山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

温泉旅行と登山の組み合わせは最高だぜという話。厳冬期那須岳 日帰り登山2022.2【遭難寸前】

温泉旅行✕地方登山は最高だぜ

いつもの登山仲間との地方遠征登山シリーズです。遠征といえば天候に導かれるように東北に行きがちな我々ですが、今回はギリギリ関東圏内、過去に遭難事故も起きている厳冬期の那須岳です。栃木北部の日本百名山のひとつです。

ネタバレですが遭難しかけて山頂目前で撤退するという初めての経験になりました。我々は山で料理するために生まれてきた男、アクティブで企画力のある師匠というリーダーがいるので、せっかく合わせた休みは天気などで無下にはしません。日本全国天気が良いところに登りに行くスタイルです。「前乗りして現地で仮眠を取って当日早くから登って帰る」から始まりいつしか「現地の旅館に前泊して翌日登って帰る」スタイルが定着しつつあります。

この登山スタイルは非常におすすめです。これならば忙しくて週末完全に2日間休めないとしても、土曜日昼過ぎ場合によっては夕方の集合になっても実現可能です。日曜だけ休みがあれば、しっかり睡眠が取れて旅行も味わえてQOL&満足度が非常に高くなるのでおすすめです。

行程

土曜日に栃木の旅館に前泊して日曜日に那須岳に登って帰ってくる計画です。パーティはいつものように各地に散らばった面々です。山梨組の私と師匠にKW氏とY嬢、加えて東京神奈川組のHG氏とAI氏の計6名です。山梨組は朝仕事がある人もいたので土曜日の昼頃に出発しました。東京神奈川組は昼間に仕事があるというので、終わり次第出てきてもらい現地で合流しました。

day1 くつろぎ宿 新滝で全員合流

day2 那須岳登山→帰路

day1 完全に旅行

那須岳は基本的にはそれほどしんどい山ではないので完全に旅行気分の初日です。山梨組の我々はご当地グルメを堪能すべく佐野ラーメン「大和」を目指します。土曜ということもあり相当並んでいました。

佐野ラーメン 大和

こちらが1時間ほど待ってありついた佐野ラーメンです。青竹を使って打つ平麺が特徴な北関東のご当地ラーメンです。完全な私見ですがご当地系は当たりを引いた経験が少ないので一度経験すれば終わりがちですが、佐野ラーメンは初めてリピートしたいと思いました。めっっっっちゃくちゃ美味しかったです。

栃木といえばいちご

ラーメンの待ち時間に、近くの「道の駅みかも」に立ち寄っていちごを購入しました。「とちおとめ」しか知りませんでしたが、非常にたくさんの品種があります。ちなみに我々のイチオシは「とちあいか」です。

くつろぎ宿 新滝

のんびり昼食を済ませて北上し、本日のお宿は「くつろぎ宿 新滝」です。山奥の渓流沿いに位置する風格のある旅館です。

www.shintaki.kutsurogijuku.jp

ラウンジにはウェルカムドリンクコーナー。まさかの日本酒が置かれていて最高です。

ラウンジの雰囲気がとにかく良くて優勝です。照明が控えめなのも渋くて最高です。

客室です。例のスペースこと広縁に相当する一角と窓の外の雪景色がたまりません。

都会組が合流する頃にはすっかり日が暮れていました。目の前の通りにはスマートボールがあって温泉街の情緒があります。

豪華会席料理!もはや登山しに来たのかただの旅行に来たのかわからなくなってきました。館内の売店の品揃え豊富な日本酒に我慢ならず晩酌もしました。飲まないのは失礼というもの。

day2 那須岳 登山開始

そして翌朝、登山開始です。ルートは大丸駐車場から那須ロープウェイ山麓駅を超えて登るベーシックなルートです。ちなみに那須岳とは茶臼岳のことを指していて、この辺りの山々を那須連山と呼んでいます。

厳冬期の茶臼岳山頂の往復コースタイムは3時間半。それだけ見ればお手軽登山ですが那須岳は地形の関係で北風が集まりやすい位置にあるため強風の山として知られています。しばしば低体温症で行動不能になり救助要請があったり、2017年には雪崩による大規模山岳事故も発生していたり、山は標高やコースタイムだけで判断してはいけないという最たる例です。

積雪量はかなり多い

最初は雪に埋まった道路を突っ切るように進んでいきます。雪の量はかなり多く、トレースがなければ完全に膝ラッセルです。

ロープウェイ山麓駅を過ぎると登山道が近づいてきます。

道路標識がこの通り。どんだけ雪あるんだ。

那須連山の一角。空は晴れるのかダメなのか微妙なところです。

茶臼岳山頂がこの時点ではまだ見えていました。めちゃくちゃに寒いですが気象条件はまだ普通の雪山登山の範疇でした。

少しずつ視界が悪くなり、天候が怪しくなってきました。

登山道の雪はまだ少なく、とりあえず山頂直下の峰の茶屋跡避難小屋まで進みます。

茶屋跡避難小屋

小屋に着く頃には会話も聞こえなくなるくらいの強風が吹き荒れていて、文字通りの避難状態です。今度は蒸気でお互いの顔も見えなりました。小屋は広くて先客に2名のパーティ、あとから2名のパーティがやってきて計10名滞在していましたが、それでも各々が昼食を摂るのには十分な空間でした。

強風の中、山頂へ向かう

避難小屋から山頂まではほんのわずかです。斜度もきつくなければ標高差も100m程度。眺望がなくても山頂を踏むだけでも行こうと出発しました。

しかし登り始めるにつれ急に視界が悪くなりました。この写真ではまだ遠くの登山者が見えるくらいですが…

強風で雪が巻き上げられるのに加え、雪が降り始めてきました。

頂上直下 無念の撤退

視界はほぼほぼホワイトアウトで、いよいよ方向感覚が失われ始めて進むべき方向も目視できない上に雪でトレースが消えてしまいました。これは昔谷川岳で味わったヤバいパターンです。知らず知らず少しずつコースアウトしていたようで、急に足が沈むことが増え始めました。地図上では山頂まで本当にあと数分といったところでしたが、遭難や滑落のリスクが極めて高いと判断し、頂上直下無念の撤退を決意しました。

なんとか歩いてきた道のトレースまでは消えていなかったので無事に戻ってくることができました。わずかながらでも標高が下がるにつれて視界は少し回復しました。

無念で倒れ込むHG氏とY嬢。

最初から天気が良かったわけではありませんが、それでも予報は悪くないし山頂が見えるくらいの状態ではあったにも関わらず、時間にして1時間もかからず天気が急変しました。

道が平坦で難易度が高い場所でなかったから良かったものの、これがガレ場だったり両側が切れ落ちているような場所だったら行動不能になっていました。振り返ると避難小屋到着時点で先に進まず撤退するのが正しい判断だったのかもしれません。

つくづく雪山の難しさと標高という数字で山を判断してはいけないことを実感しました。結果的には今回は栃木グルメ&温泉旅行でした。この前泊を挟む登山スタイルの良いところは登山が残念な結果になっても旅行したと思えば無駄にならないところです。

登山は残念な結果でしたが、行ける場所も広がる旅行×登山スタイル、おすすめです。