山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【小径車は増えるモノ】気が付いたらTyrell FSXを注文していた話。

Tyrell FSXを試乗したらポケットに注文書が入っていたんだが?

こんにちは、早速ですがこれは今年のGWに起こった不思議な出来事をまとめた記事です。

ことの始まりは先日のAACR。前日受付をしに会場に行くとうどん県メイドのミニベロ、Tyrellのブースがありました。そこでFSXに試乗させてもらったあと、プロダクトマネージャーの渋谷さんから直々にメーカーコンセプトを熱く語っていただくというイベントが発生したのです。

Tyrellブース@桜のAACR2024
Tyrellのプロダクトマネージャー、渋谷さん「ミニベロはあまり走らない、走りは妥協しなきゃならない、というイメージがあると思うんですけど、「ちゃんと走るミニベロ」というのが我々の一番大事にしているところなんです。中でも特に拘っているのは後輪が正確に前輪を前に押す、というところです。実は前輪と後輪はよほど高精度なフレームでないと完全に一直線上にならなくて、前輪が左右にわずかに振られることになりロスが生じるんですよね。Tyrellはそこの精度にとにかく拘っているので、ペダルを回すとダイレクトに前に進む、それこそロードバイクと遜色ない走りができる自転車です。まあ正直ものすごく手間がかかるので割が合わない部分もあったりしますが、走らない自転車は作りたくないので、自分たちでとことん拘って作れるというのが強みですね。」

www.mount-road.com

Tyrellとの出会い

実は3年くらい前に横浜のグリーンサイクルステーションでミニベロに試乗しまくった時にもTyrell(当時は車種を認識していませんでしたが写真を振り返るとFXと思われる)に試乗していました。

www.mount-road.com

この時7種類くらいのミニベロに乗らせてもらいましたが、一番強く印象に残ったのが当時うどん県メイドの自転車ということしか知らなかったTyrellでした。ペダルを踏み込むとその全てが前に進む推進力に変換されるカッチリ感。明らかな剛性の高さを感じられる自転車で、踏んだ瞬間飛び出すような優れた反応性とミニベロ離れした巡航性能の高さから、第一に感じた印象は「これは小径のロードバイクだ」。

AACRで渋谷さんから聞いたコンセプトはまさに私が試乗して感じた印象そのものでした。そして何より印象に残ったのは「割が合わなくても、走らない自転車は作りたくない」というシンプルな言葉でした。言葉にするのは簡単ですが、趣味で作る自分のモノではなく世に送り出すプロダクトでこれを実行するのはとんでもないことです。メーカーとして非常に好感を持ちました。

再びの試乗へ

GWの後半戦、暇を持て余していたのでサイクリングがてら、どんなラインナップがあるのかな?とチラ見しにグリーンサイクルステーションを訪ねました。

私「すみません、Tyrellの試j」

平田さん「どうぞどうぞ」

「いま他に待ってる人もいないんで40分くらい乗ってきてもらっていいですよ」

「谷戸坂ってロード乗りの人もひいひい言う坂も近くにあるんで試してみてください」

「ただ事故だけは自己責任になっちゃうから気をつけてください。自転車はどうなってもいいけど身体の方はね、気をつけてください」

あれデジャブ…相変わらずの超フリーダムスタイル。こんな好き勝手乗らせてくれるお店ってないと思います。しかも自転車はどうなってもいいなんて言う始末。何ならパワーアップしている。グリーンサイクルステーションの好きなところってこういうところなんだよなぁ…。

受注生産、フラグシップのクロモリフレームのFCXと折り畳みモデルの中でTyrell最軽量最速を謳うFSXに試乗させてもらい、中華街近辺の大通りと海の見える丘公園に続く最大斜度13%の谷戸坂でヒルクライムまでしてきました。

Tyrell FCX せとしるべルビーレッド

FCX, FSX、いずれも改めてミニベロ離れした安定感と剛性を感じます。特に坂のハイケイデンスクライムやダンシングで力が逃げる感じが全くありません。結構複雑な折りたたみ機構=可動部が多いはずなのに不思議でなりません。また平地を走る感覚は小回りが効くロードバイクという感じです。もちろん速度域はフルサイズのロードバイクと同じ土俵にはならないとは思いますが、決して短距離の街乗りバイクには収まらないポテンシャルを感じます。いいなぁこれ…

今買う理由ができてしまった

試乗だけ…試乗だけ……と思っていました。もちろん。ですがせっかく来たのだからシミュレーションくらいはしておくべきです。マネーとか納期とか知っておいて損はありませんからね。

平田さん「おかえりなさい。どうでした?」

私「サイコーでした…見た目は細身なFCXが好きですが乗り心地はFSXの方が好きでした」

平田さん「ロード乗る方はカチッとしたのを好まれる方が多いですね。試乗車はアルテグラなのも多少は影響してるかもしれません」

私「ホームページには105組しかなかったんですが、アルテグラ組だとどのくらいです?」

平田さん「あー、今メーカーの方で安定供給がされないってことでアルテグラはラインナップから外れたんですよね」

私「あっ、そうなんでs」

平田さん「あっ、待てよ」

「連休前にメーカーの方からアルテグラ少し残ってるって連絡が入ってた気がするんですよね」

「…やっぱり、全国で2セットだけ残ってるみたいです。連休前の情報なのでもしかしたらもう売れちゃってるかもしれませんが、ある程度前向きならメーカーに確認してみましょうか?」

私「お、お願いします…!」

そして連休明け…

平田さん「残り1セットだけ、在庫があるそうですがどうしますか?」

私「押さえてください!!!!!」

 

こうして冒頭に至りました♡

手持ちの自転車との棲み分け

現在所有しているクロモリディスクロードのtada車とブロンプトン。がっつり走りたい時はロード、それ以外の短距離ライドや日常の脚はブロンプトン、という役割分担ですが、こうして運用していくと「それ以外」の部分の幅が広いことに気付きました。

つまり、ウェアを着てロードでガッツリ走るほどの気分/距離/場所じゃない。けれども普段着でブロンプトンに乗って走るにしては運動量が多い、または距離が遠い、という状況。具体的には途中の観光や買い物の占めるウェイトがそれなりに多い30km以上70km未満くらいのライドの場合。

こういう時にビンディングなしあるいはSPDで、普段着+αくらいで気軽に乗れてそこそこ良く走ってくれて輪行もしやすい自転車があるといいなあとずっと思っていました。例えば朝寝坊して昼前くらいから行動し始める休日、自宅の立川から中央線沿線の街に遊びに行ったり、横浜みなとみらいまで脚を伸ばして現地で遊んで帰りは電車で帰ってきたい、そういうシチュエーションです。ロードバイクとブロンプトンの中間を幅広く埋めてくれる存在。それはミニベロロードがドンピシャリ。

FCXとFSX

差額というのは元の金額によってその重みが変わってきます。1万円と2万円の差額1万円は非常に大きいですが、例えば49万円と50万円の差はほぼ誤差です。つまりTyrellをアルテグラ組で買おうとする時点でFCXだろうがFSXだろうがそれは誤差…!!…すみませんさっきの金額は例え話で、FCXとFSXの差額は10諭吉くらいあるので自己暗示をかけても全然誤差には思えません…!!

FCXとFSXの違いはクロモリかアルミフレームか、そしてホイールサイズ(FCXは20インチ451に対してFSXは406)くらいのものです。以前は折りたたみ機構に若干の違いがありましたが、現行モデルでは両者とも完全に同じになったそうです。

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↑の記事で指摘されている折り畳みに一手間増えた、というFCXの機構が現行のFSXにも採用されたとのことです。

クロモリフレームの細身なデザイン、より大きいホイールによる巡航性能の向上は魅力的でしたが、FSXのアルミフレームの高剛性のカチッとした走りと、せっかくの折りたたみ自転車なので可能な限り軽量で輪行が楽になることを優先しました。同じコンポで700gほどの差があります。またtada車でクロモリバイクに既に乗っているためクロモリに拘る必要もなく、より高い走行性能が欲しい時はロードに乗れば良いという割り切りもできるので、FSXを選択しました。

FSXのオーダーについて

色をどうするか問題

デフォルトのカラーはメーカーのこだわりがたっぷり詰まった「せとしるべルビーレッド」と「匠瀬戸内ブルー」の2色。これらであればメーカー在庫があるため10日ほどで納車できるだろうとのこと。

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私は赤が好きなこともあり、はじめMAZDA車を彷彿とさせる美しいせとしるべルビーレッドを考えていたのですが、以前乗っていたTREK DOMANEも似た色だったので正直ちょっと飽きた感がありました。そんな中インスタで見漁っていたところで見つけたこのビアンキみたいなチェレステカラー。

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Tyrellはうどん県生まれの自転車、つまり瀬戸内海生まれということ。自分の中ではしまなみ海道で見た海の色や空の色をイメージしたかったので、カラーオーダーすることにしました。上記のカラーは過去のモデルの限定色なので現行のラインナップにはありませんが、カラーチャートでよりイメージに近そうな色を見つけたのでそちらでオーダーすることにしました。もちろんリアを引き締める前後の塗り分けも課金しました(+3諭吉ほど)。ここまで来たら多少の差額は些末な問題です。(思考を一定のところで止めている)

パーツアセンブル

アルテグラ組なのでいじるところはないだろう…とはいかないのが悲しきロード乗りのサガ。まずハンドルはDOMANE号から取り外した手持ちのカーボンハンドル、TNI Pelotonを組み込みます。これで標準仕様から130gほど軽量化になります。あと考えているのはサドルとシートポストの交換です。特にサドルはtada車のfabric Scoop Pro shallowがすこぶる気に入っているのでぜひとも組み込みたいところ。

FSXの標準装備はシートポスト315g(Tyrell Alloy, 31.6x400mm,セットバック20mm)+サドル335g(Tyrell VL-3135)=650gです。シートポストはtada車を組む時にThomsonと迷ったkcnc Ti Pro Liteが候補です。これを交換すると…fabric Scoop Pro198g+kcnc Ti Pro Lite170g=368gとその差282gと大幅な軽量化になります。ただしこれをするにはカーボンレール用のヤグラに交換する必要もありトータル4諭吉ほど飛んでいくので冬のボーナスくらいまではステイかな…。

一般にまず手を加える場所はホイールですが、20インチ406のホイールなんて作っているメーカーがほぼ無い(amazonにはたくさんありますがBMX用だったり走行性能を向上させてくれるとは到底思えない謎メーカーの格安品のみ)ので、ここを考えなくて良いのはむしろありがたくさえあります。

自転車も靴と同じさ

ところで「何で自転車何台も持ってるの?」「自転車もう持ってるよね?」という不思議な質問をされることがあります。主に非自転車界隈の友人から、そして後者は呆れた目をした細君からです。運動時にスニーカー、スーツに革靴と足元を使い分けるように、自転車も様々な個性を持っている以上用途によって使い分けるのが当然というものです。むしろ「え、じゃあ君は全てのシーンでスニーカーしか履かないのかい?」と問いたい。むしろまだオフロード要員が足りていないくらいです。(SURLYのリジッドフォークMTBかゴリゴリのグラベルロードをいつか迎える腹づもりなのはクラスの皆には内緒だよ?)

折り畳み自転車は物理法則を超える-増えても増えない不思議-

また、自転車が増えることによる物理的な側面、保管場所問題もありますがこれこそ折り畳み自転車の独壇場であります。ミニベロだから車体がそもそも小さい(ロードバイクに対して0.7台分ほど)に加え、常に折り畳んだ状態で保管ができる(ロードバイクに対して0.5台かそれ以下)ため実質的には0.7×0.5=0.35台分。つまり折り畳み自転車は3台で初めて1台になるわけです。CBNブログのなどかずさんも「畳んだ折り畳み自転車は1台に数えない!」という至言を残されています。

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(まあ、Tyrellはたぶん輪行の時以外折り畳まなくなりそうだけど…)

まとめ:買うと決めたら先延ばす意味はないんだ!

こんな欲望に忠実に人生を設計している私ですが、さすがにAACRの時点ではまさか1ヶ月後に注文しているとは思いませんでした。しかしいつか買うことはあの日に確定したように思います。ロードとブロンプトンの幅広い間を埋める存在になるということに気づいてしまったので、マイ人生に必要だと判断してしまったのです。結果的にはアルテグラがラスト1組残っていたことがきっかけでこのタイミングになりましたが、そうでなくとも買うと決まっているものならば先延ばしをする意味は全くありません。

1秒でも早く手にしてたくさん使う方が使用期間が増えて日割り計算で割安になります。また、いくら若くとも未来はどうなっているか分かりません。自分の身体がいつまで好きに使えるかも分かりません。お金はあとからその分働いてなんとかできても、若い現在の時間はあとから取り返すことはできません。何かを決めたら思い立ったら今が一番若いのです。

だからこれは浪費ではなくて、たった一つの冴えたやり方。