初心者2人としまなみ海道へ
両親が念願のブロンプトンを購入したというので、納車記念で親子3人でしまなみ海道2泊3日のブロンプトンツーリングをしてきました。両親ともに自転車初心者で体力は一般的な中高年のそれなので、しまなみ海道を2日かけて走る計画にしました。
ざっくり行程
スタート地点は新幹線でのアクセスが容易な尾道です。
day1 東京→尾道 尾道→しまなみ海道→大三島WAKKA
day2 大三島WAKKA→大山祗神社→しまなみ海道→今治「ホテル菊水」
day3 今治→因島(高速バス「しまなみライナー」)→尾道→帰路
「いつか」が来るとは限らないから
今回の旅を計画したプロローグ的なやつです。読み飛ばしてください。
今回の旅は、父が10年来恋い焦がれた「いつか」欲しいブロンプトンを2台(父と母の分)、大人買いしたことに始まります。
それは父が職場の同世代の同僚を突然亡くしたことがきっかけでした。その同僚は定年後の夢をよく語っていたそうで、彼の突然の死に父は「いつか」が訪れるとは限らないと大変ショックを受けたそうです。そこでやりたいことは早くやらねばならぬと奮起してブロンプトン購入に至ったそうな。
(私が社会人になってすぐブロンプトンを買って見せびらかしていたのも大いに作用したようだけれど)
そんな父がよく口にしていたもう一つの「いつか」はしまなみ海道を自転車で走るということでした。そういえば私がしまなみ海道を知ったのは中学生の頃に父から聞いたのがきっかけだったような気がします。私も時間は作るものであるという師匠譲りの信念を持っていますので「いつか」は待つものではなく作るものだと考えています。
「ブロンプトンを買ったことだしいつか一緒にしまなみ海道に行きたいね」という「いつか」を強引に作り出したのが今回の旅です。
遠いけれど実は簡単に行けるしまなみ海道
両親はしまなみ海道に対して「遠くてどうやって行くのか分からない」「輪行旅ってどうやるのか分からない」と非常にハードルが高いと感じていたようです。私自身友人と初めてしまなみ海道を訪れるまでは同じように思っていたので気持ちはよく分かりますが、しまなみ海道を走るためにすべきことは
「自転車を輪行袋に入れる」
「新幹線に乗って在来線に1回乗り換えて尾道駅で降りる」
「尾道駅の目の前の渡し船に乗って向島に渡る」
以上です。あとはペダルを回せば勝手に始まります。そう、実は何も難しいことなんてなくて、煩雑さだけで言えば都心で電車を使って目的の駅まで移動する方がよっぽど難しいくらいです。
体力に自信が無くてもきっと大丈夫
両親は冒頭で触れた通り運動習慣が全くなく、休日もアクティブに動き回るより家で怠惰を貪ることを良しとする類の一般的な中高年です。そんな初心者&低体力な2人でもブロンプトンで2泊3日、しまなみ海道を満喫し走り切ることができたので、一般的な体力がある人ならば初心者でも楽しみながら走り切ることができます。前置きが長くなりました。ここからが旅行記になります。
いざ、しまなみ海道へ
初日は町田の自宅を5時に発ち、6:51新横浜発の新幹線で広島の福山駅まで移動し、そこから山陽本線に乗り換えて尾道駅に10:30頃到着しました。乗り換えが面倒であれば新尾道で下車して自走しても良いと思いますが、初めてならば尾道駅に降り立つ方がしまなみにやって来た感が強いのでおすすめです。
ちなみに今回初導入したブロンプトンの輪行袋はTwitterで有名なPEKOさんのお手製輪行袋です。非常に軽量コンパクトでブロンプトンのフレーム内に収納できる超優れもの。
https://twitter.com/ab_peko?s=20&t=jRnbAfTpVK-xL1vbt5E6UQ
新幹線で新横浜〜福山へ
新幹線はもちろん特大荷物スペースを予約しました。ブロンプトンなら3台あってもこの通りで、5台は余裕で置けそうでした。さらに上のテーブルを倒し2泊3日の荷物が入ったフロントバッグx3を置いても余裕があったので、改めてブロンプトンのコンパクトさに感動しました。
新横浜→福山は3時間ほどで、そこから山陽本線で4駅移動すると尾道駅です。このレトロな車両と車窓を流れる海沿いの町並みに旅情を掻き立てられます。
旅の始まり尾道駅
10:34 JR尾道駅に到着しました。1年前は初めての尾道どころか初めての広島上陸だったのにこの1年で3回も来てしまいました。前述の通りしまなみ海道は憧れ続けて勝手にハードル高く感じていましたが実際には「しまなみ海道は新幹線にさえ乗れればあっけなく来られる」ということを知ってしまってからはタガが外れて、時間さえ取れればすぐ来るようになったので人生は本当にどうなるか分からないなぁと思います。
ブロンプトン3台でいざ出陣の図。私はしまなみ3度目とはいってもブロンプトンで走るのは初めてなのでワクワクが止まりません。
向島渡し船
渡し船に乗って眺める坂の町、尾道の町並みです。尾道は初めて来たその瞬間に大好きになった街で、人生嫌になったら仕事を辞めてとりあえず尾道に来てみようかなと思っています。
しまなみ海道スタート
10日前は3日間雨の最悪の予報で生きた心地がしませんでしたが、直前に奇跡的に3日間とも晴れ予報に変わり大勝利です。この空と瀬戸内海の穏やかな水面を眺めるだけでもう全てが何でも良いやと思えてきます。
最初の橋、因島大橋へ
因島大橋を眺めます。ここまで平均15km/hrくらいのポタリング。初心者2人もまだまだ元気です。
橋の前は平均3%の緩やかなスロープになっています。ロード乗りとしては坂とは呼ばないかもしれませんが、島ごとに必ず現れるので後半はジワジワ効いてきます。
私「橋は高台だから手前で必ず登りになるけど斜度はゆr」
父「大丈夫、全部押して歩くから(ドヤ」
自転車神社こと大山神社
因島では自転車神社こと大山神社を訪れるため必ずブルーラインを離脱します。いつ行っても巫女さんがやたらと親切です。写真を撮ってもらいました。
しまなみジャージとろんぐらいだぁす!コーナー(このジャージは両方とも気づいたら家に居た)。
この神社、グラベルロードを貸し出して島内のグラベルライドを斡旋していて訳がわからない(褒め)。
レモンの島 生口島
大山神社からはまた5kmほど戻り、ブルーラインに復帰します。往復10km、寄り道する価値は十分です。
ドルチェ瀬戸田本店
レモンの島、生口島まで来るとこれまでと雰囲気が少し変わってきます。これまでは港町だったのが、島の中に来たような感じがします。ドルチェ瀬戸田本店で休憩します。
母が走りきれるか心配していた父でしたが、意外にも飄々とペダルを回す母を横目に、当の本人は足を攣ってストップアンドゴーを繰り返していました。やはり大抵の場面において女性は男性よりタフなことが多いと思います。
父の敗因は補給でした。時は9月中旬、気温は34度の猛暑の中なので私でも補給を間違えると危険な環境ですが、彼は嗜好の問題で真水ばかり飲んでいました。甘みがあるスポーツ飲料を嫌うおじさんは淘汰されるのです。
※脱水は絶対的な水分量よりもナトリウムを始めとした電解質異常が本体なので純粋な水のみの補給は改善に繋がりません。
ろんぐらいだぁす!でもドルチェは休憩ポイントとして出てきたポイントです。サイン色紙は自走で尾道に現れる豪脚のロングライダー、高宮紗希嬢のサイン色紙。
しおまち商店街
生口島に来たら立ち寄るべきしおまち商店街。
ここのコロッケは漫画にも登場し数々のしまなみ海道特集でも必ず現れる超有名店。
店のおばあちゃん「コロッケ3つで300万円ね〜」も含めて名物です。
住之江旅館
しおまち商店街を抜けると住之江旅館が現れます。ろんぐらいだぁす!で宿泊地として登場してたしまなみ海道の中でも屈指の有名宿です。海を望める大浴場もあるそうです。
一度泊まってみたいと思っていたので今回とても迷いましたが、今回は多々羅大橋を初日クライマックスに持ってきたかったので見送ることにしました。
「住之江旅館に泊まってみたい」それだけでまたしまなみを訪れる理由ができたので良しとします。
瀬戸田サンセットビーチでCHILL OUT
想定より早く走れていて時間の余裕があったので、瀬戸田サンセットビーチで休憩します。
都会でも緑の中でも海辺でも、どこに居ても絵になるブロンプトン。
「せとうちの海辺でチェアリングしたい」そのためだけに、バッグの容量の30%ほどを犠牲に持ってきたヘリノックスチェアワンです。一人ならこれでビール飲んで3時間くらい過ごしてると思います。
陸地に囲まれているせいか、瀬戸内海は本当に穏やかで、時間の流れ方がぜんぜん違います。
S字カーブと海。しまなみ海道を走ると20分に1回くらいこんな景色が見られます。ちなみに右側の歩道に座っているのは脚が攣って詰んでいる父の姿です。
初日クライマックス 多々羅大橋
いよいよ初日クライマックス、多々羅大橋。
レモンのオブジェ。生口島はよく見ると色んな所にこの子がいます。
多々羅大橋スロープ。「サーキットみたい」とはしゃぐ母の横に父はもう居ません。
スロープ内にどうやらイノシシくらいは出てくるらしい?
多々羅鳴き龍
多々羅大橋の鳴き龍は向かい合った支柱間を音が反響し、まるで登っていくように聞こえる不思議スポットです。今までは条件が悪かったのかあまり上手く聴こえなかったのですが、今回はしっかり聴くことができました。備え付けの木を叩くと「音が昇っていく」という不思議体験ができます。
広島-愛媛県境
父は男、そして父親そして夫としての意地を発揮し、最後の力を振り絞り橋の上でなんとか3人合流し広島県を越えました。
何度来ても海の上の県境に自転車で居るというのが不思議な気持ちになります。こんな体験ほかにできるのでしょうか。
大三島 サイクリストの聖地
初日47kmを走りきり、なんとか全員で初日ゴールの大三島に到達しました。サイクリストの聖地は多々羅大橋の絵を書く老人が居ただけで、貸切状態でした。とはいえシーズン中でもそこまで人でごった返すわけでもないので、意外とすんなり写真が撮れる印象です。
母が発見した、車輪をモチーフにしたこの穴から多々羅大橋を見るこの構図。
これがやりたかった2022。
GWにロードバイクで訪れた時のセルフパロディです。わずか4ヶ月後にまた来るなんて想像していませんでした。しまなみ海道に「ただいま」
初日は想定より多く約50km。実は私もブロンプトンとしては初めての距離でしたが、意外なほどに疲れはありませんでした。両親はというと、父の必然の足攣りがあったものの、それを除けば2人ともそれほど無理なく走りきれたようでした。
50kmというとおそらく一般的な人からすると自転車で進む距離ではないのかもしれません。私はもう一般的な人ではないのでその感覚は分かりませんがおそらくそうだと思います。なので自分には無理な、すごい人の世界の話だと思う人もいるかもしれません。
しかし両親はさすがに筋肉痛と尻の痛みに苦しんでいたものの、逆に言えばその程度のダメージでちゃんと走ることができました。なので大丈夫です。
しかしブロンプトンの純正サドルは優秀ですが、長距離ではクッションなりレーパンをアンダーでも履いたほうが良いかもしれないと思いました。乗車姿勢的にロードよりも尻に荷重がかかるのでちょっとしんどいかも。しかも私は慣らし終えていないBROOKSサドルだったので、レーパンがなければ結構きつかったと思います。
初日の宿はサイクリストの聖地から10分くらい北に進んだ海沿いの宿泊施設、WAKKAをチョイスしました。2020年3月に出来たばかりの施設で、あまりにも良かったので別記事にしたのでこちらをどうぞ。
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