山と自転車

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【日本酒】何度行っても松本に行ったらどうしても厨十兵衛に行ってしまうという話

魅惑の厨十兵衛

もう何度通ったか分からない、松本の厨十兵衛です。ここでこれまで何Lの日本酒を飲んだだろうというレベル。もはや身体の一部と言っても過言ではない厨十兵衛。松本に住んでいるわけでもなければ近くに住んだこともありません。一番近づいても100kmまでだというのに気付いたら一番通っている飲み屋になっていました。

そんな厨十兵衛とは、長野県松本市の中心部、観光で有名な縄手通りのすぐ近くにひっそりと佇む、癖の強い店主が営む飲み屋です。

日本酒に一番大切な水、そして米を育む豊かな土壌に恵まれた長野県は一生かけても堪能し尽くせないくらい素晴らしい日本酒達の宝庫です。雪どけ水が北アルプスの力で酒になり梓川に運ばれ、蛇口をひねると日本酒が出てくるというこの松本には、日本酒好きを唸らせるたくさんの酒造があってたくさんの日本酒居酒屋があるのですが、他にも行ってみたいお店がいくつもあるのですが、何度来ても松本に泊まる時には厨十兵衛に来てしまうという話です

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過去記事

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厨十兵衛すぐ近くの日本酒専門居酒屋「深酒」も行ってみたい、行ってみたいとずっっっと思っているのに叶いません。十兵衛に吸い寄せられてしまいます。

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深酒はかつて松本に暮らし酒造でがっつり働いていた友人MR氏も一押しするお店です。しかし私は松本に2泊しないときっと行けません。

神様のカルテと厨十兵衛

厨十兵衛は松本が舞台の若手内科医の奮闘を描く小説「神様のカルテ」の中に登場する、主人公栗原一止の行きつけの飲み屋「九兵衛」のモデルになったお店でもあります。店内には同作のポスターが飾られています。聖地巡礼と思っていたのは最初に来た時までで、今ではシンプルに美味しい料理とともに日本酒を静かに気兼ねなく好きなだけ味わいたくて通っています。聖地巡礼という認識は薄まってしまいましたが、いつかは栗原一止先生の指定席、手前の右端の席に座ってみたいです。

そしてまた厨十兵衛に吸い込まれる

毎年行くぞと決めているわけではありませんが、夏が来るとなんとなく行かないといけない気がして欠かさず登っている乗鞍へ、今年は有休を使って前泊して松本から自走で行きました。明日は朝早いぞと思いつつやはり松本泊の夜はここに来ていました。

松本駅から徒歩15分ほど、縄手通り・四柱神社から数分歩くと厨十兵衛があります。開店は17時。以前は18時でしたが時期によって違うのかそもそも営業時間が変わったのかはよく分かりません。「臨時休業って張られていたら深酒に行けるのに」って思っていたのに営業中の札を見て心がぴょんぴょんしました。大好きな松本に今年も来られてありがとうございますって四柱神社でお参りしたおかげかな。

至福のひとり時間

十兵衛の店内は薄暗くキンキンに冷えていて、一瞬で外のうだるような暑さと隔絶され、異世界に迷い込んだような気分です。十兵衛の暖簾をくぐって外の世界と切り離されるこの瞬間がたまらなく大好きなんだなぁって今更気づきました。

会計は現金のみなのは承知しているので必ずコンビニで諭吉2枚ほど引き出してから十兵衛に入ります。日本酒に浸った脳が判断力を失っても2諭吉あれば大丈夫です。ちなみに店内の張り紙は「一杯ごとに器を変えて欲しければそういう店に行け」と書かれていた頃に比べると非常にマイルドな文面になっていました。

店内は厨房を囲んだL字型のカウンター席のみです。常連客はより入り口側の席に座っているイメージがあります。いつ行っても常連が数名いますが、だからといって排他的な雰囲気は感じたことがないのがありがたいところです。店主も常連客たちも他所者に対して良い意味であまり感心が無いのだと思います。

常連客は顔見知り同士が多いのか会話を楽しんでいますが、一人客も多いのでコミュ障の私でも何とも思わず入れるし、店主も含め新規客に絡んでいくような雰囲気はないので安心してひとり時間を楽しむことができます

初めて頼んだビール

厨十兵衛、私が足繁く通ってしまうのは日本酒だけじゃなくて料理があんまりにも旨くて夢に出るくらいだから。お通しで既にこんな旨そうな料理が出てきます。サイコー。お通しが旨い酒場は良い酒場、良い酒場かどうかはお通しである程度判断できるというもの。ちなみにこの写真は私にとっては初めての出来事を捉えた写真です。もっと古くから通っている人にとっても衝撃の写真ではないでしょうか。

なぜならそこにビールがあるから。私にこのお店を教えてくれた友人が通っていた頃は日本酒以外置いていなかったそうですし、実際に私が初めて訪ねた4年前の時点でも同様で、店内の張り紙にも「日本酒以外置いてないから他のものが飲みたければそういう店に行け」という内容が記されていました。尖りまくりです。入り口に「日本酒3合以上飲めない人お断り」という有名な張り紙があった頃の話です。

それが今回、下諏訪のムギクラブルーイングというブルワリーのビールが推されていたので遂に頼んでみました。(ただしビールが置かれること自体は初めてというわけではありません。コロナ禍になってからコロナビールが置かれるという尖りエピソードを私は知っています

極上の料理たち

まずは落としに続いてネギたらこ。ちょっとつまむだけで最高のアテになります。このひと盛で四合瓶は空けてしまいそうです。

せせり炒め。日本酒には淡白な鶏肉が合うと思っている私ですが甘辛い味付けもよく合うということを知りました。というか日本酒って何にでも合うんだよな

続いて刺盛りと酒盗。日本酒と刺し身はCoffee and Cigarettesの和訳です。切っても切れない最高峰のペアリング。

酒盗は名前が全てを表している説明不要のアテ。酒を盗むってなんて素敵な名前なのかしら。

長野の銘酒たち

今回は久々の松本泊なので長野の日本酒に限定することにしました。また翌日に過酷な乗鞍ヒルクライムが控えているのでいつものように飲めるだけ飲むわけにはいかず、3杯までにしておきました。スーパー理性人です。

まずは何と言っても夜明け前。聖地巡礼の気はもはやないと言いながらも神様のカルテにゆかりのあるこの銘柄をいつも最初に頼みます。だって美味しいんだもん。

続いて信州亀齢。山恵錦というのは文字通り、山の恩恵に与るという意味が込められた長野独自の酒造米で、鼻を抜ける香りが印象的でした。

最後は帰山。

蛇の目が見えない薄濁の帰山は初めて飲む日本酒でした。そろそろ細かい味わいが分からなくなってくる頃でしたが、酸味を思い切って出した独特の味わいという評判通り、舌への刺激が心地良くて美味でした。

 

癖の強い店と冒頭で書いたのは初めて訪れた時の印象と前評判を元にしていますが、ずいぶんと雰囲気が変わったと思います。あの尖った文言や店主の超然とした振る舞いがマイルドになったのは少し寂しさはあるけれど、良い方に変わる分には大歓迎です。ちゃんと時代にコミットしています。松本は登山に乗鞍ヒルクライムに年に何度か訪れますが、泊まれるチャンスは少ないのできっと私は毎度毎度この厨十兵衛に吸い寄せられてしまうんだと思います。厨十兵衛よ永遠に。