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登山や自転車をはじめとした多趣味ブログ

【八ヶ岳マイナールート】残雪期の杣添尾根を歩く!2025.03.23

こんにちは!ついに待ちに待った春がやってきて身体が疼いて仕方がありませんね!

と言いつつ今冬は例年以上に冬の唯一良いところである雪山登山を満喫できて何だかんだ良い冬の過ごし方をしたと思います。3ヶ月で5回も雪山に行けて感無量であります。

そんな今シーズンの雪山納めを兼ねて、ここ最近気になっていた八ヶ岳杣添(そまぞえ)尾根ルートを歩いてきました。

杣添尾根って?

みんな大好き八ヶ岳。私のホームマウンテンでもある八ヶ岳ですが、南端の編笠山に始まり阿弥陀〜赤岳、硫黄岳、さらに北八ヶ岳の天狗岳や北横岳、北端の蓼科山etc...一般的なルートは殆どが西側からのアプローチです。

今回歩いた杣添尾根は赤岳と硫黄岳の間に位置する横岳に繋がる、八ヶ岳東稜ルートです。八ヶ岳のメジャーなルートはほぼ歩きましたが東からのアプローチは初めてでした。

先に結論を書いておきますがびっくりするくらい気持ち良くて歩きがいのある珠玉のルートでした!赤岳や硫黄岳に関しては個人的にはメジャールートよりもこちらからのアプローチのほうが感動しました。

アクセス

冬季〜残雪期の杣添尾根ルートの登山口は下記の横岳登山者駐車場です。別荘地の中にある駐車場で、キャパは12台です。今回は朝7時過ぎに到着して自分たちを含めて4台でした。

中央道須玉ICを下りて清里を抜けて長野の小海町方面に向かう途中にあります。余談ですがこのあたりの道は小海リエックスやシャトレーゼ八ヶ岳スキーバレーなどスキー場へのアクセスルートなので、気持ち的に全く登山感がしませんでした。

人が少ない分雪がかなり残っており、この別荘地帯に入ると路面も凍結していたのでスノータイヤ+4駆は必須です。ジムニーでも2駆モードではスリップしました。

しかし山道もないのでアクセス自体は美濃戸口など西側よりも圧倒的に楽でした。

冬季の駐車場について

杣添尾根ルート登山口に近い駐車場は3ヶ所ありますが、下記のゲート開放期間以外すなわち冬季〜残雪期に利用できるのは横岳登山者駐車場のみです。

南牧村HPより引用https://www.minamimakimura.jp/content/files/sangyoukensetsu/kensetsu/20240501-083915.pdf

比較的マイナーなルートですが、それでも夏山ハイシーズンには「朝4時でギリギリ停められた」「6時には満車だった」等々恐ろしい噂が聞こえてきます。

ルート・コースデータ

杣添尾根から稜線に出て赤岳を目指し、時間的に厳しそうだったので赤岳展望荘の手前で引き返し、代わりに横岳のピークを踏んで戻ってきました。

杣添尾根トップから横岳までであれば獲得標高約1000mで、その先の硫黄岳に至るまで危険箇所もほぼありません。逆に杣添尾根トップから赤岳方面は落ちたら即死ポイントが多く、かなり難易度が高いです。

杣添尾根 山行記録

今回のメンバーはいつもの師匠、私、そして先月赤城山にて雪山デビューを果たした(させた)後輩のSW君の3名です。彼らは初対面ながら同じ業種で人間的にも合いそうだと思ったので私が触媒を務めました。

AM7時頃 横岳登山者駐車場

私とSW君は4時半に立川を発ち6時に中央道双葉SAで師匠と合流しました。ここから駐車場まで1時間強。冬季は人が減るから大丈夫だろうと踏んでいたものの、代わりになる駐車場がないと聞いていたので7時現地着を目標に計画しました。

最初は別荘地の道路の間を突き抜けるように進みます。道路を歩いても良いですが朝の時点では凍結していて歩けたもんじゃありませんでした。

鹿よけゲート

前半戦、樹林帯を抜けるまでは八ヶ岳らしく白樺の木に囲まれながら進みます。天気は良くとも爆風なのが冬の八ヶ岳、この日も例外ではなく風速15m/sの予報でした。

樹林帯を抜けるまで景色は変わらないとみせかけて徐々に山に近づいたのが感じられます。写真は木々の間から見えた赤岳頂上山荘。

森林限界を抜ける瞬間の景色。いつどこの山でもこの瞬間はたまりませんね。やはり山は体験なのであります。

振り返って一枚。少しもやっていたもののまだ雪が残る美しいふる里の情景が味わえます。

森林限界を超えたあとは真っ白な稜線歩き。もう雪がなくなっているかな?と思っていましたがまだまだたっぷり残っていて、残雪期とはいえど感覚的には厳冬期と遜色ありません。

森林限界を抜けると赤岳が視界に飛び込んできます。

写真には収まりきりませんでしたが、左手に赤岳、右手には硫黄岳までを一望するこの稜線。冒頭で西のメジャールートより良かったと言った所以です。

振り返って1枚。遠目には秩父最高峰の金峰山が見えていました。

頂上直下はやはり斜度が上がります。ほぼ沈み込みもないくらいトレースが付いていたから良いものの、厳冬期でラッセル必須のコンディションだった場合はここまですら来られる気がしません。

やはり君はモッてるな

先月の赤城もとんでもなかったし

素晴らしい

確かに天気運は結構良い方かもです

↓参考に、過去一番の最高コンディションの赤城山。

www.mount-road.com

三叉峰 杣添尾根トップ

アタック開始から約3時間、八ヶ岳主峰に到達。

樹林帯を抜けた頃には風が収まってきましたがやはり冬の八ヶ岳。シュカブラ(雪表面に風によって描かれる文様)がその環境の過酷さを物語っています。

当初横岳〜硫黄岳を歩く予定でしたが普段より早めのスタートだったことから赤岳を目指してみることにしました。もちろん、初心者の彼が居るので無理ない範囲で。

せっかくだから行ける範囲で行ってみましょう

まったく急ぐ必要はないからね

雪山で一番大切なのは登頂を目的にしないことだよ

雪山で遊ばせてもらえた、くらいの気持ちで

分かりました、死なない範囲で頑張ります(震)

そう、決して最近未登頂登山が多めなことへの言い訳ではありませんが、雪山はどんなにコンディションが良かろうと夏山以上に1ミスが死に直結し得るため、この気持ちの持ち方は非常に重要です。以前厳冬期黒戸尾根をアタックした時からずっと心がけています。

www.mount-road.com

左から、赤岳、中岳、阿弥陀岳。その奥には権現岳の一部と編笠山。こうして見ると西側と東側で随分と表情が異なりますね。東側(写真左側)は雪で覆われた気品のある美しい山容、西側(写真右側)は対照的に岩肌の露出が多くカッコいい感じ。

恐怖のトラバース

赤岳-横岳間は非積雪期は基本的な岩場歩きになれていれば問題ありませんが、積雪期はなかなかの難易度です。写真中央をよく見ると…

恐怖のトラバースです。ここは稜線トップを行くと断崖絶壁になってしまうのでこのトラバースを行くしかありません。

こえー!タノシー!気持ちー!!

最高だね!

(こいつら正気かよ)

斜度がきつい上に下はこんな感じなので滑落したらまず助からないでしょう。しかし雪が非常に固く締まっており、トレースも踏み固められていたためほぼ足場が崩れることがなく、また持ち手となる岩が全く無い区間はわずかのため見た目ほど不可能な道ではありませんでした。

ピッケルがアンカーとしてよく機能してくれて、アイゼンの刺さりも最高に気持ち良かったので毎度のことながら機材に救われているのを実感します。

しかしそうは言ってもこれが降雪直後だったり人が入っていない時期だったとしたら間違いなく撤退していると思います。その時期なら迷わず硫黄岳縦走を選びます。自分の技量と雪山のコンディション、この辺りの判断に自信が持てないうちは単独で入ってはいけないルートだと思います。

恐怖のトラバースを過ぎると今日一番の急降下を経て赤岳展望荘〜赤岳山頂への登り返しに突入します。赤岳山頂は目前ながら、雪山の登りであることを考えると時間的に余裕があるわけではありません。

また彼の精神的&肉体的疲労も考慮し、結果的には赤岳展望荘の手前、写真中央下の岩の辺りで引き返すことにしました。

三叉峰と赤岳展望荘の間のコルになっているところで、この岩が風よけになってくれたため落ち着いて昼食を摂ることができました。

ここを山頂とする!

ここを山頂とする!

ということで岩のてっぺんを本日の我々の山頂としました。時刻は12時半頃。

赤岳に続く登り。あとちょっと感ありますが速くても1時間はかかるでしょう。

登ると阿弥陀仏になってしまう…南無阿弥陀仏な阿弥陀岳。

赤岳側から見て例のトラバースの手前。往路では登りだったのでそれほど意識しませんでしたが、復路では下りになるため結構おっかないです。岩の上は雪というか氷になっていました。この写真では下が平地になっているように見えますが…

谷側は常にこの景色。やはりワントラブルが即死に繋がる場所です。

頂上直下決死のクライミング

例のトラバース。さすがにやり過ぎでしたね。

再びの三叉峰

なんとか全員五体満足で帰ってきました。あとは下るだけと思いきや…

ザックデポって横岳までは行こう

一つはピークを踏みたい

悪いが行かせてもらうね

ということだから先に降りててくれ

お気をつけて(引)

横岳山頂

ということでサクッと本日のピークハント。三叉峰から15分くらい、往復で30分もかからないくらいでした。

私と師匠

不思議なもので”我々の山頂”から距離的には1kmも離れていないのに、山の表情は随分と違って見えました。岩肌が露出している西側の斜面がより多く見えるので北アルプスのような急峻な氷と岩の殿堂の装いです。

強烈な海老の尻尾。写真右側が西なので冬の気圧配置である西高東低がよく現れています。

いつまでも見ていたい景色は滞在するのが困難な場所。特に冬の八ヶ岳なんて極寒の爆風で1秒でも早く逃げ出したくなるエクストリーム環境ですが、この日は晴れ通しで風速も体感的には10m/s以下くらい穏やかだったのでなかなかモッてる日でした。

三叉峰からは一気に1000m下るだけ。ところどころで尻セードが使えますが、樹林帯以降は滑るには斜度がゆるいので歩くしかありません。

残雪期の杣添尾根まとめ

マイナールートの中では比較的有名な杣添尾根。想像していたよりずっと素晴らしかったです。樹林帯を抜けてからの高度感を伴う全方位の眺望はこれまであるいた西側のメジャールートではなかなか体験したことがありません。登山口までの運転もだいぶ楽でした。

しかし雪山登山としてはそれなりに高強度。ラッセルとなると三叉峰まで辿り着ける気もしなければ登ってみたいとも思えないので案外残雪期というのは人が少ないながらトレースが確立していて良い時期なのかもしれません。ぜひ季節を変えてまた歩いてみたいと思う道でした!

おまけ 下山後のいつものやつ

下山後は温泉と美味い飯。これなしに登山は終わりません。このあたりはスーパー銭湯的に綺麗な風呂でもちゃんと温泉なのが良いところ。

ヘルシースパサンロード たかねの湯

サンロードとは山梨県ローカルチェーンのドラッグストアですが、なんとスーパー銭湯も経営しており現在山梨県内に3店舗。私は山梨在住時代に大里町のヘルシースパサンロードへよく行っていましたが、そのうちの一つ、たかねの湯が帰り道のちょうど良いところにありました。広くキレイでサウナ水風呂(心停止しそうなくらい冷たい)が完備されサウナーにもおすすめ。

焼き肉チファジャ

学生時代によく行っていた甲府の焼き肉屋。一応全国チェーンで、チェーン店としては肉質がよく美味いので仲間内でも人気でした。当時は食べ放題としては珍しく牛タン(食べ放題のタンはほとんど豚タン)が出てくるので好んで行っていましたが、さすがに今は全コースではなく一番上のコースのみになっていました。

ということで雪山納めの杣添尾根でした!