tada車バラ完最終回。いよいよ油圧ディスクブレーキ車の要、ブリーディング作業です。
これまでの作業記録はこちら。
ブリーディングとは
油圧ディスクブレーキ回路にブレーキフルードを満たし、かつ回路内の空気を取り除く、油圧ディスクブレーキを作動させるための作業です。ブリーディングが正しく行われないとブレーキの効きが悪くなるどころか全く効かなくなってしまうので一番命に関わる作業です。
ブリードキットの入手
まずはブリーディングを行う工具、ブリードキットを用意します。SRAM純正品はPro Bleed Kitですが異様な高騰により購入が躊躇われたので(定価1万円くらいのところ16000円〜:2022年11月現在)、Amazonで売っていた下記のサードパーティ製のブリードキットを4000円ほどで発見しました。
ホースカッターでおなじみのジャグワイヤー製なので品質自体は信頼できると思いますが、問題はSRAM etap AXSに使用できるのかどうか。あくまでフルードを満たす作業なのでコネクターがブレーキ側、シフター側のブリードポートに接続できれば良いのですが、当然情報は見当たりません。もう慣れました。
Amazonの写真で見る限りは純正のブリードキットのコネクターと形状は似ているし、Avidに対応しているならば同じSRAMだしいけるんじゃないか、最悪4000円なら取り返しのつかない出費ではない…ということで人柱的に購入してみましたが、結果としては問題なくブリーディングできました。
シリンジ×2とブリードポートに差し込むコネクター類。ブレーキの種類によってコネクターを交換したり組み合わせたりします。SRAM etap AXSの場合は右下のものがそのまま使用できました。この辺りの構造、形状は純正品とほぼ同じなのであまり迷いませんでした。
作業の手順は
①シリンジの組み立て
②シフター側のブリードポートとシリンジを接続する
③ブレーキパッドを外し、ブロックを入れる
④ブレーキ側のブリードポートとシリンジを接続する
⑤ブリーディング
⑥シフター側からシリンジを外す
⑦ブレーキ側のシリンジを外す
なお、作業はホイールを外した状態で行う。
ブリーディング作業
①シリンジの組み立て
フルード吸い上げ用の短いチューブが付いているので、これを使ってシフター側のシリンジに容器の3/4程度フルードを満たし、ブレーキ側は5mlほどフルードを入れたらチューブを接続します。
コネクター側に赤い金属パーツが付いている方がブレーキ側、シルバーの方がシフター側です。シリンジを上に向け、軽く叩きながら気泡を上に集めて空気抜きをします。当然このとき少量のフルードが先端から出てくるので撒き散らさないよう、タオルやウエスを当てながら作業を行います。
②シフター側のブリードポートとシリンジを接続する
ブラケットカバーをめくるとシルバーのブリードスクリューと黒の接触調節器が現れます。まず接触調節器を止まるまで左に回したらブリードスクリューを取り外します。ブリードスクリューは万が一紛失するとフルードが漏れブレーキが作動しなくなるので失くさないように注意します。
シフター側のシリンジ先端をブリードポートに装着します。ねじ式なので止まるまでしっかり締めつけます。
③ブレーキパッドを外しブロックを装着する
一番内側に緩み防止の爪のような形の金属パーツが付いているのでこれを手で外したあと、ボルトを緩めていきます。
全て取り外した状態です。真ん中の板バネを曲げてしまわないように気をつけましょう。
ブレーキパッドを外したらブリードブロックを取り付けます。先端が丸みを帯びている方が下を向くようにして差し込むようにして取り付けます。
④ブレーキ側のブリードポートとシリンジを接続する
ブリードブロックを取り付けたら、ブレーキ側のブリードポートのカバーを手で外します。
ブリードポートを剥き出しにしたら、4mmの六角レンチでまず左に1/4回転だけ緩め、その後締め直します。その次にブレーキ側のシリンジを接続します。こちらはねじ式ではないのでカチっと音がするまで垂直に差し込んで接続します。しっかり差し込んだら左に完全に1回転させてからクランプを解除します。マニュアルにも書いてありますがここで緩めすぎるとフルードが漏れ出てしまうので、2回転以上させないよう注意します。
ブレーキ側のシリンジを垂直に保持します。1人で行う場合にはテープなどを用いてフレームに固定すると良いと思います。最後にシフター側のクランプを解除したら準備は完了です。
⑤ブリーディング
いよいよブリーディング作業。ここまで来るとあとはシリンジを使ってフルードを行ったり来たりさせるだけなので作業自体は難しくありません。ここで重要なのはシリンジを押したり引いたりするのはシフター側のみということです。
理由は分かりませんが、ブレーキ側のシリンジを押してフルードを入れてはいけません。マニュアルに記載されています。
シフター側のシリンジを押し込み、オイルラインにフルードを注入します。ここまでの手順が問題なければ、押されたフルードがブレーキ側のシリンジに移動し液面が押し上げられてきます。ブリーディングの目的は一連のオイルライン内にフルードを満たすことと、空気を取り除くことなので、シリンジ内の空気を入れてしまわないよう、ある程度フルードを残した状態にしてストップします。
ブレーキ側のシリンジが押し上げられた図。念の為接続部周囲からフルード漏れがないかチェックしますが特に問題はありません。次はこちら側のシリンジを押し込みたくなるところですが、先述の通り操作するのはシフター側のみなので、シフター側のシリンジを引きます。すると今度はブレーキ側のシリンジの液面が下がり、シフター側のシリンジにフルードが満ちてきます。ブレーキ側のシリンジ内の空気を吸い上げてしまわないよう、こちらもある程度フルードを残して手を止めます。
最初はボコボコと空気も吸い上げられてくるので、ごく少量の気泡のみになるまでこの作業を繰り返します。私の場合はフロントもリアも3回ほどでほぼ空気はなくなりました。
⑥シフター側のシリンジを外す
空気抜きの作業が終わったら、まずブレーキ側のコネクターを右に締め、再度チューブをクランプします。
次にシフター側のレバーを握って離す。
シフター側のシリンジを垂直に保持し、シリンジを引いたり押したりを数回繰り返します。ここもわずかな気泡が上がってくるのみになればOK。
あとはマニュアルの手順に従って進め、チューブをクランプしてシリンジをブリードポートから取り外します。ブリードスクリューを締めたらこの時点でオイルラインは密封されます。
⑦ブレーキ側のシリンジを取り外す
一番最後にブレーキ側のシリンジを取り外し、ブリードポートのカバーを戻して終了です。ブレーキ側のシリンジは差し込む時と同様でねじ式ではないのでまっすぐに引き抜きます。
フロントブレーキとリアブレーキとで作業の手順は変わらないので、これを前後とも行ったらいよいよ全ての作業が終了です。シリンジ内にはそれなりの量のフルードを入れるので一見、フルードの消費が多く感じますが、実際にオイルラインに満たされるフルードの量は少ないので、一度購入すれば当分なくなることはないと思います。
Shimanoに比べ作業性が良いとよく言われるSRAMのブリーディング。Shimanoも何もブリーディング自体初めて行った作業でしたが、確かにそれほど戸惑うこと無く、有害なDOTフルードをこぼすこともなくスムースにできました。ブリーディングは油圧ディスクブレーキバラ完の難所とされる作業で、自転車ショップに依頼すると工賃含めて1万円以上かかることもありますが、やっている事自体は非常にシンプルなのでSRAMのマニュアルと動画を見れば始めてでもそれほど苦労せずできると思います。
これにて作業編は終了で、次回は完成車のお披露目編です。
〜fin〜