自転車乗りならほぼ誰もが持っているであろう携帯ツールについての話です。現在使っているツールについて思うことがあり、いくつかの製品を比較検討していたら結構勉強になったのでまとめたいと思います。
携帯ツールに必要な要素は?
現在の装備
まずは現在の装備から。
【ロードバイクもしくはTyrell FSXの時】
・TOPEAK mini9
・チューブ
・CYCPLUS AS2 PRO もしくはTOPEAK ローディTT
・PARKTOOL スーパーパッチ
・PARKTOOL タイヤブート
【ブロンプトンの時】
・BROMPTON Toolkit
・チューブ
・PARKTOOL スーパーパッチ
・PARKTOOL タイヤブート
今回は赤字のところ、主に六角レンチを中心とした携帯工具に関する話になります。
現在メインで使っているのはTOPEAK mini9というモデルで、十徳ナイフ方式の最もありふれた携帯工具です。貰い物で高校生の頃くらいから使っているので気づけば10年以上経過しています。サビサビですがなんとか現役。備わっている機能は下記の通り。
六角レンチ:2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 8
トルクスレンチ:T25
その他:+ドライバー
重量:92g
これまでの経験上出先でT25が必要になったことはありませんが、それを除けば過不足ない非常に優秀なツールです。小さいのでずっしりした感じがしますが、100gを切るのは多機能携帯ツールとしてはかなり軽量な部類です。
ただし十徳ナイフ方式の宿命で、実際の使い勝手はそれほど良くありません。ステムやシートポストクランプのボルトでは問題ありませんが、サドル周りやディレイラー周りでは非常に回しづらい場面が少なからずあるのと、場所によっては締めていく時に何度も抜き差しが必要です。
出先で割としっかり工具を使わなければならない場面を何度か経験したので、もっと使いやすいものを探すことにしました。
必要な工具は?
携帯ツールにはトルクレンチ機能が付いていたりチェーンカッターが付いていたりとめちゃくちゃ多機能なものもありますが、重量とのトレードオフなので必要な機能を抽出して探すことにします。手持ちの自転車のよくいじる場所に必要な工具を洗い出してみました。
・スルーアクスル:6
・ステム(ハンドルを固定する部分):4
・レックマウント:2.5&4
・トップキャップ :tyrell5、tada車4
・ボトルケージ :tyrell(+)、 tada車4
・サドルバッグマウント:オルトリーブ(+)、Carradiceバッグマン6
・サドルレール:4
・シートポスト:5
・ブラケット:5
・キャットアイVOLT800の裏のやつ:1.5
・ペダル:Tyrell(kcnc SPD)6、tada車(スピードプレイ)8
・リアディレイラー:tyrell(SHIMANOアルテグラ)2、tada車(SRAM etap AXS)2.5
・クランク:tada車8(tyrellは一体型)
数字は六角レンチのサイズで、赤字のものは特に出先で触る可能性が高い部分です。基本的にはスルーアクスルくらいですが、走行中の振動で緩んだり、輪行や事故でハンドルやブラケットを止め直すことを想定しています。
ペダルとクランクに関しては出先でいじることはまずないので8mmの六角レンチは不要と判断します。自分の自転車達ではトルクスネジもほぼ見かけないのでトルクスレンチも不要。また、VOLT800ユーザーなら一度は悩まされる裏面のアレは1.5mmという少々特殊なサイズで、緩むと厄介ですが経験上は手締めでその場を凌ぐことは可能なのでこれも無くても構わない枠です。
あとはオルトリーブのサドルバッグマウントが(+)ネジ締めなので(+)ドライバーは必須です。こいつは結構緩んだり動いたりしがち。
以上から2, 2.5, 3, 4, 5, 6の六角レンチ+(+)ドライバーがあれば良いという結論に至ります。
BROMPTON Toolkitについて
ここで手持ちのBROMPTON Toolkitを見てみます。
・2~6までの六角レンチ
・(+)、(ー)ドライバー
・8mm、10mmスパナ兼タイヤレバー
・15mmスパナ兼ラチェットレンチ
ブロンプトンのフレーム内部に収納可能な携帯ツールで、整備が本当にこれ1つで出来てすげぇぇぇぇぇ!と思っていましたがそれもそのはずで、必要な六角レンチが全て揃っていてかつラチェット式、そしてスパナまで揃っている(以外では使わなブロンプトンいけど)スーパーツールです!ラチェット式の整備性の高さは半端じゃありません!
これでいいじゃないという話ですが、ブロンプトンらしく重い、円柱型なので嵩張る、というのがデメリット。公称180gらしいですが実測値は227gもあり、不要なタイヤレバーを除いても174gとなかなかの重量級です。
重量は?
個人ブログから自転車ショップHPや雑誌類まで様々なソースを元に調べたところ、これらの工具の軽量と言えるひとつの目安は100gと言えそうです。確かに現在使っているmini9(92g)はこれ以上極端に重くなると結構存在感があるなァ…という感じです。ただしこれは前述の通り使い勝手を犠牲にしている部分があるので100g前半くらいまでが求める条件になりそうです。100g後半ならBROMPTON Toolkitタイヤレバー抜きでええやんという話になってしまうので。
求める条件まとめ
2, 2.5, 3, 4, 5, 6mmの六角レンチ、(+)ドライバー、(できる限り)ラチェット式。重量は120gくらいまででかつ携行性に優れたコンパクトな筐体のもの。
ということになりました。記事を書いていたら「50g妥協してBROMPTON Toolkitで全て賄えば良いのでは…?」という身も蓋もない気持ちが湧いてきましたが無視して続けます。mini9がサビサビだし新調するという意味も込めて…ね。
候補となった携帯工具たち
さてさてようやく仕事中に目を盗んで調べまくった実際の製品群のパートです。価格やユーザー数を考慮してTOPEAKとPB SWISS TOOLSまで絞り込みました。
①TOPEAK ラチェットロケットライトDX
まずはTOPEAK、ラチェット式の携帯工具の中でもっともベーシックな機能を備えているのがこちら。実売価格4500円ほどで機能は下記の通り。
・ラチェットレンチ1/4六角
・六角レンチ:2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 8mm
・トルクスレンチ:T10, T25
・(+)ドライバー
・タイヤレバーx2
・エクステンドバー
ラチェット式かつ必要な機能を全て兼ね備え、さらに作業性を高めるエクステンドバーまで付いていてかつ安価というこれ1つでヨシ!な工具。ラチェットロケットシリーズはさらに上位モデルがあり、チェーンツールが付いたりトルクレンチの機能が付いたりと徐々にグレードアップしていきます。各工具はバラ売りもされているのでまずはラチェットロケットライトDXを買って必要に応じて買い足して行くのもアリ。
良いところ:安価、最低限必要な装備+αが揃っている、エクステンドバーにより作業性も高い
悪いところ:155gという重量
非常にコスパに優れており多くの人にとって最適解の1つと言えそうな選択肢です。ただしBROMPTON Toolkitを持っている私からすると重量差がわずか20gです。トルクスレンチやタイヤレバーを除いて多少軽くなるにせよ、BROMPTON Toolkitでええやんの域は越えられなさそうです。そのため☆4つ。その事情がなければ☆5つです。いくつかレビュー記事を見ましたが使い勝手が良さそうです。
②TOPEAK ラチェットロケット エッセンシャル
続いて同じくTOPEAK、2024年上半期に出たばかりのラチェットロケットシリーズの最新モデルです。
・軽量アルミラチェットレンチ1/4六角
・六角レンチ:2, 2.5, 3, 4, 5, 6mm
・トルクスレンチ:T10, T15, T25
・(+)ドライバー
エッセンシャルの名にふさわしく、機能を削ぎ落として軽量化されています。特筆すべきは15.7gという超軽量アルミ製のラチェットレンチ(BROMPTON Toolkitのラチェットレンチは単体で64gもありました)。トルクスレンチを除いたら100gを切りそうですし、前述の通り8mmレンチは基本不要なので必要にして十分な構成と言えそうです。唯一ネックなのがエクステンドバーがないことですが単品で売っているので組み込むことは可能。エクステンドバーの重量が公開されていませんが、重めに10-20g程度と考えても120g程度の軽量ラチェット式携帯工具システムが組めそうです。
③PB SWISS TOOLS BIKE TOOL
3つ目は有名な自転車ブロガー達から高評価を得ているPB SWISS TOOLSです。
・六角レンチ:2, 2.5, 3, 4, 5, 6mm
・トルクスレンチ:T25
・(+)ドライバー
・(ー)ドライバー
・タイヤレバー
良いところ:軽い(98g)、高精度なビット
悪いところ:ラチェット式ではない
特筆すべきはフルセットで100gを切る軽さ、そしてネジ・ボルトへの食いつきが明らかに違うとまで称される精度の高さです。「キャノンボール研究」のばるさんは下記記事内でさらに使うものだけに厳選し53gという異次元のシステムを組まれています。
軽い、高精度、ビット単体で買い足せる拡張性…と軽量化が半ばライフワークと化しがちな自転車乗りにとって唯一無二の選択肢と言えそうです。しかも実売5000円ほどなのでコスパも優れているのでは。初めて工具を買う人ならラチェット式が良い=ラチェットロケットライトDX、ラチェット式にこだわらない=PB SWISS、これがこの記事の結論です。
ただし、では肝心の私には何が良いのか?やはりラチェット式にはこだわりたい、しかし重くても良いなら既にある、さあどうするべきか…
いうてラチェット式じゃないと困るん?と言われるとぶっちゃけ返す言葉はありません。これまで十徳ナイフ式ツールで大丈夫だったんちゃうの?と言われたら爆散。
でも、せっかく新調するなら…快適なラチェット式が良いじゃないですか…ねぇ…
じゃあ、何を買う?
有力候補順です。
①ラチェットロケットエッセンシャル+エクステンドバー
これが第1候補。軽量かつラチェット式、エクステンドバーで作業性も確保する完全無欠プラン。使わないトルクスレンチビットとエクステンドバーで重量が相殺されれば約100gの「ぼくのかんがえたさいきょうの携帯工具」です!実売価格で約6000円。もっともスマート。
②PB SWISS TOOLS+ アルミラチェットレンチ+エクステンドバー
PB SWISS TOOLSについて調べているうちにブランド自体に魅力を感じ始めた哀れな私のよくばりプランです。TOPEAKの軽量アルミレンチは単体でも売っているので、不要なビットを除して組み合わせることで軽量かつ高精度かつラチェット式かつ作業性確保という家系ラーメン全部乗せ麺大盛り硬め濃いめ多めさらにもやキャベもつけちゃうぜ!的な最強of最強プラン。両者のハイブリッドプランで記事の趣旨的には最も平和的解決な気はします。価格は約9000円、全然平和じゃねえ。
③PB SWISS TOOLS+BROMPTONラチェット
高精度かつ軽量なPB SWISSを基本としてどうしてもラチェットが欲しければまず手持ちの道具で我慢しようねというオトナなプラン。ただしせっかく軽量なPB SWISSが64gのラチェットで台無しに。合わせて170g。あれ、BROMPTON Toolkit(withoutタイヤレバー)とほぼ同じくね??
④アルミラチェットレンチ+PB SWISSビット
要は軽いラチェットレンチと良いビットが欲しいんでしょう?ということでバラ買い作戦。自由に組めるという利点の反面、レンチ3000円にビットを単品で少なくとも6つ集める必要があり(モノタロウで1つ940円くらい)コスパは最悪です。完成車とバラ完と費用差と同じ理屈です。
⑤ラチェットロケットエッセンシャル+エクステンドバー+PB SWISS
カネで解決、札でぶん殴りどうだ明るくなったろう、な卑しいオトナプラン。考えることに消費される時間を金で買うという超一流ビジネスマン的プランとも言えます。しかしどう考えてもラチェットロケットエッセンシャルのビットとPB SWISS のビットを入れ替えて使うことになりそうなので、「ケンタウロスの余った方」が発生します。
余った方のケンタウロス pic.twitter.com/Gjod834a67
— えだま (@kissshot51) May 14, 2022
結論
ここまで書いて、やはりどう考えても最大公約数的解決策は①のラチェットロケットエッセンシャル+エクステンドバーな気がしてきました。PB SWISSへの憧れはあれど(今まで知らなかったけど調べているうちに芽生えた)、TOPEAKの工具の精度に不満を感じたことなどありませんし、費用対効果も優れていて言うことなしな気がします。
駄文にお付き合いいただきありがとうございました!