一般に日帰り用に勧められるのは30Lくらい
私が登山を始めて最初に購入したザックはモンベルのキトラパック40という2気室の40Lザックでした。日帰り〜山小屋泊まで使えて汎用性が高い、というふうに友人や店員に勧められた覚えがあります。
現在は見た目の好みや使い勝手からカリマーリッジ30という30Lザックを使っています。このザックはどんな登山用品店にも置いてある超定番品で、壊れても同じものを買うというくらいに気に入っています。
数字以上に容量があるので日帰り〜テント泊まで幅広く活躍してくれる一方で薄々感じていました。
日帰り登山に30Lも必要?
私の日帰り登山に必要な装備はレインウェア上下、防寒着(時期により)、飲料(~2Lくらい)、エマージェンシーキット、調理器具、食材、撮影機材です。厳冬期であれば色々増えてきますが、登山の大半を占める非厳冬期の日帰り登山では30Lザックは明らかに持て余しています。ザックはある程度荷物が入っていないと型崩れするので背負心地が変わってしまいますし、トップリッドがだらんと垂れ下がってしまい見た目がよろしくありません。またザックを背負う・下ろすのにいちいち腰ベルトを操作するのが煩わしく感じるようになってきました。
装備の次はザックもミニマルにしようぜ
最近山と道のminiやthreeをはじめとしたUL系ザックを見る機会が非常に増えてきました。それらは腰ベルトがなく、ショルダーハーネスのみで従来のザックよりも高い位置(背中の上半分、肩甲骨あたりが中心)で背負います。登山ザック=腰で背負う、と習ってきましたが、日帰りのせいぜい6,7kg程度の重量であれば腰ベルトがなくとも快適に背負えることに気づきました。気づいてしまいました。
パーゴワークス BUDDY22
山と道miniは入手が比較的困難なのとあまりに持っている人を多く見かけるのと生地の薄さから自分の雑な扱いには向かないと考え外しました。いっそトレラン用でも良いかもなんて思いながら石井スポーツを散策していると、ふと目に入ったパーゴワークスのBUDDY22というザックの背負心地がめちゃくちゃ良く、印象に残りました。パーゴワークスは手裏剣をモチーフにしたロゴの日本のメーカーで、オールインワンのクッカー、トレイルポットが去年くらいに話題になり気になっていました。
手裏剣ロゴと独特の見た目
従来のザックに比べて全体的に上の方で背負っているのがわかるかと思います。22Lということでちょうど日帰り用の装備で良い感じにいっぱいになりザックの形も整っています。若干の亀の甲羅感があり好みの分かれる見た目だと思いますが、個人的には気に入りました。
外観レビュー
というわけで気づいたら家に居ましたBUDDY22です。BUDDYシリーズは16, 22, 33の3サイズがラインナップされていて、カラーはいずれもダークベージュ、アーバングレー、モスグリーンの3色展開です。
モスグリーンの色味は非常に好みでしたがどんな服装でも馴染みそうなアーバングレーを選択しました。メイン収納部、トップリッド相当の上部ポケット、上部がカラビナ止めになっているフロントポケットと両サイドにもポケットがあります。後述しますがこのフロントポケットは相当な収納力があります。
小型ザックながら使い勝手にはとことん拘って制作されていて色々とくすぐってきます。
サイドポケット。かなりゆとりのある作りになっているので
ナルゲン1Lも余裕で入ります。
ショルダーハーネスはかなり幅広で、チェスト部分にはスマホや行動食が入る伸縮性のあるメッシュポケットが付いています。この幅広ハーネスが背負心地の良さに寄与している一方、私が登山中に使っているピークデザインのcaptureを装着するのがかなりギリギリです。
本音を言えばメッシュポケットを犠牲にしてでももう少し下に来る方が使いやすいのですが、写真のDカンの真上くらいが限界です。この位置だとカメラは高めになりますがまあさほど困らず運用できるかなという感じです。ハーネスは少し歪みますが、装着できるなるべくギリギリまで下げています。
こちらはメイン収納部です。ザック正面から見て「7の字」に大きく開くのが特徴で、底の方にもアクセスがし易いです。内部は視認性の良いイエローになっていて、背中側にはチャック付きのポケットが付いています。
ポケットの裏側にはハイドレーションのスリーブがあります。Macbook Airも入るサイズ感で、黒い部分はゴムになっていて伸縮性があります。
パッキング
実際に日帰り登山時の装備を詰めてみます。左上からレインウェア上下、ジェットボイルミニモ、食材を想定したスタッフバッグ、ナルゲン1L、カメラ(OM-D EM1 mark2+M.ZUIKO12-100mmF4.0PRO), 交換レンズ(M.ZUIKO 7-14mmF2.8PRO)、ミニ三脚(Leofoto MT-03+MBC20)、財布、エマージェンシーキットです。
やはりメイン収納部が大きく開くのでパッキングは非常にやりやすいです。上記のうち交換レンズと財布以外は全てここに収納します。
メイン収納部とは別のトップポケットは結構深さがあるので財布と交換レンズを入れてもまだ行動食や手袋等を入れる余裕があります。
上記の装備を全て詰めた状態でもフロントポケットが十分収納力を残していそうだったので試しにヘリノックスのチェアワンを入れてみたらすんなり入ってしまいました。これなら脱いだウェアや防寒着を丸めて突っ込むくらいはわけなさそうです。
登山で使ってみた
使い勝手を確かめるべく、とりあえず近所の高尾山〜小仏城山の軽登山に持ち出してみました。
外観
中身はレインウェア上下、ノマドパーカ、ジェットボイルミニモ、食料(カップ麺+具材)と移動中に使うkindle paperwhiteとヘッドホンです。小雨予報だったので左サイドポケットにはモンベルのトレッキングアンブレラ60を入れています。この傘は150g程度と超軽量ながら一般的な傘と同等のサイズでモンベルの神アイテムとして知られているやつです。
右側にはナルゲン1Lを入れています。
フロントには同じくパーゴワークスのスイッチXLを装着しています。スイッチはウエストバッグやサコッシュ、バッグに装着し容量拡張したりショルダーハーネスに付けて胸の前に来るようにしたりと様々な使い方にスイッチできる優れものです。XLは最大サイズで、小さいレンズであればミラーレス一眼も収納可能です。
ショルダーハーネス左側はcaptureを付け、右側は元々のポケットにスマホを入れていました。
ショルダーハーネスを絞って背負った状態です。体感的には背中というより肩甲骨上くらいのかなり上の方に来ています。腰回りが何もないのが新鮮でした。
カメラを装着して背負った状態です。ショルダーハーネスの胸ポケットは非常に使いやすい高さに来るのでスマホの出し入れが容易で、さすがによく考えられていると思いました。
captureに関してはやはり他のザックでちょうど良いと感じていた高さより上の方に来てしまうので脱着に慣れるまで時間がかかりました。脱着の際には少し上を向いて顎下のスペースを空けるイメージです。これ以上高いところに来てしまうと使えないな、というギリギリのところでしたがまあなんとか使えるレベルでした。
分かりにくいですが自分目線で胸ポケットを見た図です。スマホや行動食を入れるのに最適な位置です。はぁ、ここにcaptureが付けられたら最高なのに。
良かった点
・ショルダーハーネスが幅広で肩が疲れない
ザックは腰で背負うもの→着るものという改革で、懸念していたのが肩の疲労ですがこれは幅広&柔らかいハーネスのおかげで杞憂に終わりました。登山強度が低いこともありますが、翌日になっても全く肩に疲労がありませんでした。
・腰ベルトがないのが予想以上に快適
・脚がめちゃくちゃ動かしやすい
なくなって分かった腰ベルトの弊害。腰ベルトが股関節の動きに干渉していたことを初めて知りました。これまで腰ベルトの干渉を意識していたわけではありませんが、脚運びの抵抗が全くないことに気づきました。例えるなら胸ポケットにペンを差している時に走るのと何もない状態で走るときの違いでしょうか。何も気にせず走れる開放感。
・ザックを下ろす・背負うがラク
・荷物の出し入れ・アクセスが良い
腰ベルトがないとチェストベルトのバックルを外す→ザックを下ろす、以上。なので休憩時にザックを下ろすのに抵抗がなくなりました。今までは腰ベルトの締め直しが面倒で背負ったまま休憩していましたが、それがなくなりそうです。
またパッキングの時点で分かっていましたが、やはり登山中でも荷物の出し入れがめちゃくちゃやりやすかったです。特にトップの小物ポケットの収納力が高いのが◎。
・コンパクトは正義
帰りの混雑したバス・電車内では膝の上に抱えるか足元に置けばザックのケアがほぼ不要でした。ザックが邪魔にならないようにするのは地味に気を使うポイントなのでやはり小さいのは正義です。
残念だった点
・ザックを背負ったまま飲み物を取るのが非現実的
ザックが高い位置に来るのでやはりザックを降ろさずに飲み物を取るのは難しかったです。不可能ではないのですが非常にストレスフルです。ザックを下ろすのが楽になったとはいえ、私はほぼ歩きながら手を後ろに回して飲み物を取るスタイルだったので面倒に感じてしまいました。なので次回は右のショルダーハーネスにドリンクホルダーを取り付けようと思います。
・captureの位置が高い
これは前述の通りで、使いやすいとは言い難い位置になってしまいました。外すのはともかくノールックで戻すのはなかなか難しいです。ここはどうにかして工夫したいところです。
・ザックを背負い直す時に背面パッドが折れがち
ザックを背負い直す時に背中に背面パッドが折れて当たる現象が頻繁に起こりました。
どういうことかというと、BUDDY22の背面パッドはマジックテープで取り外し可能になっているのですが、取付部はパッドの中央のみなので、左右が写真のようにすぐ折れます。なので背負い直す時にこの状態になっていないか確認する必要があります。慣れればそこまでストレスではないと思います。
・汗濡れしやすい
ショルダーハーネスの内側(身体に当たる側)はメッシュになっていないので汗が染み込んで濡れた状態になりやすいです。背面パッドは従来のザックと同等くらいでしたが、ショルダーハーネスは汗濡れをかなり感じました。
まとめ
とりあえずこのザックを購入した理由である荷物と容量の最適化、腰ベルトとの決別という点では文句なし。いや、期待以上の効果がありました。厳冬期の装備量では今まで通り30Lが必要かなという気がしますが、秋〜初冬の日帰り登山の防寒着くらいなら問題なさそうなので活躍の中心になりそうです。いや、スイッチ2つくらい組み合わせれば厳冬期も行ける気がします。
実戦投入にて欠点もそれなりに感じましたが、スイッチとの組み合わせも含め、使い勝手が非常に考えられており痒いところに手が届くザックだと感じました。外観も無駄を排した玄人好みのデザインだと思いますし、カラーも山から普段使いまで適したラインナップだと思います。日本のメーカーというのが誇らしい気分です。どこのお店にも置いているザックではありませんが、登山専門店であれば取り扱っていることが多いので気になった方はまず実物を試してみてください。写真で見てふーんで終わっても、実物を見ると結構刺さります(私がそうでした)。
日帰り登山で30Lを持て余していると感じている人や腰ベルトが煩わしくなってきた方には強くおすすめのザックです。