いよいよ残すところはブレーキの取り付けとブリーディングです。ここは未経験な上に油圧ブレーキ組のキモなので慎重に、細かくやっていきます。
SRAM etap AXS HRDはシフターとブレーキキャリパー、オイルラインが最初から全て接続された状態になっている&オイルラインは長めなので、フレーム内装を一切しないとしても必ずオイルラインのカットが必要になります。
また海外の主流の左前・右後ブレーキの接続になっているので、それを良しとしないのであれば左右の入れ替えも必要になります。といっても左右の入れ替え自体は特別な行程は不要です。そしてこれまでの作業の中では一番使用する工具が多かったので一覧を示します。
・六角レンチ
・トルクレンチ
・トルクスレンチ
・スパナ(8mm, 10mm)
・ホースカッター
・DOTグリス
作業の順番としてはざっくり下記のようになります。
①左右のシフターからホースを外す
②シフターをハンドルに固定する
③ブレーキキャリパーをフレーム側に取り付ける
(必要ならば)ホースをフレームに内装させる
④ホースのカット
⑤ホース断端にオリーブインサート、オリーブを装着させる
⑥ホースを再度、シフターに接続する
⑦ブリーディング ※これはまた別記事で
シフターの取り付け
①シフターからオイルラインを取り外す
やたらと硬いブラケットカバーを脱がすと、黒いバルブ、圧縮ナット、ホース、が顕になります。この黒いバルブに溝があり、10mmのスパナがハマるようになっていて、バルブを固定しながら8mmスパナで圧縮ナットを回していきます。
シフターからホースを外すのはこれだけで終了。ホース先端は銀色のオリーブと呼ばれる金具が付いていますが、この状態でもオイルが漏れてくるのでウエスやガムテープなどで保護しましょう。この作業は左右のシフターで違いはありません。
②シフターをハンドルに取り付ける
ハンドルへの固定は特に難しいことはありませんが、ブラケットカバーがやたらと強靭で、マニュアルのように先端に向かって脱がして六角レンチを差し込むのが困難でした。というか不可能だったのでシフター先端から脱がした方がスムースにできます。
オイルラインの操作
③フロントブレーキキャリパー取り付け&④ホースカット
ブレーキキャリパー側のホース接続部です。黒いゴムのカバーは手で外せて、圧縮ナットは8mmスパナのみで取り外せます。私の場合、オイルラインは外装にしているためフロントブレーキのラインをフロントフォークに一部通すのみで難しいところはありません。
私のフォークはワンバイエスのOBS-RBD-TH 700C ロードベンドディスクスルーフォークで、唯さんが勧めてくれて一緒に注文してくれたものです。左の一部にオイルラインが内装される構造ですが太さ的にはホースがピッタリ通るくらいなので、先端にオリーブが付いていると通りません。
まずフォークにホースを通すため、短くしすぎない程度に、オリーブのちょっと下くらいでホースをカットします。ホースカッターはジャグワイヤのみんながよく使っているやつです。普通のニッパーとかでも切ることはできますが、オイルの通る内腔が潰れてしまうと上手く機能しなくなるためここはケチってはいけないポイントです。
なお、前後ともホースのカットはシフター側で行います。ホース内装の関係でブレーキキャリパー側のホースの取り外しをする場合には要注意です。
マニュアルを読むだけではなぜなのか分かりませんでしたが、おそらくはオリーブインサート、オリーブ(コンポセットに付属)を用いてホースを接続するのはシフター側だけなので、キャリパー側で切ってしまうと再接続ができなくなるからだと思います。オリーブがない状態になると圧縮ナットが取り外せるので、なくさないようにしましょう。
フレームにホースを通す場合には専用の道具が必要になりますが、このフォークに内装させる長さはせいぜい20cm程度で、試しに細い針金を入れてみると容易く穴から穴に出てくるので、工具無しでなんとかなりそうでした。まずはブレーキキャリパーをフォークに固定して、ホースの切れ端をフォークの下から上に向けて通します。
このフォークを使っている人への注意点ですが、キャリパーの台座はフォークに付属しているものを使用しなければなりません。
もともとブレーキキャリパーに上下の入れ替えで140mm, 160mmのローターが使える台座が装着されていますが…
フォークのマニュアルを見ると、ショートオフセット(デフォルト)状態の場合はフォークに付属している台座を使うようにと記載があります。
ホースをフォークに通した図。針金ほどすんなりは行きませんでしたが、3分ほど入れたり抜いたりを繰り返して突破しました。あとはハンドルに沿ってホースを仮止めして長さを決めてカットして、右シフターに接続すればデフォルトの左前右後から日本人仕様の右前左後に変更できます。
⑤ホースにオリーブインサート、オリーブを装着する
ホースの長さを決めたらホースの切れ端にオリーブインサートとオリーブを装着します。オリーブインサートにDOTグリスをたっぷり塗って、トルクスレンチで締めて接続します。これはホースとの隙間がなくなるまで締めていきますが、強く締めすぎるとホースが破損するそうなので無理やり締めないように気をつけます。この作業にはかなり細いトルクスレンチが必要ですがコンポセットに付属しています。この時、圧縮ナットを戻すのを忘れないようにしましょう。
続いて向きを間違えないようにオリーブを接続します。オリーブの内側のネジ溝がホース先端の方を向くのが正しい向きで、オリーブインサートとツライチになるか、オリーブインサートがごくわずかに飛び出すくらいまで締めていきます。ここは逆ネジになっていて、手の力だけで取付可能です。
⑥シフターとホース先端を接続する ※重要
ホースをシフターに接続するのは最初の取り外しと逆の手順になります。
後述するがここで決してやってはならないことがあります。それは「一度圧縮ナットを締め込んだら緩めてはいけない」ということです。これは後から知ったことなのでリライト。
最初にホースの接続をすべく圧縮ナットを締めていて、圧縮ナットを外した時の感覚に比べて明らかに接続するときが固いことが気になっていました。イメージとしてはネジが斜めに入っていてスムースに回せない、あの感覚に近いです。
最初に接続したフロント側は固くなり始めたところで一度緩めて、まっすぐに接続するのを確認して再度締め込んでみましたが結局固さは同じだった上、圧縮ナットのネジ溝が完全には埋まりませんでした。そしてリア側も接続する際、やはり同じ固さでした。わかっていたのでこちらは締められるところまで締めてひとまず保留にしました。
結果としては「オリーブを変形させることでオイルラインの気密性を生み出す」ため、圧縮ナットを締め込む際にはオリーブを変形させる力の分、固くなるのが正常です。締めた後に緩めてしまうと「オリーブの再利用(メーカーが禁じている)」になってしまい、気密性が保たれなくなる=ブレーキが作動しなくなる危険性があります。
オリーブの取り扱いや油圧オイルラインの接続に関してはネット上の情報がShimanoも含めそれほど多くなく、メーカーに問い合わせたりしたので別記事にまとめました。
リアブレーキ取り付け、センタリング調整
リアブレーキキャリパーの取り付け
続いてリアブレーキキャリパーの取り付けです。長さの異なる2種類2セットのネジとワッシャーが付属しています。
ワッシャーとネジをフレームの取付台座に差し込んで、飛び出す長さが5-7mmになる方のネジを選択します。私のフレームでは見ての通り、どちらもどう考えても7mm以上飛び出していたので、家にあった六角ボルトを適当に挟んで長さを合わせました。長さが合わない場合の対処法はマニュアルには記載されていませんが、フレームに固定するだけなのでスペーサーを噛ましても問題ないでしょう、多分。
ブレーキを取り付けたらオイルラインを這わせフロントと同様、ハンドルに仮固定して左右に振って長さを決めます。ワイヤー外装式なので非常に作業がラクです。
余裕を持って合わせてもこれだけ余るのでリアホースは相当長めに設定されています。
ブレーキキャリパーのセンタリング調整
あとはブレーキキャリパー位置のセンタリング調整を行います。まずブレーキキャリパーを手で動かせるくらいに軽く固定して、その状態でブレーキを握る。すると理論上、ブレーキパッドがロータを両側から均等に挟んだ状態=ブレーキパッドとディスクロータが平行の状態になるので、その位置でキャリパーを固定します。この調整にはグランジのセンタリングツールを使うと決まりやすく時短になります。
私の場合何度かやってもロータとパッドが擦れてしまった上、おそらくエア噛みか作業中にフルードが全て出てしまったかで、フロントブレーキはスカスカで一切効かない状態のため、ブリーディングをして、その状態で位置決めもしてしまうことにしました。どうせブリーディングでブレーキパッドを取り外すので、そこでまとめて調整した方が都合が良い気もします。
いよいよ次回、最終回。
to be continued...