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【…ようこそ。f0.95の世界へ】中一工学SPEEDMASTER 50mm F0.95 Ⅲ 作例&レビュー

こんにちは、今回は最近衝動的に導入したレンズレビュー回です!…ようこそ。F0.95の世界へ

購入のきっかけ

いつものように「どうせ買うなら早く買った方が使える期間が長くなるからお得!」理論で衝動買いした人生初となるF0.95レンズですが、きっかけは2つありました。

記憶カメラさん

一つはいつも物欲写欲を刺激する危険ブログ、記憶カメラさん。最近F1.4くらいの明るい単焦点レンズを探していたのですが、なんとZfにF0.95レンズを装着しているではありませんか。

外観やスペックからLeica Noctiluxのオマージュ的なレンズのようですが、実売10万円ほどでF0.95の世界を体験できるという(相対的に)非常にコストパフォーマンスに優れたレンズのようです。Noctiluxなんて150万くらいしますからね、多趣味人間の私にはちょっと出せない金額です。

偶然見かけた写真

そしてもう一つはまたまたTLで偶然見かけたこちらの写真。なんのレンズで撮ったのかは分かりませんが、久々に刺さる写真でした。手前と奥と両方ボケさせるという技を学ぶと同時に、せっかくフルサイズ持っているならばやはりめちゃくちゃボカせるレンズが欲しいという思いが強くなりました。

中一光学 SPEEDMASTER 50mm F0.95Ⅲ

というわけですぐさま購入しました。吟味時間は短めでしたが非常に状態が良く新品の半額以下で売っているのを見つけてしまったので仕方ありませんよね。描写は期待の120%でめちゃくちゃ気に入りましたが、使い勝手は最悪に近いです!玄人向けというか嗜好品の極み感があります。

外観レビュー

滅多にやらない開封の儀。かなり質感の高い外箱です。

レンズポーチと説明書。

そしてこちらがレンズ本体です!とんでもない重厚感です。ダンベルかと思いました。

さすがに見たこともないくらいの大口径です。人間の眼はF1.0と言われているので人間の眼を超える世界を見るレンズ。どうでもいいですが文字の主張は強め。

デザインはZレンズのようなマットな印象をまといつつもオールドレンズ様のクラシカルな装い。この個体は概ね目盛りひとつ分F値の印刷がズレているようで、写真の状態が開放F0.95です。F値ごとの描写の違いを吟味したりはしないので私の実用上は問題なし。

F4とかでも夜の撮影で困らないくらいカメラのスペックが高い現代ですが、かつて高感度にも限度がありシャッタースピードを上げるにはいかに明るいレンズを使うかという時代においてF0.95は強力な武器でした。それゆえSPEEDMASTERという称号が与えられているのでしょう。

余談ですが一般に世界一明るいレンズといえばカールツァイスのF0.7だそうです。しかし歴史上はF0.33というレンズが存在していたとか…

a-graph.jp

簡単なスペック

詳細はマップカメラさんの記事に任せるとして、このレンズの要点をまとめると①F0.95②巨大③クソ重い④MFという使い勝手なぞ知らん!系のF値と描写一本勝負レンズです。

news.mapcamera.com

まずサイズは600mlペットボトルの上1/3で切ったくらい、重量は770gあるので余裕でZf+バッテリーよりも重いです。最低の例えですけどジャンボサイズのワンカップ大関くらいあります。カメラと合わせて約1500gあるのでバカほど疲れます。単焦点レンズと合わせて軽快に持ち歩く普段使いを想定してたはずが、どうしてこうなった。

そしてMFレンズ。フォーカスリングは320度回るのでF0.95の極浅のピント面でも細かくピント合わせが出来る…という利点の反面、手前と奥で合焦点を変えたいときはめちゃくちゃリングを回さないといけないのでこれも疲れます

伝えたい、このデカさ

Nikon Zfと合わせる

続いてZfと合わせた姿。実用性はともかく見た目は中々良くマッチしていると思います。クラシカルながら洗練されたモダンな印象もあり、音楽でいうとカノンロック。ちなみにレンズマウントはZマウントなのでアダプター不要なのが◎

レンズは長めで明らかなフロントヘビーです。必然的に片手をレンズの下に添えるスタイルになるので逆にバランスは良いんですけどね、まあバカ重いですね。でも、写りが良くてカッコいいのでオッケーです!筋肉でカバーするのが漢というもの。

作例

まずは夕刻の近所にて。確かISO感度は400、すべて開放で撮っています。さすがにシャッタースピード稼いでも明るいです。

F0.95のボケはやはり強烈です。特段ぼかそうとしなくとも手前と奥がボケてくれます。

先日のお花見サイクリングにて。メインで使っていたNIKKOR Z40mmf2のシャープな描写と比べるとやはり光がじんわりにじむような柔らかい写りで大変好みです。ピクチャーコントロールはNikon Zfリッチトーンポートレート撮って出しです。

風があったので背景ボケがちょっとうるさい感じですがギリギリ桜の木であることが分かる程度の強烈なボケです。

桜を手前に置いてみるとなんなのかわからないくらいボケます。

カメラ歴もなんだかんだ長くなってきて、そんな勉強してるわけでも向上心強く取り組んでいるわけでもありませんが、最近ようやく40mmとか50mmの画角の良さが分かってきた気がします。引き換えになんでも写ってしまう広角に対する苦手意識が出てきました。よく色んな写真家の方々が言われていることですが、引き算的に写したいもの・写せるものだけを切り取るという意識のほうが分かりやすいです。

遠景で使えば普通の風景写真にも◎ わずかな圧縮効果が心地よく感じられます。

手前の桜の輪郭をボカしすぎない程度に絞りました。

冒頭の写真で学んだ、手前と奥両方をボケさせる技。自分的に意図した通りに撮れている写真で、この写真を撮ったとき本当にこのレンズ買ってよかったなと思いました。F0.95はすごい。

道端の植物をクローズアップ。といっても最短撮影距離は50cmなので全然寄れません。またさすがにこういう写真を撮ろうとするとピント合わせが超シビアです。ボディ内手ぶれ補正が効くのとフォーカスポイントの拡大があってようやく扱えます。

絞り開放でカップの文字に合焦させていますがピント面に解像感はなく、良く言えば幻想的な雰囲気で悪く言えばぼんやりとした印象です。X100Fの絞り開放の淡い描写、あそこまでではないものの雰囲気は近い感じです。また絞り羽根は11枚ですが円形絞りではないので絞り値によっては多角形ボケになります。

やや逆光気味の角度では全体が白いベールに包まれたような独特の淡い描写を見せることがあります。全体的に解像感は乏しいものの、それが現代のレンズ、例えば私の持つNIKKOR Z 40mmF2なんかでは絶対に出せない描写です。

これらの癖に対して私はオールドレンズライクと好意的に捉えていますが、人によってはネガディブなポイントかもしれません。

F0.95

しかし上記の描写はあくまで開放でのお話。絞り込むことで描写は大きく変化します。まずは開放F0.95で、木道の途中にピントを合わせています。手前の草木と道の奥がかなりボケていて、上部の木々も部分的にボケており解像感には欠ける描写です。

F5.6

続いて構図とピント位置は同じでF5.6まで絞り込みました。ピント面の濡れた質感、そして手前から周辺の草木までかなり明確に描写されています。

F8.0

F8.0まで絞り込むとピント位置はもちろんのこと、周辺の木々まで非常に解像されます。NIKKOR Z40mmF2ほどのカリカリさではありませんが、現代のレンズとして標準的な解像度だと思います。

このように、F0.95からF8.0の間でも大きく描写が変化するので画作りの幅が広く意外と汎用性が高いレンズとも言えます。ただし、このレンズの特徴・強みはあくまで開放F0.95の描写でしょう。

西日のリフレクションにピントを合わせて絞り開放。強い光が柔らかく拡散し夢の中にいるような描写。これがこのレンズの魅力だと思います。

あとはSPEEDMASTERの名前の通り夕刻や夜間にはF0.95は非常に心強く、ISO400程度、上げても800くらいで大抵の場面は撮影できてしまいます。故に現像耐性がかなり強いです。

こちらもISO400絞り開放での手持ち撮影。「ドメスティックな彼女」でモチーフ的に登場するゆうひの丘です。フルサイズでISO1000未満で撮れればノイズはほとんど感じられないくらいなので、夕刻〜夜のスナップには非常に頼りになるレンズです。

本家Noctiluxと比較して

友人が本家Noctiluxを所有しており、描写の違いについてああだこうだやり取りしていました。Noctiluxをオマージュしたとされる本レンズですが、特に開放での描写の傾向は大きく異なると感じました。開放のボケ感は劇的な違いは私には感じませんでしたが、本家は開放でもピント面が非常に良く解像しており、主題とボケのコントラストが明確で全体的にシャープな印象を受けました。ただ、私個人の感想としてはどちらの描写にも良さがあると思っており、個人的にはこのレンズの白昼夢のような淡い描写の方が好みです。というよりそのような描写のレンズを求めていたというのが根源にありました。

まとめ

まだ購入して日の浅いレンズですが明らかに「このレンズでなければ」という描写をしてくれるので非常に満足しています。実用性は皆無と言って良いレベルですが、それでもF0.95の明るさと唯一性のある描写によりお釣りがきます。絶対値で見て新品価格10万円強というのは決して安い買い物ではないものの、F0.95の世界はカメラ・写真好きなら体験して損はありません。開放での描写が好みであれば買って後悔はしないと思います。

価格帯も含め本家Noctiluxと比較して悩むようなレンズではないと思いますが、数あるF0.95レンズの中では金額的に試しやすく有力な選択肢になると思います。