山と自転車

登山や自転車をはじめとした多趣味ブログ

【写真多数】圧倒的スケールのカムイミンタラを歩く1泊2日大雪山縦走 2025.08.09-08.11

昨年2024年の山の日の連休は恐怖の北鎌尾根アタックを成功させ「もうこういうの(死ぬ系/ヤバい系)は辞めよう」と誓った私達。これからは旅行を兼ねつつ地方の名峰を落としていく、そんな山をやろうと話していました。そんなわけで今年は北海道の名峰大雪山を縦走してきました。パーティは北鎌と同じく師匠、HG氏に私の精鋭パーティです。

大雪山縦走計画

旅の行程

全行程は前乗りを含めた4日間(※5日間)で、うち丸2日間が山行です。※については後述しますが完全に予定外のビバークです。

day0(8/8) 仕事終わりに羽田→新千歳空港→近隣で1泊

day1(8/9) 新千歳→大雪山旭岳ロープウェイ→白雲避難小屋(宿泊)

day2(8/10) 白雲避難小屋→お鉢平を巡って旭岳ロープウェイへ下山→富良野で1泊

day3(8/11) 観光しつつ富良野→新千歳

※day4(8/12)  エ ア ポ ー ト ビ バ ー ク

山行の行程

「大雪山」という名前は最高峰旭岳を中心とした山々の総称ですが、それらを広く巡る山行でした。

day1(8/9) 新千歳→大雪山旭岳ロープウェイ姿見駅→旭岳→北海岳→白雲岳→白雲避難小屋(宿泊)

day2(8/10) 白雲避難小屋→北海岳→黒岳石室→北鎮岳→比布岳→当麻乗越→裾合平→姿見駅(下山)

当初はトムラウシ山との縦走予定だったけれど…

当初の計画は南側にあるトムラウシ山と2座を落とす大縦走でした。旭岳ロープウェイから入山し、初日に全距離42kmの中間地点に当たる忠別岳避難小屋まで一気に歩き、翌日も同じ20kmを歩き抜けるタフなルートです。

しかし初日の白雲避難小屋に到着した時点でのペースと天候のコンディションから、大雪山の縦走に変更しました。白雲避難小屋から忠別岳避難小屋までのCTは5時間近いので、これをするには12時には白雲避難小屋に着いているべきですが、我々が白雲避難小屋に到着したのは15時。しかも、この日一番しっかりした雨が降ってきたタイミングでした。

大雪山・トムラウシ山縦走は山行日程+1日必要

上記縦走は2泊3日あればさほど無理ないプランになりますが、登山口と下山口が異なる上に両者のアクセスが良くないことがネックで、下山したその日のうちに羽田空港まで帰ることはほぼ不可能です。つまり山行2泊3日に加えてもう1日ないと帰れない。逆に言えば新千歳空港まで前乗りしたとしても、3連休でやり遂げるなら縦走自体は1泊2日で踏破しなければなりません。

4連休を確保するのと42kmの縦走路を2日間で踏破する体力を身に付けるのとどちらが容易かということであります。

個人的No.1更新

「今まで一番良かった山は?」

この問いに対して長らく鳥海山と答えてきました。数ある山々の中でも一番感動的で驚かされた山で、台風から逃げるように北上して登った思い出深い山です。

しかしこの答えが久々に更新されました。次に聞かれたら迷わず大雪山と答えます。信じられないスケール感の中にこの世のものとは思えない美しい景色があって、進むたびに全く違う表情を見せてくれる大雪山。これはちょっと他に例がないと思います。まだまだ登っていない百名山ばかりですが、それでもここは特別な山だと確信しました。

山行記録day1 姿見駅〜白雲避難小屋

旭岳ロープウェイ

旭岳ロープウェイ、到着時点ではまさかの雨。当然山なんか見えやしない。思わず溜息が出るけれど、自分たち以外にもたくさんの登山者が思い思いに出発していくのを見て奮起します。

ロープウェイは15分間隔で片道2200円、往復3500円。前述の通り当初はトムラウシ山に抜ける予定だったので片道で購入しましたが、プラン変更により結果的には900円損しました。

大雪山エリアの熊出没情報。概ね1週間に一度は目撃情報が出ているようです。

見事な山々だ!(心の目)

驚きの白さ

前日はかなり降ったのか、登山道の序盤はもはや川になっています。

ミニマル渡渉

晴れていれば旭岳が映るであろう姿見の池もこの有り様。最悪ずっとこれでも一座は一座だ。そんなことを考えていました。

ホントは山頂が見えているんだよね?

見せたかったのはこんな景色ではないんだ…

どこからともなくスプレーの噴出音と地響きをハイブリッドしたような音が聴こえ、目を見やると煙が上がっていました。

火山活動で山から出てくるこれは噴気というそうです。似た言葉に噴煙がありますが、明確な定義の違いはないようですが火山灰などの固体成分を含むものを噴煙、含まないものを噴気と呼ぶようです。

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旭岳を目指している途中、時々視界が晴れることが増えてきました。現地で登っている者にしか分からない「空が明るくなってきた」です。希望的観測でそう見えるのか、本当に明るくなっているのか分からない、シュレ猫的な状態です。

この空は実際に晴れてきたであろう希望の色です。この明るさです。これに我々山屋は希望をいただくのです。

気づけば全く何も見えなかった世界が徐々に輪郭を帯びてきました。

そして遂には青空まで。一度青空が見える時は山にだけ雲が被っている状態なのでワンチャンスが期待できることが多いです。逆転優勝の目、出てきました。

そういえばどうでもいいですがワンチャンって言葉、中高年の世代にもかなり普及してますよね。

旭岳頂上直下。これはもう勝ち確定なのでは??

金庫岩

かつて旭岳登山の目印にされていたという金庫岩。この真逆の方向にニセ金庫岩という遭難誘発ポイントもあります。今はロープが張られ分かりやすくなっていますが、実際にここで遭難事故が発生しています。

旭岳山頂

旭岳山頂、スタートから約2時間。北海道最高峰を誇る2291mです。ここまではそれなりの登りですが道自体は安全で、旅行ついでに登ることも可能だと思います。実際、登山装備…?という雰囲気の人もちらほら。

簡単に昼食を摂りつつ写真を撮るタイミングをはかります…

が、結局この有り様でした。おかしい、いつぞやの利尻山山頂とほぼ変わらない写真だ。

いつぞやの利尻山山頂

しかし旭岳からの眺望は得られなかったもののさすが北海道。山頂でキツネと遭遇しました。

人を恐れる様子はなくむしろ近づいてくる勢い。200mmでもよく撮れました。

続いては北海岳を経て白雲避難小屋方面を目指します。この稜線は神々の遊ぶ庭、カムイミンタラを眺める極上の縦走路です。

歩き始めはこんな感じでしたが、ここから奇跡の大逆転を果たしていくことになるのでした。

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徐々に徐々に雲が薄くなってきます。

先の縦走路が見え始めます。

カムイミンタラ(曇天)

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まだまだ曇天ではありますが、真っ白の景色から急に視界いっぱいに山肌が見え始め、さながら嵐を抜けてラピュタにたどり着いたような高揚感がありました。

北海岳

カムイミンタラを巡る縦走路とトムラウシ山方面の縦走路との分岐点、北海岳です。個々についた頃にはずいぶんと視界が晴れて、晴れ間もチラ見えするようになってきました。

右側のピークが大雪山最南端の黒岳です。

北海岳の対面になるような北鎮岳。元々は行く予定がありませんでしたが、プラン変更により翌日にその頂を踏むことになります。

形が特徴的な烏帽子岳。

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北海岳から南下して白雲避難小屋を目指します。ここからはかなりなだらかな登山道です。

白雲に隠れる白雲岳。白雲避難小屋への道は左回りに巻いていきます。

振り返っての1枚。もうすっかり晴れました。あの白さからよく回復してくれた…奇跡

白雲岳もその姿を現しました。かなり岩だらけのピークです。八ヶ岳の編笠山に似ています。

正規ルートでは白雲岳を左回りに迂回して稜線に出て、白雲避難小屋方面、白雲岳方面、小泉岳方面、そして北海岳方面の分岐点を通ります。

が、我々はせっかく晴れたので白雲岳のピークを踏むことにし、直登ルートを行くことにしました。写真でうっすら左の斜面の方向に道があるのがわかるでしょうか。ここは短いですがなかなかタフな登りです。

白雲岳山頂

直前の写真を思い出してください。あんなに晴れたのに、それでも分からないのが山の気象。その名を体現したかのごとく、本日2回目の真っ白な山頂です。

山頂手前の道。これはダメだって感じですよね。

続いてチェックポイントの白雲避難小屋へ。先の分岐からは20分くらいでしょうか。

白雲避難小屋

初日に写真を撮り忘れたので2日目の晴れた状態です。

テン場は白雲岳から見て小屋の少し手前にあります。そして時刻は15時。

ようやく半分だね

…ヤマレコで見ると

忠別避難小屋までCT5時間くらいある

さすがに遭難するね

ここにきて初めて時間的にかなり無理があることに気づきました。ここでかなりまとまった雨が降ってきたことが決定打となり、ここに宿泊すること、そして予定していたトムラウシ山への縦走を諦め大雪山の縦走に変更することを決めたのでした。

足を引っ張って申し訳ない

いや、そもそもパーティで行くのが無理のある計画だったかも

確かにまだ初日半分だもんなぁ

ギリギリ日没までにたどり着けたかもしれませんが、途中に補給場所もエスケープもないので非常にハイリスクです。しかもその翌日も同じ距離を歩かなければならないので、山は逃げないを胸に、無理はしないことにしました。

そして白雲避難小屋。避難小屋といっても夏季は管理人がいる立派な山小屋です。寝具は持参しなければなりませんが、避難小屋という言葉のイメージからするとかなり快適に過ごせます。宿泊費は3000円で、うち1000円が登山協力金らしく返礼品として大雪山イラストの手ぬぐいか手提げバッグがもらえます。

キャパに関しては「避難小屋ですから来たら来ただけいれます」とのこと。予約もありませんが、事前にWEB上で宿泊申請をしておくことが推奨されています。

我々は2階のスペースを利用しました。なんと漫画本や山に関する本が置かれていました。山で読む神々の山嶺が最高に滾りました。

避難小屋ながらプラダンによる簡易的なパーテーションが用意されていました。これは被災地などでも使える良アイディア。

夕食と水汲みと

本日の晩餐は師匠お手製のカレーです。ジャワカレーをベースとしつつもうひと手間加えられている極旨カレー。

カレーを温めていただく。山ではそれだけでも十分に手が込んでいると思いますがこの男はそんな手抜きを良しとしません。私がトレイルポットでカレーを温めている間、横で野菜やベーコンを炒めていました。

そして完成!夏野菜の極旨カレー爆誕!これはちょっととんでもなかったですね…このために登っているメンバーもいるくらい、食に恵まれた登山隊です。

食後は翌日分の飲水や食事に使う水を汲みに行きました。テン場の手前に水場があります。雪解け水が汲める場所ですが、当然そのままでは飲めません。一般論に加え北海道には洒落にならないエキノコックスがいるので必ず煮沸しましょう。

しかしエキノコックス…煮沸してもできれば飲みたくないな…

念の為浄水器を持ってきた

煮沸もすればさすがにいけるんじゃねえか

まあ生水でも感染率はかなり低いみたいだから

できた

エキノコック水

なんかスパイシーな味が…

カレーエキノコック水か…

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みんな消灯していたので迷惑になるかと思い外でカレーエキノコック水を作りつつ、夜の帳が下りていきました。この日は満月で、とっても幻想的でした。

山行記録day2 白雲避難小屋〜お鉢平を巡って姿見駅

2日目朝、前日の白さが嘘のように晴れ渡り、トムラウシ山に続く縦走路が見えていました。かなり遠くまで見渡せましたがこれでもトムラウシ山は見えていないというのでやはりかなりロングコースです。

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しかし、やはり山の天気は非常に気まぐれで、ここまで晴れていたのにも関わらず

1時間経たずして再びの白さです。

曇りで唯一悪くないなと思うのは木々や植物が発色良く写せること。何一つ名前が分かりませんが下界では見ないタイプばかり。

小泉分岐

ここが4方向に分岐するチェックポイント。

小泉岳

分岐から片道10分ほどでピークが踏める小泉岳という山があったので行ってみました。生憎の白さでしたがここはかなり特徴的な山頂で、とにかく平坦でだだっ広くなっており蓼科山山頂から岩を取り除いたような感じでした。鬼武者にこんな戦場があった気がします。

再びの北海岳より黒岳石室へ

再び北海岳に戻ってきた頃にはまた空が晴れ始めていて、旭岳の反対側に当たる本日の縦走路が見えていました。中央やや右の台形のピークが黒岳で、大雪山の端っこです。そしてまず最初のチェックポイントは中央にある山小屋、黒岳石室です。

ズームしてみると小屋とテン場が確認できます。

北海岳から黒岳石室まではなだらかな下りで、写真左の雪渓がある谷底まで降下します。そこから黒岳石室までは登り返しですが、これもなだらかで歩きやすかったです。

プチ渡渉を何度か繰り返します。

時に木のトンネルな道を経て

カムイミンタラの端のほうまでやってきました。

カムイミンタラを歩く

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「神々の遊ぶ庭」この場所を表すのにこれ以上の言葉はありません。写真だと一部分を切り取るだけなのでまあ綺麗だな、くらいの印象になってしまうのですが本当に現地での感動が忘れられません。

どこを見ても果てが見えない広大な地形。植生も豊かながらダイナミックな地形も楽しめて、とにかく歩いていて楽しくて仕方がありませんでした。北アルプスのご褒美の稜線歩き、これが永遠に続くような幸福がここにはあった。

黒岳石室

黒岳石室。ここはトイレがあって水や食料も買える数少ない補給ポイントです。トイレは終わった後自転車を漕いで自分で処理するタイプです。この立地でペットボトルのコーラが500円で買えるありがたさ。

見えてませんが旭岳方面。極上の縦走路です。

これぞまさに楽園。本当に植生が豊かです。

かと思えば河川に侵食されたダイナミックな地層が見えたり、本当に同じ山と思えないほど表情が豊かです。

黒岳石室から北鎮岳を目指します。登りですが非常になだらかなので歩きやすいです。

しっかり登りと認識できる斜度を越え尾根に出ます。

お鉢平展望台

北鎮岳の手前のビュースポット。カムイミンタラ、そして旭岳を最高点にカムイミンタラを取り囲む山々が一望できます。

前日の絶望的集合写真から一変、親指を天に向けて写ることができました。

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お鉢平展望台から北鎮岳。

ここまでなだらかだったとはいえ、この時点で重装備で10km以上歩いているので登りは脚に堪えます。しかし、休んで振り返って広がる景色は本当に見事で、生きてるって感じがします。例えばここに何の苦労もなく車で来られてしまったら、この感覚は味わえないと思います。結果より過程を重視するわけではありませんが、自分の脚で歩くことでしか辿り着けない場所に立つというのは官能的なものなのです。

山頂の直前のこの景色も、自分の脚で来たからこそ意味がある。

北鎮岳

北鎮岳山頂。今回の2日間の縦走のすべてが詰まっていたのが北鎮岳からの景色でした。

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自分でも信じられない、今日ずっと歩いてきた道を見渡します。

北鎮岳からちょうど対面に白雲岳が見え、今日のルートが一望できます。なかなか規模感が伝わりづらいのですが、赤線でなぞってみました。

お鉢平方面。

そしてこちらはここから先の進行方面。奥に鎮座するのが愛別岳という山で、師匠いわく大雪山の中でも最も面白かった道だそうです。

そして私が一番テンションが上がった稜線がここ、比布岳から先の切れ落ちた道です。

至高の縦走路 北鎮岳〜比布岳〜当麻乗越方面

32kmの山行の中で最も愉しかった道がここ、北鎮岳から比布岳(ぴっぷだけ)方面の稜線です。

写真にするとここ。中央の比布岳とそこから左に続く道まで。ここが超楽しい道でした。ちなみに北鎮岳からこちら側に踏み出すとカムイミンタラとはお別れです。

遠目に見える登山道、これだけでもうワクワクが止まりません。

こうして遠目に見ると気持ちよさそうな道なんですが、

実際に歩いてみるとハイマツが生い茂る藪漕ぎみたいな道でした。ここ半袖短パンのトレランスタイルだと怪我しそう。

そして比布岳までの登り!

今日最後の登りです

信じるぞ

振り返って一枚。右に見えるのが北鎮岳、すでにずいぶんと歩いてきたなと感慨深いです。

比布岳

比布岳、風はそれなりに強かったですが山頂は広く休憩しやすいです。ここでマルタイラーメン+粉チーズという、余り物から成る最強の山メシが爆誕しました。

比布岳から愛別岳。師匠イチオシの道。

ここまで来ると大雪山の外側、麓の町の方角が見えました。

そして先の一番テンションが上がった道。切れ落ちてると言っても近くで見るとそれほど危険な道ではないことが分かります。

山ポートレイト。

師匠は昔ソロで来たとき、ここにザックをデポしてこの道を1時間足らずで往復し愛別岳にも登ったそうです。

ここは非常に楽しいからぜひ歩いてみてほしい

さっきが最後じゃないの

俺の登りはもう終わった

行ってみたい気持ちもめちゃくちゃあったんですが…時間的にも精神的にも今回は見送ることにしました。ここから先の下山路は物凄くしんどかったのでこれは正解の判断だったと思います。

まるで谷川岳のトマの耳-オキの耳間の雪庇のような道。

向かって右側はかなり急峻な岸壁なのでそっちに落ちるとおそらく命がなさそうです。

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安足間岳

このジオパーク的景観の最終地点、安足間岳(あんたろまだけ)です。

見る方角によってかなり景色が変わります。ちょうど半周でがらっと変わるのが面白い。

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まずは下山路の方向。緑あふれる山の麓という感じ。

こちらは歩いてきた道のり。山肌も厳つく、火山そのものな雰囲気です。

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北アを思わせる急峻な岸壁でかなりの高度感があります。

 

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長くて悪路な下山道

いよいよ最後となるこの区間。かなり覚悟が必要です。

安足間岳から先はいよいよ下山ルートに入ります。

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直線距離では眼の前に見えますが、この下山道、なかなか高度を下げさせてくれません。ここまで来ると旭岳とその麓のロープウェイ駅まで見えてきましたが、先はまだまだ長そう。

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まだまだ稜線をなぞるように歩かされます。

麓が晴れてくると湖沼が視認できます。この感じ、スケール感は異なりますが八甲田山の後半の湿地帯を見下ろすところに似ています。

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そして高度を下ろすといよいよ核心部、まずは藪漕ぎから始まります。

先の北鎮岳から先のルートでは草木をかき分けるとはいえまだ腰より下の話でしたが、ここは身長より高い木々がせり出していて、地面の高低差も草木に隠れて見えなくなる悪路でした。

ハイマツの中を泳ぐように進みます。地面は一部川になっているくらいぬかるんでいるし目線の高さのハイマツは濡れているしで最悪です。

振り返るともはや道が見えない。

当麻乗越

なんとか当麻乗越。さすがにゴールが近づいたと見せてまだ悪路が5km残っています。

道自体はワイルドにした尾瀬って感じで良いんですがね、もう十分すぎるくらい歩いたし絶景も見尽くしてきたのでげんなりします。

途中、立派な川が流れていて再び渡渉します。

まさに尾瀬の様相で優雅に見えますが…

前日の雨が効きすぎていて小川と化していました。

多少道が落ち着いてきたら今度は下ろされ

また登らされ、最後の最後までこれでもかというくらいアップダウンがしつこく続きます。

ようやくロープウェイを眼前に捉えます。歩行距離はもう20kmを超えているのでこれでも遠く感じます。

最後の最後、旭岳がその姿を現したところでグランドフィナーレ。32kmの道のりを遂に踏破しました。おつかれ山!

大雪山縦走の感想

どうでしょうか、5年間不動だったNo.1山を更新するほど素晴らしい山であったのが少しでも伝えられたでしょうか。とにかく圧倒的なスケールが一番の印象。さらにカムイミンタラを象徴とする雄大であふれる緑、急峻な岸壁、火山そのものな山肌などバリエーション豊かな景色で常に飽きさせないでくれるのがNo.1更新の理由です。

北アでも2,3日歩くと絶景慣れして飽きを感じるものですが、ここ大雪山はどんどん景色が変わっていくので飽きるどころか逸る気持ちが抑えられなくなります。

旭岳を踏む。それは旅行のついでの半日程度の登山でも可能ではありますが、おそらく百名山に選定される所以になったであろうこの広大な景色は縦走してこそ満喫できるでしょう。トムラウシ山を断念し結果的に大雪山縦走となった今回の山行でしたが、むしろトムラウシ山まで行けなかったことに感謝しています。まる2日かけてじっくり巡ることができて本当に良かったです。

おまけ 下山後の話

下山後は温泉に入り富良野のユースホステルに泊まってジンギスカンを食べ、最終日はゆっくり起きてトリトンで寿司をたらふく食って温泉に入って道の駅でお土産を買って、最後に空港でガンダムベースを見て味噌ラーメンを食べて優雅に締めくくる予定でした。いや、味噌ラーメンを食べるところまでは完璧だったんですが…

飛 行 機 が 大 幅 に 遅 延 し た ことで運命は大きく変わりました。

遅延に次ぐ遅延に次ぐ遅延に次ぐ遅延

自宅最寄り駅には0時に着く予定で、遅めではありつつ終電など考える必要のない時間設定だったはずが。この日は西日本の大雨や連休の混雑の影響で、軒並み飛行機が大幅遅延または欠航しました。自宅に帰るためには23:30の終電までに空港から京急線に乗る必要がありましたが、出発時点で事実上不可能となりました。23:15に着陸して、ワンチャンあるとすれば預入荷物なしで全力で走ることでしたが、ザックを預入している時点で詰みでした。

それでもまだ23:58発のバスに乗れさえすれば夜のうちに自宅に帰れる算段がありました。しかし。しかし。しかし。着陸したのが23:35、そしてポートが空いていないとかで最終的に機内から下り始めたのが23:47。

ベルトコンベアから流れてくる荷物たちを眺めながら、帰る手段を完全に失ったことをようやく自覚しました。

エ ア ポ ー ト ビ バ ー ク

ステーションビバークならぬエアポートビバークを決意。しかし第1、第2ターミナルは最終便の出発をもって閉まってしまうので、シャトルバスを使って第3ターミナルへ移動しました。国際線のターミナルなのでこちらは24時間空いています。

難民キャンプのごとく椅子という椅子に屍のように転がる多国籍の人々とともに5:30の始発まで夜を明かしました。テン泊装備なのでテントでも張ってやろうかと本気で思いましたが、屋内の時点でだいぶ恵まれているなと思い直し。

今回は有休は使っていないので当然仕事。朝7時に最寄り駅に到着し、そのまま出勤しましたとさ…。

これはAIが作った空港にテントを張るエアポートビバークの図。ブログネタとしては本当にこれやればよかったなぁ。

以上、大雪山縦走の山行記録でした!おしまい。