山と自転車

登山や自転車に関することを綴っています

【難所シリーズfinal】冒険的登山の集大成。登山技術の全てを使い切った北鎌尾根アタック②2024.08.10-12

day2 北鎌尾根踏破へ

いよいよ本番、ヒュッテ西岳をスタートとする北鎌尾根アタックの始まりです。先の記事で書いたように他に前例がない(私&師匠調べ)コースなので、なるべく詳細に時間を記載したいと思います。計画編・初日編は↓

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行程と時刻表

【day2 ヒュッテ西岳→北鎌尾根を経て槍ヶ岳山荘】

 距離7.5km 獲得標高1539m 行動時間13:21(休憩1:04)

【行動表】

※先頭は時刻、()は所要時間

04:21 ヒュッテ西岳→水俣乗越(01:53)

05:14 水俣乗越→北鎌沢出合(01:26)

06:40 北鎌沢出合→北鎌尾根稜線(02:47)

09:27 北鎌尾根稜線→天狗の腰掛け(01:25)

10:52 天狗の腰掛け→北鎌尾根独標(00:48)

11:40 北鎌尾根独標→北鎌平(03:53)

15:33 北鎌平→槍ヶ岳山頂(01:49)

17:22 槍ヶ岳山頂→槍ヶ岳山荘(00:19)

17:41 槍ヶ岳山荘

北鎌尾根稜線に出るまでのルートでミスをして北鎌尾根のコルより少し先に出る形になりました。槍ヶ岳山頂直前のポイントである北鎌平から先は意識的にゆっくり歩いたのでそこで時間が足された感じですが、稜線に出てから槍ヶ岳山頂までの行動時間は約8時間。かなりの長丁場でした。

北鎌尾根 稜線に出るまで

04:21 ヒュッテ西岳出発 

正直今日のうちに稜線を抜けられない可能性も考えてる

今日の日没は18:30だからどんなに遅くてもそれまでに槍に辿り着いてないとアウト

持ち時間は14時間か…

13時間で終わらせるよ。目標は17時に槍。

今日の行程はコースタイムもない未知の世界。日没以降の行動はまず無理なルートゆえ、日没までに抜けられないと判断したら明るいうちにビバークポイントを探さなければなりません。いつもはまあなんとかなるっしょと思ってる私ですが、今回は無事に抜けられるか確率と稜線ビバークとなる確率は半々だと思っていました。

恐怖の北鎌尾根、開幕。

0時近くの常念岳方面の空

AM4:00頃の常念岳方面。君は真夏のオリオン座を知っているか。

2日目は非常に長い行動時間が予想され、4:30に出発する計画でした。真夏とはいえさすがにまだ真っ暗で、ヘッデンを使っての山歩きでした。冬の星座の代表格のオリオン座ですが、真夏でもAM3-4時くらいの東の空にその姿を見ることができます。

槍ヶ岳方面。すでに行動開始している登山者がたくさん。

夜明け直前の北鎌尾根

ヒュッテ西岳から水俣乗越の道のり

ヒュッテ西岳→水俣乗越の余計に追加されたこの行程。幸いにも下り基調で体力&時間的にもそれほど負担にはなりません。

ただし、コルを登り返してからのこの景色、良く覚えておいてください。トラップ的に分岐していて、2人がいる左方向が正解です。

右側のトラップルート

ヒュッテ西岳→水俣乗越で迷うとすればこの一箇所だけで、迷ったら左に進めば問題ありませんが、ミスルートの右側もだいぶ自然に見える上に結構しっかりと道になっているのでよく注意してください。

槍ヶ岳と北鎌尾根の全体像

水俣乗越から下る北鎌沢出合方面

槍ヶ岳 モルゲンロート

05:14 水俣乗越

ヒュッテ西岳から53分、CTの01:10より巻いたペースで北鎌尾根スタート地点の水俣乗越へ到着です。

ここからすでにバリエーションルートが始まるため、ロープを越えてしまえばもう戻ることはできません。十分に補給をして足を踏み出します。

ここから見える谷底のもう少し先まで700mほど下ります

-バリエーションルートスタート-

半年ほどのブランクでバランスを崩し続けるHG氏

水俣乗越からロープを越えて突入した瞬間から感じます。ここはヤバい、と。

具体的には地面が蟻地獄のようにすべる上にバランスを取れる掴み場所もない、下山技術の最高峰が求められる地獄の急斜面です。

ずっとこの地獄が続くわけではなく、ある程度下ると草木をかき分ける巻道に合流しますが、足場が固まるわけではないので脚のグリップをかなり消耗する下りが続きます。

しょっちゅう滑っていつも被写体ブレをするHG氏

エグいほどのハエやアブが飛び散らかす中、ときに藪漕ぎで進みます。

朝陽に照らされる北鎌尾根

だいぶ斜度が緩んで下りきった感じがしましたが、そこから先がまた長い。写真奥の方の白いガレ場くらいまで進みます。

稜線との高低差 北鎌沢出合から稜線までは700mほどの急登です

06:40 北鎌沢出合

水俣乗越から1時間26分、スタートから2時間20分で北鎌沢出合までやってきました。多くの人が初日にここまでやって来ると考えると、実質的な2日目スタート地点となります。

稜線に出てから距離はわずかだけど7時間かかるらしい

17時に槍目標なら10時までに上がってれば勝ち?

2時間半で700登ればいいわけね

最終的には数組追い抜いて踏破しましたが、この日の最後尾パーティは我々でした。タイムリミットという考えで行くと10時までに北鎌のコルまで上がっているかどうかというのは一つの目安になるかと思います。他のパーティも見ていた感覚として、それ以上遅くなるペースでは当日中に抜けきるのはかなり難しいと思います。

-水場の話-

ちなみに北鎌沢出合をさらに少し下ったところに水場があります。あと稜線に上がるまでの道に数か所ありますが、後者については年によって状況が異なるそうなので、どこが最後の補給箇所か分かりません。今回は水が豊富だったのか、中腹の水場マークよりさらに先でも湧水がありました。

稜線に出てからは一切補給できなくなるのであまり攻めない方が良いです。量も普段よりは多めに持っていった方が良いと思います。私とHG氏は稜線に上がった時点で2L持っていましたが、終盤は本当にカツカツで今までで一番水不足を感じました。3L持って行くべきでした。(最悪ビバークまで想定するならそれでも全然足りませんね)。

運動自体ではもちろんですが、普段の登山道よりも緊張状態が続くのでなおさら喉が乾きます。

地図上の水場マーク

-北鎌沢出合から稜線まで。基本は右へ進め-

北鎌のコル方面 中央の凹んだ場所が最初の目的地です

さあ、北鎌尾根の核心部スタートです。まずはこの急登ですが、概ね足場はしっかりしていてゴールが(視覚的には)近く見えていて序盤の斜度はそれほどキツくないので最初は拍子抜けするんですが、指数関数的に斜度が増していくので中腹を過ぎてから一気にきつくなってきます。

また、いくつか分岐点がありすでにルートファインディングが試されます。分岐自体は割と明瞭で、基本的には右へ進み、最後の方の「クライマーズホイホイ」のポイントは左に曲がるのが正解です。しかし、我々はずいぶん予習していったはずですがクライマーズホイホイの先のどこかで間違えてしまい、北鎌のコルより少し先のポイントで稜線に出ることになりました。先行していた2パーティも同じ道を歩いてたので間違えやすいポイントなんだと思います。

ぱっと見ではコルまですぐそこに見えるが…

最初からゴールが見えてるのに近づかないのである

水場は一般登山道のような水場ではなく、細い沢のような湧水です

指数関数的に斜度が増し始めたところ。ほぼ直登じゃねえかというレベル。

分岐点。分岐があると意識していれば案外分かりやすいです。

-クライマーズホイホイ-

ここに辿り着いたときにはそれほど意識していませんでしたが、他の登山者の記録を見返しつつ後から振り返ると有名なクライマーズホイホイとの分岐点はおそらくここだと思います。

師匠が立っている位置から草木をかき分けるように道が続いていて、ぱっと見で明らかに道になっているのは左のガレ道ですが「原則は右へ」を守り続けていると間違える可能性があります。

我々も「原則は右」「クライマーズホイホイに注意せよ」と各々予習してきたものの、実際に現地では左に行くのはここでいいのか?と疑心暗鬼になりながら進んでいたので可能な限り事前にクライマーズホイホイのポイントの写真などを見て現地ですぐ気付けるように氏ておくべきだと思います。

クライマーズホイホイは最終的に進むことが出来なくなり&戻ることも非常に困難になる非常に危険なルートだそうで、過去に死亡事故も起こっている救助要請案件になるサドンデスポイントです。

クライマーズホイホイ分岐を左に進んだ

さて我々は疑心暗鬼になりながらも死の分岐点は正解の左に進むことができました。しかし、この先のどこかで我々は間違えました。

間違えた分岐候補①

間違えた分岐候補②

どこでミスをしたのか結局分かりませんが、写真を振り返っていてクライマーズホイホイより先で分岐していそうな場所がいくつかあったので載せておきます。

※他の方の記事ではクライマーズホイホイの分岐が最後の分岐点だと書かれているので、我々がクライマーズホイホイよりもっと手前で間違えていたり、その先で普通は行かない方向に間違えた可能性が大いにあります。

まだ間違えたとは思っていないガレ場

初めてミスったかと疑い始めた地点

そしてここ。段々と足場の岩が小さくなり…もはや砂となり絹ごし豆腐の上を歩いているような、蟻地獄でもがく蟻のような気分になってきたところで初めてルートミスの可能性に気づきました。

稜線方向。正解の北鎌のコルは右側の凹んだところ。

急斜面でグリップが一切効かない足場で、草木の頼りない根本を掴みながら辛くも前に進みます。どう考えても下れる道ではなかったのでミスと気づいていても引き返す気には全くなりませんでした。

振り返って1枚。ここを下るくらいなら上がって詰む。当時本気でそう思いました。

草木をかき分け淡々と進む43歳の壁挑戦者

結果的には草木から上半身が出るくらいに進んだところで、このまま左方向に進むか右方向に少しトラバースして登るかの分岐がありました。前述の先行2パーティはトラバースする方向のルートを進んでいたので我々もそれに倣いました。

ちなみに左に進み続けると切り立った崖に出て詰むという噂です。

登ってきた最後の道。どこが道かって?私にも分かりません。

09:27 北鎌尾根稜線

最後の最後でミスをしましたが、タイムリミットとして設定していた「10時に稜線に出る」よりだいぶ良いペースで稜線に出ることが出来ました。

北鎌のコルの、少し先で稜線に出た

稜線に出てすぐ、ビバークポイントを発見

稜線に出てから槍ヶ岳まで

いよいよ核心部のさらに核心部。稜線です。

稜線に出たら独標までは道も分かりやすくて難易度は低いみたい

そうなん?

しばらくは落ち着いて歩けるな

09:27 稜線

登ってきた方向。大天井岳から続く稜線。

西方面。笠ヶ岳とか双六岳、黒部の方向。

稜線に出てすぐはまだ草木に囲まれていますが、切れ間からはすでに絶景といえる景色です。この山行で一番思ったことですが「北鎌尾根は難易度の高いアタック」ということにばかり気を取られていて「危険でも人を惹きつけるだけの絶景ルート」だということに、ここに来て初めて気付きました。

序盤はまだまだ草木をかき分けて進む

※正しい道です

北鎌のコル方面を振り返る

稜線に出たらまず目指すのは北鎌尾根の独標です。

北鎌のコルから天狗の腰掛けの手前までの稜線。すでにギッザギザです。

独標が近づいてきた

天狗の腰掛けへ

10:52 天狗の腰掛け

北鎌のコルの先の地図上のチェックポイント、天狗の腰掛けです。高台になっていて360度パノラマの絶景が広がります。

先から振り返って見るとまさに天狗の腰掛け

西方面の稜線

冬しか歩けないというバリエーションルート、硫黄尾根

この辺から先、道の両端は常にこんな感じです。ミス=即死。

-体力的核心部、天狗の腰掛けから独標の道-

我々チームn=3の私見ですが、体力的に一番きつかったのは独標を越えるまでのここでした。よく「独標から先が鬼門」的なことが言われている北鎌尾根ですが、独標までがむしろめちゃくちゃキツく感じました。稜線に出た直後のやり取りを覚えているでしょうか。そう、師匠は嘘つきです。

激しいアップダウンのダウンの方

アップの方

1ミスで即死。ずっとこんなんです。

3点保持、体重をかける時には必ず崩れたり動いたりしないか確認してから、という超基本技術を忠実に守りながら進みます。一般登山道と異なり安全に進めるラインを常に見極め続けなければなりません。

独標手前のビバークポイント

独標が壁のように迫る位置まで進むと有名な難所ポイント「コの字」が近いです。

トラバースルートに張られたロープ。極力信用せずに進みます。

北鎌尾根は基本的に稜線のトップをなぞるように進むのが正しいルートとされていますが、独標に関しては右巻きで進むのが一般的なルートです。「コの字」はこの巻き道の途中に出現します。

「巻き道」ってトップを巻いて楽できるんじゃないの?ハァハァ

俺もそう思ってたゼェゼェ

独標まで楽とか言ったの誰

・・・

-コの字-

師匠もHG氏も割と難なくクリアしていきましたが、個人的にかなり怖かったコの字です。やはり上側がせり出しているだけで途端に難易度が急上昇します。これでも地震で上部が崩落して難易度が下がったというので驚き越えて呆れです。

コの字にハマって詰んだ私。ハイハイでクリアです。

まさに断崖絶壁のトラバース

◯で囲ったところがコの字です

コの字を抜けても決して気は抜けない恐怖の北鎌尾根

登っている仲間の勇姿。崖で救助待ちの絶体絶命にしか見えない。

足場も手をかけるポイントも、常に探し続けて進む天然の超ハードボルダリング

コの字を越えてコルが見えてくるとようやく、恐怖の独標の巻き道終了の知らせです。

遂にラスボスが姿を見せる

11:40 北鎌尾根独標

登りきって槍ヶ岳が見えるとついに恐怖の巻き道終了です。当初独標の頂点はスルーするつもりでしたが、独標トップは案外すぐそこに見えたのでザックをデポして踏んでくることにしました。実際10分もかからない程度の道のりでした。

北鎌独標2899mの山頂看板

師匠、北鎌独標に立つ

独標トップから槍。ようやっとずいぶん近付きました。

看板は固定されてなかったので槍とともに。

槍までの残り道

ようやく残る最後の道のりの全体像が見えました。槍は近いけれどまだまだ遠いです。

-昼食-

「10時に稜線、12時に独標」というのが事前計画でした。独標を越えたところでしっかり休憩&食事を摂りました。

正直食欲はそれほどありませんでしたが、北鎌稜線でのハンガーノックは死ぬ以外の転帰が見えないので1000kcalを目標にしました。モンベルのリゾッタ2袋とカロリーメイト2本を無理やり胃に流し込んだあとは、4袋分のウインナーを全て焼いて3人で分けました。

動物性蛋白が不足しがちな登山においてウインナーは保存と調理の手軽さ、そのままで食が進む点から非常に優れた食事でした。

12:22 独標出発

ここからまだまだ怒涛のアップダウンが続きます。

中央よく見ると先行登山者がいるのが見えますでしょうか…

このあたりで朝北鎌尾根を眺めていたスタート地点の対面くらいになるので、ここまで来てようやくスタート地点周囲が見えるようになります。

赤い屋根のヒュッテ西岳

まさに夏、な空

一番懸念していたのは天候でしたが、予報通り曇りはじめてきたもののまだまだ好天のままでした。

ずっとこれ

一度滑ったらどう考えても落ちるところまで落ちるやつ①

一度滑ったらどう考えても落ちるところまで落ちるやつ②

ここから先は原則として稜線の頂点を忠実になぞるように進むのが正解とされるルートです。

巻き道で登りから逃げたつもりでも結局はこうなります

しかし北鎌平手前で唯一、敢えて巻き道を選択しました。

北鎌平直前の巻き道

終盤に差し掛かり登るのが嫌になり「ワンチャン行けたらラッキー、ダメでも後から登って修正すれば良い」という発想で逃げるように進んだこの巻き道でしたが、結果的には大成功でした。ピークの登りを一つカットできた上に、時間的にもだいぶショートカットできました。

ガスってきたなと思ったら雷鳥エンカウント

北鎌平手前の巻き道

北鎌平に直接出る

先の巻き道ですが、北鎌平手前のピークをパスして直接北鎌平に抜けることができます。登りが1回で済む上にトラバースしながらなので直登に比べ斜度がマイルドになります。

15:33 北鎌平

独標を過ぎて深刻な水不足に悩まされながら、いよいよ山頂前最後のチェックポイント、北鎌平にたどり着きました。

よし、これで勝ち確定した

槍まですげーゆっくり行っても2時間くらい?

もうコーラとビールのことしか考えてない

ここで残り登坂は280mほど。師匠から100mlほどの水を分けてもらって残り300ml弱。1mlで1m登らなければなりません。さて…

霧の中からラスボス登場。最後のビクトリーロード。

槍が出ている間を狙って1枚

写真は貴重な一瞬を切り取ったもので、槍が10秒間ほど姿を現しては消えていくのを繰り返していました。

北鎌尾根、槍ヶ岳頂上直下

雲海に槍の影

槍ヶ岳山頂の祠を遂に捉えた

北鎌尾根から見る東鎌尾根

-恐怖のチムニー 最後の試練-

北鎌尾根は槍ヶ岳山頂に直接出てゴールになり、最後にチムニーの登坂が待ち構えています。体力を使い果たし集中も切れていた頃だったのもありますが、ここはコの字どころでなく難しくて本当に恐怖を感じました。

最後の登坂は山頂までずっとこれ

恐怖のチムニー 先行パーティはロープを使っていた

ここが非常に難しいポイント。前のパーティの足取りを参考に必死に取り付きます。そしてここをクリアすれば終わりかと思いきや、この先の槍の山頂までが真の恐怖ポイントでした。余裕がなさすぎて写真を1枚も撮っていませんが、今思うと有名なあと少し頑張れの看板も見つからなかったのでルートをミスっていた可能性があります。

17:22 槍ヶ岳山頂

師匠43歳の壁を越える。ちなみに私も槍ヶ岳初登頂です。

稜線上8時間の行動を終え、遂に槍ヶ岳山頂を踏破しました。師匠は無事死なずに43歳の壁を乗り越え、私は記念すべき槍の初登頂を果たしました。今回で槍穂高はやり切った感じがあるのでもしかすると私は「槍ヶ岳?北鎌尾根からしか登ったことないよ?」なイキリ登山家になってしまうかもしれません。

遅い時間ゆえ、北鎌尾根組と槍ヶ岳山荘組が半々くらいという奇跡の山頂

 

もはやコーラとビール補給所にしか見えない槍ヶ岳山荘

大キレット〜北穂高岳方面

17:41 槍ヶ岳山荘

人生最高のコーラ

槍ヶ岳山荘〜最終日下山まで

ここから先は北鎌アタック後の話なので写真で淡々と行きます。

北鎌尾根踏破後の日没の空

当初の見込みより早く、良い感じの夕暮れ時。槍の影再び。

みんなが同じ方向を見る一体感

槍ヶ岳山荘

全員初宿泊となる槍ヶ岳山荘

入口

ごはんおかわり自由のオアシス

槍ヶ岳と夜の空

殺生ヒュッテ

槍と星空

大キレット方面と天の川

西の空と星ぐるぐる 右下にはペルセウス流星群

day3 果てしなく長い下山

常念岳

八ヶ岳連峰

南アルプスと富士山

槍穂高の稜線の影がくっきり

西鎌尾根

雲海はさすが海そのもの 

焼岳、乗鞍、御嶽山

朝7時台で早くも渋滞する槍ヶ岳

上高地まで約20km, 1500mの急降下

最終日はよく整地された一般登山道を延々と下るだけです。横尾から先はいつまでも終わらなくてイライラしてましたが空はこんなにも綺麗でした。

殺生ヒュッテから見上げる槍

槍沢の景色。何気に初めて見ました。

大曲。左に進めば2周目開始だドン!

地獄の上高地

イライラしながら本当に足の裏の限界を感じながら6時間半でようやく上高地に帰ってきました。下山後の焼き肉のため敢えてカロリーメイト1箱だけで乗り切りました。

ほぼ河童橋からバスターミナルまでずっとバス待ち渋滞

上高地は本当に原宿かと思うくらい人が居て、下界に帰るのも一苦労でした。バス待ちはこの有り様で、タクシーは45分待ってようやく乗れました。運転手の方曰く

・連休中日は初めて15時でさわんど→上高地を打ち止めにした

・最後の客をさわんどに下ろすまで19時半までかかった

・朝9時頃にさわんどに来た家族は12時過ぎになってようやく上高地行きのタクシーに乗れた


等々。もう二度と3連休に上高地に近寄ることはするまいと誓いました。実際、もう上高地スタートで歩きたいルートは全てやり切りました。

北鎌尾根アタックの感想

全てを使い切った登山

体力、集中力、登坂技術にルートファインディング、装備品の選択等…

私の持てる登山技術の全てを使い切った、というのが一番の感想です。これ以上のことは私にはできない、と確信しました。5回やったら1回は死ぬ気がします。もうやりたくねぇです。

北鎌尾根の難しさについて

実際に歩いて感じた難しさをいくつか羅列してみます。

・ミス=即死の環境によるストレス下での長時間行動
・道として安定していない

北鎌尾根はいわゆる登山道ではないので、断崖絶壁の中進めるところを探して進むという状態になります。また、行けると思った岩が動いたり割れたりして恐怖心にやられて判断や動きが鈍り、距離や獲得標高以上に疲労が蓄積します。

ちなみに私は割れる岩がトラウマになって、踏破後の夜は掴んだ岩が割れて滑落する夢を見て飛び起きました。

・ルートファインディング

天気が良く目的地が見えていたこともありそれほど困りませんでした。が、踏み跡が複数あるポイントが多いのでどれを行くべきかという判断を常にしなければならず、精神的な負担が大きいです。

ただし、基本は稜線をなぞるということを意識していれば大きく間違えることはないと思います。多少それてしまっても稜線トップを目指せばリカバリーできるので、マップとGPSが機能している限りはまず大丈夫です。むしろ北鎌沢出合からの直登に要注意です。

・補給箇所がないこと

独標以降で散々苦しみました。できるだけ軽くしていきたい心理的に、いつもの感覚で水の量を決めてしまったのが敗因だと思っています。普段の倍くらいは持っておくべきでした。

・3日間トータルで超タフな行程

今まで挑んだ数々の難所の中で総合的に一番きつかったのはやはり北鎌尾根だと思います。(後述しますが核心部に限ればジャンダルムの方が難易度が高いと感じました。)

北鎌尾根はそもそもアプローチまでが遠いことが高難易度の一因です。上高地から入る今回の行程では初日と最終日に20km近く歩きますし、本番の2日目は距離こそ短いものの14時間近い行動時間が求められます。

もう一つ、表銀座縦走路から入るルートでは初日の距離が少し短くなるそうですが、1日で少なくとも大天井岳を越えなければならないのがどう考えてもハードです。

他の難所シリーズと比較して

やはりジャンダルムはヤバかった

我々の難所攻略シリーズは5年前の剱岳登山から始まり、一般登山道最高難易度と名高い大キレット、最も有名なバリエーションルートのジャンダルム、と続き今回がその集大成でした。

あくまで我々3名の意見ですが、純粋な難易度は西穂→奥穂のジャンダルム破線ルートが最も難しかったというので意見が一致しました。

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大キレットと剱岳

大キレットも剱岳も、ジャンダルムや北鎌尾根に比べればやはりあくまで一般登山道の範疇だったんだなと思いました。もちろん高難易度の道でしたが、足場と掴み手はしっかりしていましたし、ルートファインディングに困ることはありませんでした。

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本当に本当にキツかったね。よく付いて来てくれた。

これで難所シリーズは卒業かな?

もう二度とやらない

こういうのはもう卒業しよう

 

めちゃくちゃ長い記事になってしまいましたが、晴れて5年に渡る難所攻略シリーズをようやく卒業となりました。今後は旅行がてら遠征して地方の百名山を登るとかしていきたいです。

~Fin~