山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【スノーモンスター】西吾妻山 日帰り山行2023.3 【温泉旅行×登山】【東北遠征⑥】

スノーモンスターとは

スノーモンスターとは針葉樹に雪や氷の粒が着氷した雪のオブジェで、降雪量や気温はもちろん、風の吹き具合など様々な気象条件が揃わないと生まれない、日本国内では東北や北海道の一部でしか見ることのできない稀少な自然現象です。最も有名なのは蔵王だと思いますが、後から知ったことには、2023年の今シーズンに関しては蔵王よりも今回の西吾妻山のスノーモンスターの出来が良かったそうです。

そんな「スノモン」に会うべく企画された、関東・中部発の一泊二日弾丸東北登山紀行です。温泉旅行と地方の名峰登山を組み合わせると土日2日間だけでも満足感が非常に高い最高過ぎる週末が実現します。

スノモンの住む西吾妻山

コース・行程

西吾妻山は福島県に位置し裏磐梯と猪苗代湖を眼前に携える「グランデコスノーリゾート」からゴンドラに乗って登山口に到着します。コースは山頂とのピストンで標高差800m、往復CT5時間半ほどで危険箇所もなく、無理なく日帰り可能な日本百名山のひとつ。

3/4 9:30 山梨発

  11:30 道の駅ごかにて千葉組と合流後、昼食、移動、観光

  17:30 白河駅で最後のメンバーを拾う→

  19:00 宿に到着

3/5 8時半過ぎ 宿発

  10時半頃 登山開始

  15時半過ぎ 下山→郡山にて風呂・夕食

  19時過ぎ 郡山から帰宅開始→0時過ぎ 山梨着

パーティは山梨組の私と師匠、東京からイツメンHG氏、そして千葉に移住したY嬢。皆学生時代の同期です。

初日

佐野ラーメンいってつ

3/4朝9時半に山梨を発ち、昼に恒例の”道の駅ごか”で千葉組と合流しました。昨年の那須岳登山と似た行程で、まずは感動したご当地ラーメンの佐野ラーメンに再訪します。昨年1時間ほど待った「佐野ラーメン大和」へ。五霞ICから佐野藤岡ICで高速を下り、下道を20分ほど。

大和は有名店だけあり34組待ちという人気っぷりだったので、今回は車で5分ほど離れた「佐野ラーメンいってつ」に向かいます。

澄んだスープに佐野ラーメンのアイデンティティの縮れ麺。こういうのでいいんだよラーメンLv.100という感じ。岩のりが最高のアクセントになっていて最高です。佐野ラーメンはこのためだけでも遠征する価値があると思います。個人的にはなるとが綺麗なのの字なのがポイント高いところです。

茅葺屋根の大内宿

佐野ラーメンから今日の目的地は2時間半ほどで、東京から参戦するHG氏が白河駅に来るのが17時半ということで、間に1時間ほど余裕が生まれたので目的地近くの「大内宿」を観光します。有名なのは長ネギが1本入った、ネギで食べる蕎麦。しかし到着が16時だったため殆どの店は閉まっていました(その代わり駐車場代も取られなかった)。

白川郷を彷彿とさせる茅葺屋根の家屋が立ち並ぶ一角。〜宿という場所は江戸時代に宿場町として栄えた町で、大内宿は会津若松と日光を結ぶ宿場町として栄えたそうな。

日本昔話感。

範囲としては小ぢんまりしており、白川郷の一部分、という感じ。最奥部に寺があり、この写真を撮った展望台になっています。

お宿 小谷の湯 不動館

白河でHG氏と合流し本日のお宿「小谷(おや)の湯 不動館」へ。

 www.oyanoyu.com

建物は少々古いものの清潔感があり、従業員が特に親切に感じました。温泉は42度〜の源泉ということで熱めですが露天風呂だとちょうど良い温度でした。館内Wi-Fiが普通に速かったのが印象的。しかし館内の売店が少し寂しく、缶ビールはあれど日本酒の取り扱いがなかったのが残念なところ。

部屋(3人)

みんな大好きあのスペースの亜種。

地元の食材がふんだんに使われた豪華夕食

登山前に最適なボリュームの朝食。

2日目

登山口へ出発

朝食は最速で8時だったため、予め着替えと荷物の運び込みを済ませ、食後はすぐに宿を発ちます。宿から登山口である「グランデコスノーリゾート」までは1時間半弱かかるので10時登頂開始を目指しました。

C-HRに登山装備で5乗。意外とすんなり荷物が入って驚き。

登山口 グランデコスノーリゾート

概ね計画通り10時過ぎにグランデコスノーリゾートに到着。すでに優勝が約束された快晴の空。奥に見えている白い山が本日の目的地の西吾妻山山頂で、よく見ると山肌には既に白い粒状のスノモンが見えていました。

ゴンドラの往復券は1800円。下り最終は15:30なのでそれほど余裕はありません。ただし最終便を逃しても逃してもそこにはゲレンデがあるので、装備のキャパに余裕があればスキーを持ってきて滑って下るのが正解です。

時刻は10時25分。ゴンドラの列は9割がスキーヤー/ボーダーで登山は我々のほか2組ほど。登山組としては最後尾くらいだったと思います。

ゴンドラは6人乗りで特に広くはありませんが、登山装備でもザックを抱えればギリギリ満乗できそうでした。

山行開始

ゴンドラの山頂駅、レストランぶなぶな。今回のルートの登山口でもあります。そして今回のルートでは最終トイレはここになります。

スタート地点から振り返れば既に雪化粧の磐梯山がド正面に見える好立地。山体崩壊によるダイナミックな地形が見える裏磐梯。春一番も吹いてだいぶ春めいて来たとはいえ、東北ともなるとさすがにまだまだ雪はたっぷり。

優勝間違いなしの圧倒的な青空。登山口からリフトがもう一本ありますが、この日は運行しておらず、ここから先を進むのは登山者のみでした。

序盤から絶景の裏磐梯

スタート地点から既にここが山頂で良いくらいの眺望。あと800mアップしたらどうなってしまうんだ??

スタート直後はまだゲレンデということもあり、いきなりそれなりの斜度が待ち構えています。スキーで言うと中級コースくらい。そしてこの日の気温はなんと5℃で、一番気温が下がった山頂でもマイナス2℃だったので雪山登山としては相当に暑い日でした。早速半袖になりたいくらい汗だくに。

リフト1本分登ると一旦樹林帯に入り、まだまだ登りが続きます。トレースは踏み固められていたので結局この日はアイゼンの出番はありませんでした。

もはや山ガールという言葉が持つライトなイメージを逸脱し、山ヤと呼ぶべきY嬢は序盤から半袖に。おそらくこの日唯一無二の半袖登山者で、一周回って玄人感を醸し出していました。

樹林帯の終盤になるとさらに眺望が開け、磐梯山とその奥の猪苗代湖が一望できるようになりました。

圧倒的青、ブルー、快晴の空。オリンパスブルーの発色がたまらなく、つくづく登山向きのカメラだと思います(EM-1 mark2)。

先日の黒戸尾根山行にて、甲斐駒ヶ岳山頂から見た北岳と見間違えるほどカッコいい山肌の磐梯山。ちなみに山をカッコいいと表現するのは山ヤだけらしいです。

山頂の向かって左側、カール様にえぐれているのが水蒸気爆発による山体崩壊によって作られた地形で、こちら側を裏磐梯、向かって右側の穏やかな山容が表磐梯と呼ばれます。

猪苗代湖

視界が開けたところで進行方向を見ると山肌に白い粒子状のスノモン達が見え始めます。暖かすぎて心配していたけれどこれは間違いない…会える…

徐々に木々の背が低くなってきます…というよりは雪が深くなってきているようで、視界が広くなってきました。

奥に見えるのが吾妻山。ここ一帯の山域は吾妻連峰と総称され、日本百名山としての吾妻山は諸説ありますが、一般的には最高峰の西吾妻山を指しているようです。

スノモン達が待っている!

こんな好天の登山はそうそう無いので何度も言いますが加工したかと思うくらいの圧倒的青。肉眼でも写真と全く同じ青でした。

視界が開ければ登り終了間近。第一のピークの西大巓(にしだいてん)へ。

西大巓直下の辺りから、スノモンのなりかけor成れの果てが出現し始めます。崩れた様子がなかったので溶けた成れの果てというよりは、スノモンになりきれなかった者達だと思われます。

レンズの曇りに気が付かず、まさしく雪のお化けのような影が写ってしまった1枚。

パラレルのトレースがあるように、山スキーヤーが非常に多かったです。板を背負って登るのではなくスキーを履いて登るガチ勢揃いでした。

余談 スキーのルーツ

スキーは元々、雪山登山の道具として生まれたことをご存知でしょうか。現在でいうバックカントリーのスキーが本来の姿に近いものらしいです。

スキーの元祖は雪との接地面にアザラシの毛皮を貼った、前には滑るが後ろには滑らない=履いたまま登れるスキーであり、接地面積が多いため雪に沈まず雪山を登ることができ、最後は滑って短時間で下山できるという道具でした。

スキーが生まれたことで初めて人類は雪山に登ることができるようになり、実際日本でも戦前の時代にこの”元祖”のスキーが輸入されてきてからあらゆる冬季未登頂の山々が落とされました。それが戦後、庶民に生活の余裕が出始めた頃に、滑ること自体を目的としたスキーが人気を博し、スキーブームが訪れます。この頃はゲレンデスキーと呼ばれ登山道具としてのスキーとはある程度区別されるようになりますが、次第にゲレンデスキーに飽きた人々がゲレンデ以外の山の斜面を自由に滑るようになり、それが現在のバックカントリーに繋がります。

さらに余談 バックカントリーとは

バックカントリーというのは”ゲレンデ以外の山の斜面を自由に滑ること”です。私有地やゲレンデの敷地内を除けば原則として雪山は誰がどこをどのように滑るのも自由であり、それを登山と組み合わせたり組み合わせなかったりして楽しむのがバックカントリーであり、スキー場内の滑走禁止エリアを滑ることはバックカントリーとは言いません。これは”バカッター”や迷惑行為動画と同等の行為です。

この辺りが世間にちゃんと理解されていない上、マスコミもといマスゴミが言葉の定義も調べずに報道するものだから、バックカントリー中の事故=滑走禁止エリアを勝手に滑って事故を起こした、という誤った報道や著名人のコメントが世に流れ、当事者が不当な非難を受けることになります。今シーズンにバックカントリーのメッカ、白馬栂池で起きた事故ではまさにこの誤った報道がなされ、関係者が抗議文を送り訂正されるという出来事がありました。言葉、特に横文字はなんとなくで使いがちなので気をつけたいところです。

西大巓で昼食休憩

つい余談が熱を帯びてしまいました。登頂開始から約2時間ほどで西大巓に到達します。

西吾妻山方面を見るとおびただしい数のスノモン達と西吾妻小屋。白と青の世界に良いアクセントになっている赤い屋根の避難小屋です。

昼食は恒例の師匠メシ。ビーフシチューを温めます。

2022年末の縞枯山にて、マイナス15℃の環境で師匠のバーナーが使用不能になった隣で私のジェットボイルミニモが難なく動作しているのを見て感銘を受けたようで、師匠もついにジェットボイルを導入しました。

これもこのブログで何度か言っていますが、どちらかというとキャンプ用のイメージがあるジェットボイルは実は雪山で頼れる性能の持ち主です(サーモレギュレータ付きのモデル)。

師匠手作りのビーフシチュー。大きめに切られた野菜と甘めのソースが山中のエネルギー補給に絶妙でした。

「山で食べればコンビニおにぎりでもめちゃくちゃ美味しく感じる」「山で食べれば何でも美味い」という言葉に甘んじず、普通に美味いものをさらに山の上で食べるという確固たる信念の元に、我らの師匠はいつもヤマメシとは思えないクオリティの食事を提供してくれます。

私はというと雪山では行動がメインでピークハント登山寄りなので、食事はルーチンでセブンの蒙古タンメンです。味が好きなのはもちろん、香辛料で体温上昇を期待してのチョイスです。さらに装備を削る時はバーナーさえ持たず、最寄りのコンビニでサーモボトルに熱湯を入れ、山中ではそれを注ぐだけにしています。

砂糖に集まる蟻よろしく、スノモンを求めて歩みを進めます。

ついにスノモンに遭遇

お?

おおおおお!!ついに本物のスノモンだ!!!

師匠と共に。背丈は一般男性と同じかさらに高いものが多くて、なんかもう見たことのない景色過ぎて意味不明だった(語彙力)

デフォルメされた恐竜やゴジラにも見えるし猫の立ち姿のようにも見えるし、子宝に恵まれそうな感じにも見える多種多様なスノモン達。

これは恐竜っぽい。

中にはこんなドーナツ状のスノモンも。

絶景はスノモンだけではないのがすごいところ。振り返ると北アルプス並に厚い雪化粧を施した飯豊山。

青と白しかねぇ!

西吾妻山 山頂

西大巓から約1時間、西吾妻山山頂2035mにて、ご当地変態シリーズ裏磐梯編。このブログに何度か登場している変態アミアミことミレーのドライナミックメッシュ。①肌をドライに保つ②空気の層を作り保温にも一役買っている、ということで冬山の必須装備なのはもちろん通年使えるので皆も着ようよ変態アミアミ。

吾妻山とスノモン。

西吾妻山山頂から西大巓方面を望む

山頂到着は13:56で、下山に1時間半を想定し、15:30の最終ゴンドラに乗るためには山頂を14時に発たねばなりません。そしてわずか4分間の滞在で下山し始めます。

西大巓-西吾妻山間は多少の登り返しがあるものの、西大巓から先はずっと下りで岩肌も露出していない雪深い道なので、結果としてはわずか1時間強で登山口まで下りることができました。しかも最後はゲレンデに繋がるので安定の尻シェードが使えます。

車に戻ったのが16時頃で、ここから風呂、食事を経て5時間あまりの帰路につかねばならぬなかなかハード案件。HG氏は郡山から新幹線で帰るというので、グランデコスノーリゾートから郡山まで移動し「並木温泉 ゆの郷」で入浴。銭湯に近いスタイルですが550円で一応サウナ水風呂もついていてなかなか良かったです。

下山後は肉 もうもう亭

夕食は色々案が出たものの最終的には「下山後は肉」という唯一神教的な思想のもと、Y嬢の同期が勧めてくれたという「もうもう亭」に向かいます。郡山駅近くでもあり今回のプラン的にはちょうど良い立地でした。

ブランド牛的な高級店のようですがかなり人気らしく、「基本は予約してくれよな、飛び入りは案内がかなり遅くなるぜ」的な案内書きがありましたが運良くすんなり入ることができました。

焼き肉の最高のパートナーは白米

最近、飲む時でも白米は必ず頼むようにしています。焼き肉×ビールは言うまでもなく最高、肉×日本酒は特に辛口のそれが肉の脂と程よく調和し悦に浸らせてくれるので最高です。

しかし、原点にして頂点は肉×米であると言いたい。それも白い米白米white rice。一生で食事ができる回数は決まっています。しかもボリュームを許容できる年齢や身体のことを気にせず好きなだけ食べられるタイミングはさらに限られています。基本のようで大人になると意外と当たり前じゃない肉×米。特に下山後というスパイス。酒を飲むために生きていると言っても過言ではない私でも肉を焼いたら米を選ぶようになりました。今、焼き肉×白米を勧めていきたい。

高級店とはいえ5人で1人5000円程度と食べ放題の高いやつ+αくらいで収まり、とんでもない満足感でした。肉は当然極上で、噛んだ瞬間とろけてなくなる舌が幸せなやつ。

そして師匠も言っていましたが、その手の”良い肉”は”量”が入りません。脂のせいなのか満足度が違うからなのか、少しの量で満足できてしまうので結果的には食べ放題の満足と公開の分水嶺を超えてしまうアレがなく、より幸せになれると思います。

そんなこんなで食事を終えて19時半頃HG氏を郡山で下ろした後はひたすら南下。

道の駅ごか到着は22時半頃。なんとか日付が変わる前に帰りたい、そんな思いでベタ踏み夜の高速道路。0時過ぎに千葉組も山梨組も帰還し弾丸東北登山紀行が幕を閉じました。

 

悲しいことに地球温暖化の影響により「消えゆくスノーモンスター」なんて言葉を見かけます。いつまでも見られるか分からない、愛らしい自然の神秘スノーモンスター。自分の魂に問いかけましょう。スノーモンスターより優先する価値のある仕事がありますか?と。見られるうちに見ておきましょう。

 

〜Fin〜