすることはは難しく、一般的に冬季対応のもので20~30%程度で、残りはブタン、イソブタンで構成されています。高所用・極地用のガスはこの割合が異なります。

ジェットボイルのガスは比率非公表ですが、最も沸点が高いブタンを含まないという特徴があるため寒冷地により適していると評価されています。

私のジェットボイルミニモはサーモレギュレータが搭載されており、公式にはマイナス6℃でも動作すると書かれていましたが、このマイナス12℃の極地でも特に危うげなく働いてくれました。こういう極限環境でしっかり仕事をしてくれる道具は本当に心強いです。

こちらの記事で興味深い実験をされているので紹介します。

雪山登山で水を作るための寒冷地用ガスカートリッジを比較検証 – 神山オンライン

皆が寒すぎて箸が使えなくなってきた頃、いよいよ限界を感じ撤収します。ちゃんとした雪山装備をまとっていれば(汗冷え対策がきちんと為されていれば)四肢がこわばるくらい冷えてきても動き始めればなんとか復活することができます。

エビの尻尾に囲まれながら坪庭を目指して進みます。

帰りは道を少し変えて、縞枯山を経由せず坪庭まで直接出ていく周回ルートをチョイスしました。ここは最後の展望スポットです。

終盤は来た当初よりも晴れていました。冬の八ヶ岳は午後から晴れるイメージがあります。

坪庭といえばこのキツツキ。ちゃんとひもを引けば木をつつきます。思えばコイツも極限環境できっちり仕事をこなしているスゲエ奴です。

午後も人で賑わう坪庭。意外とジーンズにダウンジャケットといった普段着で訪れる人も少なくないのが驚きです(やめた方がいいとは思いますが、そのくらい気軽に訪れることができるという話)。

登山開始は10時過ぎながら14時頃には下山し、麓の温泉「玉宮温泉 望岳の湯」に立ち寄ります。名前の通り浴槽から八ヶ岳が一望できて、サウナも付いていて600円。施設も綺麗でおすすめです。

2022年登山締め括り&雪山慣らしはお気軽極寒ハイキングでした。