先日納車したばかりの折りたたみミニベロロード、Tyrell FSXの初遠征記です。直前まで天気予報に悩まされ現地ではまさかの機材トラブルに見舞われるなど色々ありましたが、名だたる自転車乗りたちがこぞって一番と言う阿蘇パノラマライン、そして世界的にも有名な黒川温泉を訪ねて来ました!
阿蘇パノラマライン旅 計画編
事の始まりは7月の飯豊山登山のとき
阿蘇パノラマライン走ってみたいんだよね
阿蘇は良いよ、何度でも楽しめるから早く行くべきだよ
そんなにか
確かに有名な自転車乗りがみんな阿蘇推してるんだよね。9月の連休で行こうかな。
実はHG君とツーリングするんだけど
運良く黒川温泉の良い宿が取れてるんだ
日程合うならまだ1名追加できると思うよ
合わせましゅ行きましゅ
ということで東北の山の中で急遽決定したのが今回の旅でした。
元々予定していたプラン
事前計画と天気予報から修正・機材トラブルにより変更したプランまで載せておきます。当初はツーリング+阿蘇山登山のハイブリッド計画でした。
day1 阿蘇パノラマライン
熊本空港→阿蘇パノラマライン(南→北)→阿蘇駅(55km, 1255m up)
阿蘇駅→大観峰(14km, 400m up)
ペンショングリーンカルデラ(阿蘇駅近く、1泊)
day2 阿蘇山登山と黒川温泉
ペンショングリーンカルデラ→仙酔峡(8.1km, 400m up)→阿蘇山登山
仙酔峡→黒川温泉(28km, 500m up)
day3 やまなみハイウェイ
黒川温泉→やまなみハイウェイ→由布院・別府を抜けて大分空港(105km, 1400m up)
実際の行程
結果的には天候および機材トラブルにより大幅に予定変更となりました。
day1 変更なし
熊本空港→阿蘇パノラマライン(南→北)→阿蘇駅(55km, 1255m up)
阿蘇駅→大観峰(14km, 400m up)
大観峰→ペンショングリーンカルデラ(1泊) ※機材トラブルによりタクシー移動
day2 黒川温泉 ※雨予報のため変更
ペンショングリーンカルデラ→黒川温泉
バスないし自走(24km, 450m up)
day3 走れる範囲で走ってとにかく空港にたどり着く ※機材トラブルにより変更
黒川温泉→大分市内(仲間のレンタカーにて)※
大分市内→別府地獄めぐり(32km)
別府駅→大分空港(バス)
※当初は黒川温泉→別府までバス移動し別府→大分空港まで自走予定
阿蘇エリアの交通事情について
阿蘇パノラマライン、やまなみハイウェイは阿蘇山からくじゅう連山にかけての広大なジオパークを通り抜ける至極のツーリングロードで、基本的に山道ですが観光地でもあるので比較的公共交通機関が充実しています。今回の滞在地同士はバスでも結ばれており
熊本空港→阿蘇駅→黒川温泉→由布院→別府→大分空港、は全てバスで移動することが可能です。故に今回のように多少天気が芳しくなくとも輪行と組み合わせることでフレキシブルにプランが組めます。あるいは自走自体に重きを置かなければ、ブロンプトンで美味しいところだけ走る旅なんかを組んでも面白いと思います。
アウトドア趣味と天気
今回は9/21-9/23の連休を使った計画で、週明け時点での予報はこの通り。
この時点ではまだ宿のキャンセルは無料の段階でした。しかし早割の飛行機はすでにキャンセル料60%=約4万円かかってしまうタイミングです。ANAはインフルエンザかコロナにかかると特例としてキャンセル料が無料になるので保育園にボランティアにでも行こうか考えました。
どうせ雨で無駄になるならキャンセルして被害額を4万円で抑えるべきか迷ってる
…よくわかんないけど
普通の人は雨でも温泉旅行として普通に楽しみに行くんだから
飛行機が飛ぶなら行ったら?
良い宿なんでしょ?そこに行けるだけで何がだめなの?
そうか、その発想はなかった
山も自転車もない旅行という発想がなくなっていたところ、目からウロコでした。ありがとう細君。
アウトドア趣味、中でも特に自転車と登山は天候依存型アクティビティなので毎回このハラハラドキドキが漏れなく付いてきます。雨の日用の趣味をいよいよ本格的に考え始めねばなりません。
day1 阿蘇パノラマラインツーリング
さて例によって前置きが長くなりました。ここからが旅行記です。
バス輪行 立川駅→羽田空港
自宅近くの立川駅から羽田空港までは毎日高速バスが運行しています。しかも予約不要で自転車輪行も可能(ロードバイクは不明)なので大変重宝しています。
バス輪行は運行会社によりますが「原則としてはできない」というのが一般認識です。法律云々ではなく、高価な自転車に対して破損や傷が付いた場合にトラブルになり得るからです。きっと過去に文句やクレームを入れた輩がいたのでしょう…。
ただ、実際には今のところ事前に問い合わせたり現地で急遽輪行することになった際、自己責任でお願いしますと言われたことはあっても、断られたり渋られたりしたことはありません。意外と乗せてもらえることは多いです。ただし、好意に甘えさせてもらっているという認識であるべきなので、横倒しになろうが多少傷つこうが気にしない気持ちは必要です。自転車が傷つくのが嫌なら自分の脚だけで動くべきです。
飛行機輪行 羽田空港→熊本空港
飛行機輪行も慣れたもので…というより大きめのスーツケースを預け入れして飛行機に乗るのと何ら変わらないので特に身構える必要がないです。有人カウンターで預け入れる必要があることと、中身のチェックを求められるので、輪行袋からすぐ出せるようにしておくとスムース、くらいです。
また車載品については、往路の羽田空港ではサドルバッグもハンドルバッグも付けたままにしましたが、復路の大分空港ではバッグを外してそれぞれ検査するのを求められました。
この辺りの取り扱いは空港によって異なりますが、基本はできるだけ車載したバッグ類は外して検査しやすくしておくのがベターです。
自転車特有の預け入れ不可品代表がパンク修理用のCO2ボンベです。車載していることを忘れている場合もあると思うので前日にはしっかりチェックしておきましょう。
2泊3日の自転車旅、この時期ならこれだけ… pic.twitter.com/2gufbeRVrj
— 上社アイ@山と自転車の人 (@kamiyashiro_i) September 20, 2024
ちなみに今回の装備はこれだけです。オルトリーブのサドルバッグを車載しミステリーランチのヒップモンキーをファニーパックとして身に付けています。これでもTシャツと下着類を1つずつ余分に持ったのでまだコンパクトにできます。
初の試みでカメラは単焦点のコンデジ、富士フイルムX100Fのみにしました。
熊本空港から阿蘇パノラマラインへ(南登山道)
熊本空港から阿蘇山一周ルートに沿って南回りに進み、県道111号線こと南登山道から阿蘇パノラマラインに入ります。後述しますが阿蘇パノラマラインを自転車で走る場合は北から南に抜ける方が絶対に楽だと思います。
青看板に従い325号線に沿って進み、上記のところで南登山道に入ります。ここから乗鞍くらいのヒルクライムが始まります。
そう、道の雰囲気は確かに乗鞍に似たものを感じました。記憶の限り一番斜度がきつかったところで10%くらいでした。見返すとそれなりに良い写真達が撮れていましたが、現地では小雨も降ってきて何してるんだろう感が半端ではありませんでした。
初の遠征となる納車1ヶ月目のTyrell FSXです。最小ギア比が34÷30=1.13なのが玉に瑕ですが、ミニベロだからかロードの1.13よりは楽でした。もう貧脚を自虐することも忘れるほどに坂でのインナーローが標準になってきました。
阿蘇の麓は広大な田園地帯です。本日ゴールの北側に比べると少し地味な印象ですが、ヒルクライムの爽快感は十分味わえました。
放牧されたあか牛たち
地形が台地になりある程度登りきった感じがしてくるところで
不意にガードレールを越えた先の草原に肉牛が…
彼らがかの有名な「あか牛」です。
曇りながらある程度は遠くまで見渡すことができて、ウジウジ悩みながらも思い切って来て良かったと思いました。もうここが走れただけでも満足な思いでした。(本当にここだけになるとはこの時はまだつゆ知らず)
草千里
ヒルクライムを終え北側へのダウンヒルに至る間、著名な景勝地の1つである草千里を通過しました。ここまでの1250mのヒルクライムの疲労がキツすぎて遠くから眺めることしかできませんでした。今やり直すならここまでバスで来ます。自転車乗りのプライドなど、ない!
北側の爽快なダウンヒル
草千里を通過するとわずかな登りを経てあとは阿蘇駅までのダウンヒルです。
路肩で好き勝手に止まれるのは自転車の最大のメリットですね。車が速度を落として通過していくのを見てほくそ笑みます。
天気予報の想定より天候が回復し、阿蘇山のギザギザした稜線が見えてきました。ちなみに山界隈ではありがちですが「阿蘇山」という山はありません。高岳を最高峰とする阿蘇五岳とその周辺の火山群の総称です。今回は自転車旅なので敢えて阿蘇山という名称を用いています。
あか牛がたくさん、そして近い
この道からは左手に阿蘇駅方面の平地(阿蘇谷)を一望でき、放牧されたあか牛達を眺めながらのダウンヒルです。ちなみに阿蘇山の西側、有明海まで広がる平地は熊本平野と呼ばれるそうです。
やたらと高画質で撮れたゼロ距離あか牛。
人を怖がる様子はなく、手を伸ばさずとも触れられるほど近づいてきます。
道の駅阿蘇とJR阿蘇駅
熊本空港から阿蘇パノラマラインを抜けると阿蘇駅・道の駅阿蘇に到着です。ここは各方面と阿蘇を結ぶバスが発着し、旅の拠点となるところ。
道の駅では出発前に上司から勧められた「パン工房豆の木」のパンを発見しました。この極旨カレーパンと
ASO MILKと
どデカい馬まん、でカロリー補給しました。ヒルクライム後というスパイスを抜きにしてもめちゃくちゃ美味しかったです。特にこの馬まんはマストです、必食。
阿蘇駅から大観峰へ
阿蘇駅から北に14km, 400m登った山の上に阿蘇山と阿蘇谷を一望できる展望スポット、大観峰があります。正直もう1mも登りたくなかったですが、我らが師匠が
大観峰はマスト
と言うので行かないわけにはいきません。この後悲劇が起こるとも知らず、ペダルを踏み込みました。
大観峰はちょうどこの写真の奥の山の右端の高くなっているところあたりにあります。その昔は武士達が戦場を一望し戦略を練る場所だったそうで、大観峰という名前は明治時代に評論家の徳富蘇峰という人に名付けられたそう。
1200m登って、つまり乗鞍をエコーラインを登り終えた後のおかわりの400mヒルクライムです。半ば使命感で登っていた私の心中、どうかお察しください。
Tyrell、大観峰にて散る
冗談抜きで何度も引き返そうと思ったくらい疲れたヒルクライムでした。17時過ぎに到着し、まだ明るいうちに眺望が得られる、そう安心していた矢先のこと。パァン…
突然後方から銃声が鳴り響きました。何が起こったのか、詳細は下記記事に譲りますが、サイドカットパンクし行動不能となりました。
暗くなるに伴いにわかに気温が下がり雨まで降り始めた絶望の大観峰。
初日にして行動不能!?つまり旅が強制終了!?いやまずはここからどうやって脱出すれば良いんだ!?ヒッチハイク!?そんなコミュ力はない!お前には立派な脚があるじゃないか!?宿まで16km…不可能ではない…自転車を押し歩きの下り山道、4時間の下山と思えば…
一通り混乱したのちとりあえず宿泊予定のペンショングリーンカルデラへ遅れる連絡を入れ状況を説明すると「大阿蘇タクシーさんなら…」と。
すがる思いで電話すると「30分くらいで行きますよ」
うおおおおおおおお
5000円の予定外出費は痛かったものの、配車料金も含め1万円くらい覚悟していたので良心的だなぁと思いました。聞けば「グリーンカルデラさんはお得意様ですから」と、偶然に救われました…。
なんて不運なんだと思っていましたが、改めて考えれば状況的には熊本空港を降り立った瞬間に行動不能になる可能性もありました。初日とはいえメインのパノラマラインは走れたし、大観峰も登りきったところでのパンクだったのはむしろ幸運だったのではと思えるようになりました。しかも記事1本分のネタにもなったし、プラスに考えることにしました。
ペンショングリーンカルデラ
初日の宿は楽天トラベルで阿蘇近辺の宿を探していた中で一番料理が美味しそうで評価も高かった「ペンショングリーンカルデラ」です。
小ぢんまりしたペンションで客室はシンプルながら、談話室と食堂が山小屋のそれを思わせる非常に雰囲気の良い内装でした。
食事はコース料理となっていました。味もボリュームも完璧です。やはり旅の宿は食事で選ぶべきですね…。
特にあか牛のステーキは最高でした。柔らかく噛むほどに味が深まる良質なお肉。
冒頭で述べた通りday2以降は大幅にプランを修正しました。サイドカットの応急処置および今後のプラン修正のための交通機関の情報収集エトセトラ…くぅ〜疲れましたwこれにて自走編終了です!
↓day2, day3へ続く