なぜだか最近Twitter(現X)で飯豊山に関するツイート(現ポスト)をよく目にしました。ワイもみんなみたいに「飯豊はいいで!」って言いたい。そう思って過ごしていると、思いは招くと言わんばかりに今回の登山計画が爆誕しました。東北遠征も気づけば8回目、福島はすっかりよく来る場所になりました。
最初に。飯豊はいいで!!!!!
前評判から期待値が高かった飯豊山ですが、本当にめっっっっっちゃくちゃ良い山でした!最低でも1泊2日は必要なロングコースばかりで、稜線までの樹林帯は長くてキツくて、やっと稜線に出てもアップダウンがずっと続くため体力的にはかなりハードな山行です。しかし、どこを見ても山しか見えない山深さ、雪渓をまとった美しい稜線がどこまでも広がっている様は日本アルプスに匹敵する圧倒的な壮大なスケール感でした。敢えて例えるなら南アルプス仙丈ヶ岳の雄大さと立山室堂のスケール感をハイブリッドして、さらに麓の街が見えない山深さを追加した感じです。今でも良かった山ベスト3に入る鳥海山に続き、再び東北の山の魅力に圧倒されました。
山行データ
【1日目】
御沢登山口→峰秀水(水場)(1:30)
峰秀水→地蔵山西分岐(0:07)
地蔵山西分岐→剣ヶ峰(0:37)
剣ヶ峰→三国避難小屋(0:25)
三国避難小屋→切合小屋(1:08)
【2日目】
切合小屋→本山小屋(1:24)
本山小屋→飯豊山山頂(0:13)
飯豊山山頂→切合小屋(1:20)
切合小屋→三国避難小屋(1:09)
三国避難小屋→御沢登山口(1:57)
1日目 御沢登山口から切合小屋(テン場)まで
メンバーは私と師匠とKW氏。東北遠征の常連です。私と師匠は来る北鎌尾根アタックへのトレーニングも兼ねてテント泊、KW氏は小屋泊でした。
容赦のない朝4時出
今回は最近主流であった前乗りではなく「当日4時に家を出て6時間運転して8時間登山してテントで寝て、翌朝は5時に起きて8時間登山して6時間運転して帰る」という久々の最悪の山行パターンでした。福島くらいならもう近いという認識になりつつある。
須賀川駅で出張終わりのKW氏をピックアップ。ここから登山口がまた長えんだ。いっそ飯食ってっちゃうかとたまたま見つけた喜多方ラーメン店へ。喜多方ラーメンは朝ラーメンの文化があるらしく割と早くからやっている店が多いです。このカロリー補給がのちに物凄く効きました。
川入駐車場
予定では御沢野営場に車を停めるハズが、満車らしく先に進ませてくれず御沢野営場から30分ほど下流の川入駐車場に車を停めました。
絶望していたらなんと途中で地元の方が御沢野営場まで車で運んでくれました。詳細は書けませんが田舎でのみ許されそうな輸送スタイルでした。
御沢登山口
ここからクソ長い登山の始まりです。
久々のテン泊装備での登りは思いのほか脚にきます。南アルプスみたいな樹林帯のまあまあの急登が続きます。
この日は曇りで夕方以降だんだんと晴れてくる予報でしたが、その割には遠くが見えました。
上十五里を過ぎるとだいぶ高度感が出てきました。ここまでスタートから1時間30分ほど。まだまだ先は長いです。
水場①
上十五里を過ぎると少し傾斜が緩んで稜線に続いていく、その途中に最初の水場があります。今回2.5L背負っていきましたが結果的には補給がなければかなり厳しかったです。必要な水分の計算式、体重(kg)×行動時間(h)×4から導かれる数字よりもう500mlが私には必要でした。夏場はここから500ml~1L多めにしても良さそうです。
地蔵山下分岐
T字路になっているこの分岐。此処から先はずっと稜線になります。岩場も多いのでグローブがあると良し。ここで装着しました。
分岐を過ぎるとピークに見えてくるのが三国岳避難小屋です。600mほどの登りです。
あとこの山、めちゃくちゃたくさんのトンボが飛び回っていました。ちょっと早いアキアカネでしょうか。
ここまで来ると振り返れば歩いてきた道が見渡せるようになります。序盤よりはややテクニカルですが、個人的にはこういう道は元気が出ます。
岩場はすれ違える場所がたくさんあるのでさほど渋滞はしてませんでした。
しかしどこを見ても山しかありません。贅沢な稜線歩きです。
剣ヶ峰
三国避難小屋直下のピークに剣ヶ峰。ここから避難小屋までは30分ほど。
嫌味な三国岳避難小屋
避難小屋とは言えど管理されていてちゃんと宿泊できる設備になっていて、コーラやお茶も販売されています。ここまでも十分長いし辛いのでここをゴールにしている人も多かったですが、可能なら切合小屋の方に泊まったほうが幸せだと思います。
なぜなら、山小屋のオーナー(?)が嫌味ったらしい爺さんだったからです。予約なしで来た他のパーティ(HPには予約不要と書かれている)に「予約してないのかよ」「まあ泊まれないことはないけど来るのが遅い(まだ15時だが?)」「しょうがねえな」とブツブツ文句を言っていたり、テン場は切合まで行かないとないですよね?と確認した我々も「今から行ったら2時間くらいで食事の準備中だから迷惑だ」「そんな遅いとテント張れるところはないよ」云々。たっぷり嫌味を言われました。
ちなみに切合小屋の人はそんな悪態つく人はおらず、テン場もまず張れなくなることはないくらい広かったので全く心配は要りません。あと小屋やテン場周囲のスペースや眺望も良いので可能なら切合小屋まで頑張ったほうが良いです。この爺さんに頼んで泊めてもらうなんて冗談じゃねえや。
三国避難小屋から先、切合小屋までのラストスパートは1時間〜1時間半ほどの道のりです。三国避難小屋直下のような岩場混じりの稜線をアップダウンしながら進みます。
一番高低差があるところでは鎖やはしごがかかっていますが、使う必要なく登れるので心配は不要です。
アップダウンを抜けると平坦で楽園のような雰囲気になってきます。
切合小屋・テン場
登頂開始から5時間、16時頃にようやく初日のゴール切合小屋に到着しました。テントは1泊1000円で昨今の北アルプスなどと比べ非常に良心的です。
ガスってますが飯豊山方面の山脈が一望できる非常に景色の良い場所です。テン場は小丘のようになっていて、比較的平らな辺縁や丘のてっぺんから順に埋まっていくようですが、見ての通り広大なスペースがあるので張れなくなることは絶対にないでしょう。三国避難小屋のジジイ、あいつ本当に何だったんだ。
テン場から切合小屋。左側の小さな小屋がトイレです。
飯豊山山頂自体は手前のピークに隠れて見えませんが、雪渓がたくさん残る左側の稜線が飯豊山山頂から飯豊山地最高峰の大日岳に続く稜線です。
本日のお宿
運良く端のほうの比較的平らな場所を確保し設営です。北鎌尾根では軽量化のためツエルト泊を考えており、今回もシミュレーション的にツエルト泊です。地面が柔らかいので岩を上手く活用したほうが良さげです。
切合小屋周辺にはベンチとテーブルがたくさんあり、さらに小屋の入り口の横には自炊用のプレハブがありました。切合小屋はビール(350ml, スーパードライとキリン)が900円、コーラなどソフトドリンクが500円でした。食料は売っていないので注意。
2日目 切合小屋〜飯豊山山頂〜下山
山ヤの朝は早い。3時を過ぎるとテントに灯りがつき始め、ガサゴソと音が聞こえてくる。
切合小屋から飯豊山山頂を踏破し下山するルートは標準コースタイムが8時間の長丁場なので、北アルプスのテン場くらい朝が早いです。
御来光というには昇りすぎていますが、山でこういう景色が見られるのは泊まりの醍醐味です。
飯豊山山頂へ登頂開始
2日目は14時頃から雨が降り始め、そのまま天気が崩れていく予報でした。スタート時点では晴れましたが何度かガスって晴れてを繰り返します。
手前のピークを超え→急降下→奥のピークに登り返す→山頂へのビクトリーロード、という道のり。
よく見るとすでに登山者がたくさんいます。
草履塚
最初のピーク。飯豊山への参拝でみなここで草履を履き替えたことからこの名が付いたそう。
緑に覆われた山肌には雪渓が多く残り、仙丈ヶ岳や立山によく似ていました。
ここまで来ると山頂が見え始めます。中央やや左のピークです。
ここが急降下して登り返すキツいポイント。何がキツいって帰りも登ることが確定していること。ピークに見えているのが山頂から15分程の位置にある本山小屋です。
テン場
本山小屋の直下のテン場。ここもスペースが広くて快適そう。ただし小屋・トイレまで距離がある上に登りなのと、水場は逆にまあまあ下っていかないといけないので不便そうではある。
テン場から水場に向かう道。左に見える、斜面から突き出た棒はフェイクでこの写真の右下の方に水が出ています。
本山小屋
本山小屋では登頂バッジや手ぬぐいのほかカップラーメンや飲み物類が売っています。カップヌードル600円、ソフトドリンク600円。ちなみにイイデリンドウが描かれた百名山バッジはここでしか買えないそう。切合小屋はオコジョのデザインのバッジでした。
ビクトリーロード
本山小屋から山頂へはほぼ平坦、10分ほど。ここが最後のわずかな区間にして最高の道でした。
飯豊山山頂2105m
2日かけてようやく辿り着いた山頂です。信じられないくらい深かった…。
飯豊山地は非常に広大な山地で、ここ飯豊山を概ね中心として四方八方に稜線が延々と伸びています。
最高峰、大日岳方面に続く稜線。行ったことないけど師匠いわく北海道の大雪山の雰囲気に似ているらしいです。しかし大雪山はもっと広い、と。それは人間が認識できるのか?
確かに、雑誌で見た大雪山のカムイミンタラはこんな感じだった。
不穏な空
めちゃくちゃ良い天気に見えますが、本山小屋の手前に居た頃は完全にガスっていて引き返そうかと思うレベルでした。我々の登頂を待っていたかのように奇跡的に晴れましたが、10分程でまた霧に包まれ始めたりしていました。
東の空には雨雲が立ち上がり始めていて、頭上には羊雲と薄く水平線を描いて広がる雲が確認できました。いずれも綺麗ではありますがいわゆる大気の乱れにより発生するため、数時間以内に天候が崩れるサインです。
下山
左奥に見える白っぽいところがテン場あたり、とりあえずの目的地になります。とても下山路には見えない。
飯豊山からの下山はアップダウンが多く、完全に下りだけになるのは稜線を終えて水場を過ぎるくらいからです。とはいえ我々は下山の脚には定評があり、切合小屋から御沢登山口まで3時間のペースでした。高山植物に疎い私ですが下記に見つけたものをいくつか。
下山後の楽しみ
登山口からの帰路、車に乗って15分くらいで出現する飯豊の湯という温泉を利用しました。ほぼ登山者が占めているくらい皆が寄る定番のようです。500円という良心的価格。泊まることもできるそうなので前乗りする場所として良いかも知れません。遠いけど。
下山後の焼き肉は郡山駅近くの「牛豊」というお店に行きました。以前利用したもうもう亭が予約で埋まっていたため急遽調べた店でしたが、ここがかなり良かったです。
さすがに食べ放題よりは高く付きますが良い肉の割に良心的価格。そしてご飯の大盛りが本当にデカくて満足。
3人以上いると、ちょっと良い焼肉屋でも酒がなければ人数の暴力で案外安上がりになるので我々はもっぱら普段行かないちょっと良さげな焼肉屋に行きます。
飯豊山の感想
冒頭で述べた通り本当に素晴らしい山でした。スケール感がとにかく尋常じゃない、関東圏なら北アに行かないと味わえない(場所によっては北アでも味わえない)くらい壮大な景色が待っていました。下界と完全に切り離された山の深部に広がるあの景色は一見の価値があります。こんな遠い場所なのに登山者がめちゃくちゃ多くて驚きましたが、それも納得の魅力がありました。
ただしその分たどり着くまでの道のりはハードです。危険箇所は少ないもののアップダウン続きなので、行きも帰りもつらい丹沢のヤビツ峠ルートのあの感じです(もっと長いですが)。水の補給は充実している方だと思いますが、食料が帰る場所がほぼないので行動食をたくさん持った方が良いです。
飯豊山地はデカすぎる
ちなみにどれくらい広大な山地なのかというと
これが全体図なのですが
こんかいのルートは全長の半分にも満たない、ほんのごく一部でしかないことが分かります。下山後にこの看板を見て3人で絶句しました。10回くらいは来ないと飯豊山を味わい尽くせないでしょう…。
飯豊はいいで!